そして二人で乾杯した。
それは、なんと言えば良いのだろうか。
一言にしてしまえば活気となるのだろうが、もっと生臭い人の営みが垣間見える場所だった。
空港から、少し出た。
外国からの観光客と、客引き、怪しい両替商。バイクやクルマに乗ったタクシーの運転席は目をギラらつかせ、その背景には地元の生活の様子が溢れだしていた。
餌にたかる蟻のように声をかけてくる人混みをすり抜け、その生活の場へと潜り込む。
事前に調べていたゲストハウスにたどり着いた時には、彼らのしつこいほどのたくましさにヘトヘトになっていた。
ぬるいビールをもらい(最高気温が50度近くにもなるこの場所では体温より低い飲みものは贅沢品だと後になって知った)日の届かない部屋の奥で休んでいると、沈没中のバックパッカーだろうか、白人系の男に話し掛けられた。
英語圏ではないらしい。片言の英語だ。
かといって、私も堪能な英語とは言いがたい。
意志疎通は失敗し、彼は首を竦めて(何故ああいった仕草が様になるのだろうか)奥の部屋へと入っていった。
手にしたビールを二口ほど飲む頃に、彼はぼろぼろのギターを片手にまた、私のところへとやってきた。
「Do you like music?」
調律を合わせながら、なんとか聞き取れる発音で彼は言った。
イエスと答えると、ずいぶんと人懐っこい笑顔。
おもむろに弾き始めた曲はレットイットビー。
上手いとは思わないが、心底楽しそうだった。
気づけば、他の客や地元の子供たち、通りにいた客引き、みな楽しそうに、中には鼻歌で合わせながら彼の歌に聞き惚れている。
演奏が終わると、いくつもの拍手と口笛が響いた。
私は彼にビールをご馳走した。