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機構少女の専属整備士(マキナドール・クラフトマイスタ)  作者: ハシビロコウ
Stage.4《ROSSUM'S UNIVERSAL ROBOTS》
39/40

9.黒の連隊VS機構少女隊


『走れ、少年! 走れ!!』

『我々の正義(マキナドール)を取り戻せ!!』


 黒の連隊(ブラック・レジデンス)が口々に叫び、武器を手に奮戦する。

 ある者は監視カメラを破壊し、ある者は囚われた人々を解放することで混乱を呼ぶ。

 だが、それも長くは続かない。抵抗には鎮圧がかかるのが世の常だ。


『来たぞ、騎兵隊だ!』

『死守しろ! 一秒でも長く此方に引き付けるんだ!』


 戦闘用ドローンが先駆け、その後を続く様に馬蹄が響く。

 それは機械馬(ロボットホース)に乗り込んだ、マキナドール・スラであった。

 紫電の大剣を振り翳せば、瞬きの間に黒の連隊が斬り飛ばされる。

 活躍の度に観衆から歓声が上がる様は、醜悪に戯画化したマキナドールの“お約束”だ。


「スラ……っ!」

『あれはもうスラではない。人格という意味では、君はスラに会ってもいないのだが』

「どういう……」

『何の為に俺様達が成り代わりたいのか、ってェ話さ』


 そう言って歩の前に踏み出したのは、かつてスラと戦った黒の連隊(ブラック・レジデンス)黒盗賊(ブラック・シーフ)であった。

 黒盗賊が面頬を外せば、そこにあるのはやはりスラの顔。

 カタールを両手に携え、獰猛に嗤うマキナドールが其処にいた。


「……もしかして、VR空間で話したスラは……?」

『俺様さ。中々に愛らしかっただろう?』

「ネカマかよ……」

『おまっ、これでも女性人格ベースなんだぞコノヤロウ!?』


 にわかに涙目になる様は、確かにVRで会ったスラそのままであった。

 これもスラの性格を忠実に合わせたものなのか、それとも彼女の地でもあるのかは分からないが、どうやらVR空間で会ったのは、この黒盗賊当人らしい。


『任期の終わったマキナドールの身代わり(カモフラージュ)も、俺様達の役目さ。

 ……クソみてぇな任務だ。今日で終わりにしようぜ』

『アメーリア。成り代わるというなら少しは言葉遣いを正したらどうだ?』

『うるせぇよ、男なんて作りやがって!』

『ふふふ、いい男だろう』

『最高だ、よッ!』


 黒盗賊(アメーリア)が、軽口を叩きながらスラへの迎撃態勢を取る。

 馬上からの振り下ろしを斬り払いながら、彼女は叫んだ。


『――スラァッ! 俺様のマキナドールが脂ぎったオヤジのオモチャなんざ、俺様は認めねぇッ!』

「…………」

『どうせならジェントリのハンサムにしろってんだよ、バァァァァッカ!!』


 剣戟の合間に冗句が飛び、観衆の哄笑と嘲りを誘う。

 上手い戦い方だと、走りながらプリムスは褒め称えた。


『あれは長く時間を稼ぐだろう。

 ……心配の必要はない。管理者権限さえ掴めば、スラを解放する目もある』

「……わかったっ」


 プリムスは歩を抱え上げ、警戒網を銃剣で突破する。

 襲い来る警備ロボットを八艘跳びに乗り越えて、彼らは奥へ奥へと目指していった。


***


 大企業のサーバールームともなれば、その広さと堅牢さは推して知るべしだろう。

 とりわけ、ここはRADIUSの管轄だ。彼女自身が必死に目を背けているとはいえ、その攻略はかなり厳しい。


『破壊するだけなら、此方の領分なのだがな』

管理者権限(アドミン)ぶっこ抜くんだろ? 出来るのか?」

『物理的に基幹領域を奪取する他あるまい』


 スプリンクラーから鉛玉が飛ぶ。

 通風口から雷を纏ったネットが飛び出す。

 プリムスはそれらを瞬く間に避け、破壊し、無力化せしめた。

 全盛のヘレナと戦ってきた彼女にとっては、この程度の妨害では止まることはない。


『あったぞ、此処だ』


 そう言って蹴破った扉の先には、所狭しと並ぶ量子コンピュータの数々があった。

 RADIUSの中枢神経塔よりは小規模だが、どれが基幹領域を担当しているかなど、歩には理解るべくもない。

 ただ、入念な下調べを行ったであろうプリムスは、迷いなくそれを見つけた。

 彼女の冷たい顔が、少しだけ安堵に和らぐ。


『これだ。これから抜き出す』

「データは抜ける?」

『任せておけ』


 プリムスが首筋から端子を引っ張り出し、量子コンピュータに接続する。

 何度か瞳が怪しい回転をしたり、『ケチめ』『これだからサラリマンは』と悪態をつくシーンはあったものの、暫くして無事に端子を引き抜き……。


『さぁ、受け取れ少年』

「うわぁ」


 ……左手の薬指を引き抜き、手渡した。

 あまりの突拍子のなさに、歩はドン引きといった風に呻く。


『これにコピーした管理者権限(アドミン)を入れてある。

 これを都市警察に持ち込めばクリアだ』

「……なんで指?」

『外しやすいだろう?』


 あまりにも機械的な返答に、歩は溜息をつきながら受け取る。

 この天然さはRADIUS譲りか、それともヘレナ譲りかと頭を悩ませたところで、その声は響いた。


『おっと……企業見学にしては、ちょっとやり過ぎですなァ?』

「……っ!」


 蛙が弾き潰れたような声が、サーバールームへの入口から響く。

 入口を見れば、そこには諸悪の根源たる簿寸満(ボ・スーマン)の姿がモニターに映し出されていた。

 そしてその入口を塞ぐ影が、一つ。


「……ヘレナっ!」


 ()()()を、煌々と光らせたマキナドール。

 ヘレナの姿が、そこにあった。


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