表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機構少女の専属整備士(マキナドール・クラフトマイスタ)  作者: ハシビロコウ
Stage.3《THE BLACK KNIGHT》
30/40

9.新しい関係


「……畜生め。コンピュータはこれだから困る」


 物証を残さない為に、自らを破壊したのだろう。

 プリムスの思惑はそう片付けられ、上東京から降ろされたキャンサー達によって、工場は解体されていく。

 未だ稼働する工場など、歩にとっては垂涎モノではあったが、持ち帰って寝耳にプリムスは笑えない話である。


「……うぐぅ」

「まぁまぁあっくん、報酬はちゃんと出るから……」

「罰金で天引きだけどなぁ……!」

『酌量は致しますが、規則ですから』


 泣く泣く解体されていく様を眺める他ない歩は、嘆息しながらもヘレナに身を預けた。

 お互いボロボロになってはいるが、今は寄り添いたい気分だったのだ。

 しっかりと腕を回してくれるヘレナに、歩は少しだけ甘えている。

 それは今までよりも素直で、落ち着いた様子であった。


「……まァ、なんだ。後で事情聴取にゃ付き合って貰うが、今はゆっくり休んでおけ」

『ご理解感謝致します、警部』

「構わん。恥は若い内にしかかけンからな」


 都市警察の面々も、やや遠巻きに見守りつつ、各々の仕事を果たしていた。

 時々口笛や囃し立てる声が響くものの、今の歩には届かない。

 ヘレナが抱きしめながら、耳を塞いでいるのである。貴重なあまやかしタイムを逃すほど、彼女も愚かではないのだ。


「……ねぇ、あっくん」

「なに……?」

「私達、ずっと一緒だよね?」

「……うん」


 少し気恥ずかしげに、しかし確りと歩は頷く。

 銃弾と共に言い放ったとはいえ、勢いと出任せで出した言葉ではなかった。

 自分の気持ちを、包み隠さずに答えたのだ。今更それに、嘘をつく歩ではない。


「俺さ」

「うん」

「色々勉強するよ」

「……どんなことを?」

「ヘレナを支えられること」


 それは穏やかな、誓いの言葉だった。

 難しい言葉をこねくり回さない分だけ、まっすぐに相手へ届けようとしていた。

 都市警察の女性隊員達が、感嘆の息をつく。それは勿論、ヘレナも同じだった。


「機械工学だろ、サイバネティクスだろ、サイボーグ医学とか、そっちの方もだし……」

「うん」

「……ヘレナの好きなこと、いっぱい勉強しなくちゃな!」

「……うん」


 女性隊員達がきゃあきゃあと声を上げ、張井警部にどやされていく。

 そんなことも気にならないまま、ヘレナは思わずぎゅっと抱きしめた。


「ありがと、あっくん。……これからも、よろしくね?」

「……おうっ」


 嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑う歩とヘレナ。

 その光景が放映され、大恥をかいて悶え転がるのは、また少し後の話であった。


【Stage.3 END】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ