累計99話 各種設定
★神話の時代
最初に造物主がいた。
造物主は造物主を産んだ(=自分で自分を生み出した)。
次に造物主は太陽と白い月、そして光の勢力と闇の勢力を産んだ。
光と闇は互いの尻尾を食むように回り始めた。
やがてその中央に世界の雫が生まれた。
造物主はそこに始源の塔を立て、天地と命を生み出した。
世界支配者を決めるジ・オーブ、そしてあらゆる命が始源の塔から生まれた。
★歴史の時代
最初に生まれたのはドラゴンである。
ドラゴンは生まれたばかりの世界を思うさま飛び回り、冒険した。
あまりにも広大な大地を楽しむ事に夢中になり、ジ・オーブはドラゴンの手に渡らなかった。
二番目に生まれたのは巨神である。
巨神はジ・オーブを手に取り、世界の支配者となった。
ドラゴンはあとからオーブの重要性に気づいたが、すでに巨神による支配は揺るがなかった。
ドラゴンは忍従を強いられ、我慢できずに幾度か戦争を起こすが、支配権は覆らなかった。
巨神は人間やエルフなど人類種を始めとした様々な生き物を奴隷化し、途方もない時間を費やして「魔法」を生み出した。
巨神の支配は盤石となり、その支配は10万年続いた。
しかしその巨神類も10万年の年月により文化の爛熟、種としての衰退、さまざまな理由により限界を迎え、地上から姿を消した。
そのあとオーブはドラゴンのもとに渡ったが、名も知れぬ人間の知恵者がドラゴンの王を騙し、オーブを手に入れている。
こうして人類種が地上を支配する権利を得て、1万年の時が過ぎた。
これが本作の「現代」である。
★巨神文明期の遺跡
一つの疑問として、人類種が一万年も世界を支配して繁栄しているのになぜ「手付かずの遺跡」が残されているかという事がある。
これは作中世界がバカバカしくなるくらい広く、空を支配するドラゴンがいるため上空から遺跡の位置を探ることもできず、おまけに凶悪なほどの保守魔法が使われて経年劣化しないものや、天空を我がものとする天竜族よりは劣るが地竜族が行く手を遮る、ほかにも様々な理由から一万年たっても未だに全てを解明するに至っていないからである。
なお、巨人の生活していた遺跡はドアのひとつとっても人間が開くのは困難である(純粋に大きいから)にも関わらず内部に入れるのは、巨神文明期に奴隷であった人間やエルフが出入りする通用門が存在しているからである。
★エーテル
作中で頻出するワードなのでここでまとめておく。
造物主が始源の塔から世界と生命を生み出したときに使ったのが「根源物質」エーテルである。
造物主のエーテルはあまりにも膨大で、全てを創造してもなおエーテルが地に満ちていた。
これをコントロールし、造物主の力を真似しようとしたのが巨神類で、それは魔術やサイオニクス、気功などに姿を変え現在の人類種まで伝わっている。
またエーテルには正負の波長があり、負の性質をもったものを瘴気、ミアズマと呼ぶ。
★ドラゴン
始源の塔から最初に生まれたドラゴンたちは極めて強力な存在で、世界支配者の証である「ジ・オーブ」を手にした巨神類でさえ膨大な死者を出さなければ対抗できなかったとされている。
人類種がオーブを手に入れた後もドラゴンは恐怖そのものである。
「ジ・オーブ」をの力によってなんとか退けているが、空を支配する約定のもと、天龍族と呼ばれる飛行タイプのドラゴンは空の領域を侵さない限りは人間とは戦わない――ということになっている。
ただし、遠距離テレパシーなどの伝達方法が空にまで届いたり(電波を想起されたい)、飛空船などの空に浮かぶ移動方法などを用いたときには容赦なく襲ってくる。不興を買って滅ぼされた都市や国はひとつやふたつではない。
ただし大地に住む飛行能力のない地龍族と呼ばれる存在は、公共事業レベルの人員と予算を投入するか、英雄レベル、半神レベルのパーティであれば対抗できるとされている。
いずれにせよドラゴンは絶対強者であり、彼らの気まぐれによって人類の生存圏は大いに荒らされる可能性がある。
★人類種
「人類」と表記する場合は、人間、エルフ、テクスメックなどを含める(テクスメックは巨神が創造したケイ素生命体だが、その知能と人類社会に馴染んでいるため人類種にカウントされる)。
★人間
人間である。
地球のように猿から損化したのではなく、巨神類の小型版のような生命として始源の塔から生み出された。生まれてからすぐに巨神類に奴隷にされ、10万年間も不自由な扱いをされていた。
★エルフ
エルフの共通する特徴は、汎エルフ語を使えることぐらいである。
それ以外の外見、生態、生活環境は、住む場所への適応によって全く異なっている。
人口比で一番多く、いわゆるエルフと聞いて思い当たるのは、とがり耳の細身の森の民であろう。森林に住み、その環境に適応して手足が長く木々に飛びつきやすくなっている。弓を愛用し、精霊の声を聞きまた使役する。
同様に、沼沢地に適用したスワンプエルフ、都市生活に適応したシティエルフ、海での生活に適応したマリンエルフ、高地に住むハイランドエルフ、洞窟に適応したケイブエルフ、ツンドラエルフ、トロピカルエルフ、デザートエルフ、サバンナエルフ等々枚挙にいとまがない。
環境適用能力が非常に高く、どこにでも住めるという意味では人間より遥かにしたたかだといえる。
エルフらも10万年間巨神類に奴隷化されてきたが、人間よりも改造の度合いが高く、それが現在に至るまで続いていると考えられている。
また、10万年の間に起きた何度かの巨神同士の内乱の際、エルフ族の中で誰よりも先に逃げ出し、自分たちだけが自由を勝ち取り谷に隠れ住み生きながらえた一族がいる。
彼らはエルフの間から「裏切りもの」のレッテルが貼られ、その評価は人類種の支配が始まってから1万年の月日を経てもかわっていない。
日の差さない谷の底で暮らす彼らは青ざめたエルフ、ペイルエルフと呼ばれ、青みがかったグレーの肌をしている。その生活様式は殆ど知られていない。
★テクスメック
巨神類が労働力を補うために魔法で作り出したケイ素生命体。
身長はおよそ人間の半分くらい。
建築、解体、細工、家事などの仕事に従事させられたが、やがて自意識を持ち、正式に「生命体」として認められる。
性格はおおむね善良で、自分の技術に大いに自信を持っている。また、己の専門技術が及ばない事柄にはほとんど興味を示さない。
戦闘に関わる例は多くないが、中には傭兵や冒険者としての人生を選択する場合がある。寿命は300年程度。
★なぜ労働力が必要なのか?
力仕事ではなく、小さく細かな作業が必要になる場面で奴隷が用いられた。巨神はネズミを捕まえるには大きすぎたのだ。
★魔術とサイオニクスと気功と法力と…
魔術とは、呪文や呪印、複雑な儀式によって外的なエーテルを利用し、「ごく小さな天地創造」を行うことで何らかの結果を生み出す技術である。呪文や呪印に不備がない限りは安定して同じ結果を弾き出すことができるため、発動プロセスを学問として学ぶ必要がある。
魔術師、魔法使い、魔道士などと呼ばれる者たちは全てこの「魔術」を使っている。
サイオニクスとは人体の内的なエーテルを制御し、脳内エーテル波を放って外的なエーテルを直接操作する技術である。呪文や呪印、複雑な身振り手振りがなくとも効果を発する。弱点は精神集中を乱されることで、暴走しやすい。場合によっては心身にダメージを負うこともある。
気功はモンクが使用する技術である。サイオニクス同様に内的なエーテルによって身体能力を強化する事ができる。また、熟練によって外的なエーテルを吸収し、さらに大きな内的エーテルを扱うことができる。
法力は僧侶が使うエーテル操作術である。
それぞれの宗派の信徒たちの祈りによって貯蔵された膨大な巨大なエーテル(神とも呼ばれる)から力を引き出す(借りる)ことで、自身は「中継基地」となり、小さな奇跡を生み出すという方法を取る。強力ではあるが、十分な祈りを捧げる必要があるため発動までの時間が長いのが不利といえば不利な部分だといえる。
精霊術
精霊は自然界のエーテル集積体に準知性が宿ったもので、精霊術師はこの精霊と契約を結んで使役する。
精霊の役割は多岐にわたるがその真髄は合体(憑依)術である。
物品や己に憑依させることで通常の数倍の力を発揮することができる。
また、精霊は「持ち運び」することができ、壺やジャーにしまっておき、いざという時に解放して力を借りるという方法を取る。
★宗教
■円十字教会
最もポピュラーな宗教団体。信者数は世界最大であり、円と十字の組み合わさったシンボルを用いる。
武装集団「聖騎士団」を擁するいっこの軍事勢力でもあるが、様々な規律の元に運用されているため、広く信頼されている。地球で例えるなら国連軍のようなイメージだろうか。
信仰の対象は「始源の塔とそれが生み出した世界そのもの」であり、擬人化されたいわゆる「神」の存在は採用されていない。
が、人間はどうしてもわかりやすい信仰対象を求めるのが常らしく、様々な「聖人」「預言者」を崇拝し、それが公式に取り入れられる場合もある。
これは反面、カルト(個人崇拝)の温床にもなり、広い世界ではたいてい幾つかの円十字系カルト宗教集団が本来の教義とは捻じ曲げられた信仰のもとに結集し、悪事を企てている例が見られる。
tips!:
聖騎士団はギリシア文字のアルファからオメガまで24の団が存在し(いくつかは欠番になっている)世界各地で様々な正義の任務についている。
その中でも特にアルファ、オメガ両騎士団は、聖騎士団内部でも特秘とされる立場にあり、何をしているのか、メンバーは誰かなどほとんど明かされていない。
「始源の塔」の警備にあたっているらしいのだが……。
■龍骸苑
世界的規模の宗教団体。円十字と比べれば小さい。
身体性を特に重んじ、この世で最も頑健な肉体を持つドラゴンの精髄たる「骨」の揺るがざるところを自らの魂の拠り所にすることで一切の迷い、弱さを断つことができるとしている。
修行僧の存在でよく知られている。
■五光宗
龍骸苑と同程度の規模を持つ宗教団体。
自然界の精霊、それにエーテルを足した「5つの光」を尊ぶある種のエコロジカル思想を掲げている。
その成立過程より、エルフの信者が多いのが特徴である。
☆登場人物
■クロゴール
山賊の親分。行き倒れになっていたカルボを助け、利用する。
■ジャコメ=デルーシア
300年前の錬成術師。黒薔薇と白百合を生み出した。
■トヴァ夫人ことアンカレラ・スート
サン・アンドラス市で妖魔を召喚し売りさばいていた女犯罪者。
■妖術師ファラン・ダラン
トヴァ夫人と結託し、妖魔を召喚していた術師。
■クライヴ
タウ聖騎士団サン・アンドラス支部長。誠実な性格。アッシュが追放された元聖騎士だと知る人物。
■カチイレ
巨大生物に襲われる村の住人。アッシュたちを雇う。
■シアーズ
巨大生物の研究の過程で、過去の魔術師の亡霊に取り憑かれた男。アッシュらの活躍で正気に戻る。
■エンセン
魔法都市エリゴスに住む堕落した学生。吸血鬼に血を吸われ、魔術大学の大図書館から本を盗み出す。
■ガスコイン
上級吸血鬼。非常に強力な存在で、アッシュの着ていた不名誉の証・聖騎士の鎧を破壊した。
■イーソン
盗賊都市ヴィネのギルド「青い葉」のスキルトレーナー。カルボの師であったが、抗争に巻き込まれ爆殺される。
■ジョプリン
スリ師。カルボらと偶然知り合い、協力する。
■ダン=ジャリス
「青い葉」から分派・敵対した「赤い頭」のリーダーで、シティエルフ。暗殺者でもある。
■ヒューレンジ
カルボの実の父。「青い葉」のギルドマスター。ドラッグの扱いを巡ってカルボと対立、結果としてカルボは家出した。
■外交官マル=ディエス
ガープ王国の辣腕外交官。シティエルフ。大森林に住むフォレストエルフたちと12年に渡り粘り強い交渉を行っていた。
■ウェムラー
冒険者兼カメラマンとして著名な人物。ザ・ウォーカーと戦うドラゴンの姿をカメラに収めるべく機をうかがっていた。コークスの友人でもある。
■”ドールハウス”のヴァニア
「ゴーレムとアンデッドのどちらが優れているか」を賭けて村をひとつ乗っ取った。人形使い。肥満体の派手な女。
■ジアンシィ
ヴァニアと張り合っていたネクロマンサー。
■スポージ
海洋問題専門のオミクロン聖騎士団団長。丸いサングラスを掛け、トボけた喋り方をする男。
■ザパ=リーン
ムルムル島の地下施設で、クラーケンを自らの手で操るための研究を行っていた人物。
■コークス
アッシュの親代わり。シグマ聖騎士団団長を務めていた男。