シュガーワーク
「―――何してんだ?一心不乱に綿菓子突いて」
「綿菓子?」
不意に背後から声をかけられた私は、キョトンと斜め頭上を見上げた。
視界を埋めるのは案の定、血のような紅。
否、私にとっては夜の天上を往く、赤月にも思えるけれども・・・
どちらも不幸の象徴に変わりはない。
その不幸の象徴、そして主である彼の瞳が不可解そうに細まる。
「これだよこれ。って意外とごわごわしてんな・・・」
言葉少なな私の行為を、くみ取ろうと綿に手を伸ばした彼は、興味津々でソレを指で玩ぶ。
その様が、少し子供じみていて、私の微笑みを誘った。口にしようとするので腕を掴んでそっと綿を取り戻す。
「羊毛フェルトって言うの。これでお人形さんが作れるんです」
「人形だぁ?」
「うん。これ・・・河童さん」
「・・・あっそ。」
ぷにっと頬をつねってくる彼に、今度は二つの笑い声が重なったのでした。