始まりは突然に
初投稿です。
剣と魔法の冒険物が書きたいと思い立ち、書き始めました。
リアル大事にで更新していきます。
残酷な描写・R-15等は人死にの描写があるため付けております。
ガールズラブは作品のキーワードに性転換を含みますので、女性同士の恋愛もありうるため付けております。
投稿1週間以降は週に1度、2000字程度の更新頻度でやっていこうと思います。
どうぞよろしくお願いします。
追記
名前のミスを修正しました。
目の前にはたくさんの泣き顔がある。
どれもこれも見知った顔だ。
彼らは俺を取り囲んで、どうしていいのかわからずおろおろしている。
大丈夫、痛くないから。
そう言おうとしたけれど、口が上手く動かない。
仕方ないので、近くに居た子の頭を撫でてみる。
大丈夫だと伝えるために。
安心させるためだったのに、その子の顔は一層歪んでしまった。
失敗した。
今度はにこりと笑ってみる。
笑顔の自信はあまりないけれど、上手く笑えていたと信じたい。
もう何も見えない。
――――
目を開けると――そこは修羅場だった。
視界一面に広がる緑と、どこまでも続く青空。
アウトドアな趣味を持つ人間なら、誰しもレジャーシートの上にお弁当でも広げたくなるだろう。
そんなのどかな光景を台無しにしているのは、眼前で吹きすさんでいる『暴力』であった。
立っている人間は俺を除いて3人。
一人は少女。
黒塗りの馬車の上に立ち、必死の表情で杖を構えている。
元は上品なつくりをしていただろう服には誰のかわからない真っ赤な血が付いている。
残り二人は、冒険譚でよくあるいかにも冒険者ですといった皮の鎧を着た男女。
男性は剣を抜いており、少女の立つ馬車になんとか乗り上げようとしている。
女性は男性の後方におり、少女と同じく杖を持ち、それを支えになんとか立っている。
パッと目に見える範囲では彼女に傷は見当たらない。
男女二人はおそらく仲間なのだろう。
そして、彼ら三人の足元には幾人もの人間が倒れ伏している。
倒れている人間はおよそ二種類。
剣や杖、槍などの武器が似合う人間と、丁寧な作りの服を着込んだ暴力とは無縁の従者たちだ。
事情などさっぱりわからないけれど、彼ら三人が仲良しこよしでないことだけはわかった。
このままでは遠くない未来、少女は冒険者二人によって命を落とすだろう。
――先に俺に気がついたのは、少女であった。
少女の涙に濡れた瞳と目が合うが――彼女は何も言わなかった。
わずかな視線の交差の後、彼女はプイと視線を逸らす。
彼女は俺に、助けを求めなかった。
次いで冒険者二人が俺に気付いた。
彼らは場違いな乱入者をどう扱うか一瞬悩み、
「誰だかしらねぇがちょうど良かった。そこの嬢ちゃんもあそこのガキを始末すんの手伝ってくれや」
「手伝ってくれたら、あんたも貴族にしてもらえるようにかけあってやるからさ! 貴族だよ貴族!」
と言った。
当たり前のように行われている命のやりとりを前に、足を震わしている俺に彼らは何を期待しているんだろうか。
俺一人では何もできることはないし、今はとにかく頭の中は一つのことで埋め尽くされていて正常に働かない。
それは、ここはどこか、ということだ。
――――――――――――――
世間の皆様こんにちは。西村悠樹でございます。
平素はうんぬん。
何点か皆様方に尋ねたいことがございまして、筆を取った次第であります。
皆様は、見知らぬ美少女と、見知らぬ男女、どちらか片方にだけ手を貸せるしたらどちらに手を貸しますか?
何も他の条件はございません。ただただ直観で決めるだけでございます。
多くの方は、見知らぬ美少女でございましょう。いやいや、命の数に重きを置く方なら見知らぬ男女かもしれませんね。
ではそこに、戦いにおける実力の差を加えてみましょう。
少女は傍目に見ると、男女二人組に敵わないのは明白であります。
そして二人組に協力をしなかった場合、あなたの命までも狙われてしまうでしょう。
反面、二人組に協力をした場合は当面の安全は保障されます。
さて、皆様方はどちらに手を貸しますか? もちろん皆様方に選ばれし力などございません。
早々。
俺は平和な国に生まれ育った。
礼儀正しく、他者を慮ることを美徳とした国の生まれで、すぐさま今目の前の事態が飲み込めなかった。
加えて、ここがどこかもわかっておらず、彼らの服装に馴染みもなかった。
結果、俺がとった行動は対話であった。
おそらく、誰の目にも大間抜けに映っただろう。
俺だってそう思う。
「あ、あの……」
努めて倒れている人間たちを見ないようにして声を絞り出した。
「あぁん?」
男が俺の言葉に反応する。
少女と女は俺を無視してぶつぶつと何か呟いているようだ。
「な、何故そこの女の子を始末……倒そうと思っているのでしょうか? そうしなくてはいけない理由でもあるのでしょうか……?」
俺の問いかけに、男は明らかにめんどくさそうな顔をした。
「おい、アーシャ。ガキ見といてくれ!」
「あいよ」
男は女――アーシャというようだ――に声をかけ、俺の方へ近づいてくる。
男は血に濡れた曲剣をわざと見せつけるようにゆらゆらさせている。
とても嫌な予感がする。
事情を説明しようとする人間の態度とは、思えない。
「あんなあ嬢ちゃん。実は俺らはなあ……」
……来る!
直観でわかった。
次いで、男の筋肉に力が入るのが見てとれた。
しかし、来るとわかっているのに、俺の反応は鈍く足は凍りついたように動かない。
男のにやけた表情はすでに目の前。
もう駄目だ!
思わず目をつぶって現実逃避してしまう。
そんなことをしたって解決はしないのに。
男の剣は迷いなく俺の頭に叩きつけられた。
――――
名前:西村悠樹
種族:人間
年齢:元は28歳 現16歳
性別:元は♂ 現♀
性格:温和・好奇心旺盛
ステータス
体力:D(訓練している程度)
筋力:E(一般人並)
敏捷:C(優秀)
精神:A(高い)
魔力:F(一般人未満)
汎用技能:レベル
・話術 :C
固有技能:レベル
・異世界の記憶 :B
・肉体変質 :D
・他言語翻訳 :A
技能解説①
異世界の記憶……異世界の記憶を保持できる。土地の文化や常識に捉われない。反面、生まれ育った土地の風習や習慣に強く影響を受けてしまう。
Bだと大半の記憶は継承されているが、一部欠けている。