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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【闘技大会】
84/759

◇83



巨大な砂漠がある大陸と聞いていたので、ホコリっぽい感じを想像していたが、そんな事はなかった。他の大陸や街と何ら変わらない。勿論、温度や匂い、雰囲気は別だが、ホコリっぽさの欠片もない。

闘技大会前日と言う事もあり街は賑わっている。デザリア国民だけではなく、参加者や大会を見に来た観光客で街はいっぱいになる。

宿屋は港や隣街まで満席状態。参加者は専用の宿が与えられるので心配はない。

とりあえず最初は会場へ向かい、チームがデザリアに入った事を報告しなければならないのだが...


「会場ってどこ?」


初のデザリアがこの盛り上がり。道に迷う以前に道がわからない。

キョロキョロと辺りを見ていると、通りすぎる人々がわたし達へ「頑張ってね」や「楽しみにしてる」等と声をかける。貴族までもが声をかけて来た事に何よりも驚かされる。それ程、大きなイベントと言う事なのだろう。


参加者っぽい雰囲気の人達をトレースして何とか会場に到着した。

建物は石作の「城かよ!」と言いたくなる大きさで、闘技会場は円形の高い建物で天井はない。コロッセオと言うのか、闘技感が全開に現れている。会場以外はしっかり天井ありだ。既にショップが開店していて街と変わらない賑わいを見せる。


気になるショップが沢山あるが、今は報告を済ませなければ大会に参加できない。


受付は建物内の闘技場の入り口付近にある。

この辺りまで進めば周りは全員、参加者...相手と言う訳だ。

前日だと言うのに鋭い視線で威嚇するバカも沢山いる。

そんなお調子者は無視して受付へ到着し、報告。


「大会優勝候補のチーム エミリオだよ!到着報告にきますた」


そう言うと更に視線がわたし達に向けられる。が、見るからに弱そうな奴等を相手にする暇はない。


受付の綺麗なお姉さんが、大型フォン...タブレを素早く操作しリストを確認する。


「一応皆様のお名前を聞かせてもらえますか?本人確認...にしては少々軽いのですが決まりでして」


確かに本人確認ならばフォンのステータスデータを表示するべきだろうけど、1人1人のステを確認するのは相当な時間と手間だ。形だけでも本人の確認 といった所だろう。


「わたしがエミリオ」


「俺がるーだニャ」


「ウチがキューレじゃ」


わたしのチーム エミリオは猫人族のるー、皇位情報屋のキューレ、奇跡の天才魔女エミリオ様で組まれたスペシャルチーム。

優勝は誰にも渡さない。


「エミリオさん、るーさん、キューレさん、確認が終わりました。では次にルールの説明なのですがお聞きになりますか?」


わたし達は迷わず頷いた。

ルールを知っておく事は大事で絶対だ。わたしとるーはそのまま聞き、キューレはフォンを手に耳を傾ける。


ルールは難しくなかった。


降参はあり。殺しはなし。

降参できない状態で続行できない状態ならばジャッジマンが判定する。

闘技時刻の10分前には控え室へ、開始時間までに現れない場合失格。

人数が1人になっても続行可能。

アイテムの使用は基本的禁止。(個人のスタイルによってはアリ)

闘技中、他のメンバーが手を貸す事は禁止、即失格。

ポイント制で毎日順位が発表される。(ポイント数はその闘技開始前に発表される)

大会中、装備変更は自由。


「以上が基本になるルールです。その他細かいルールは闘技開始前に発表される事があります」


「おっけー、ありがと!」


「それでは、優勝目指して頑張ってください」



報告もルール説明もあっさり終わった。これで大会開始まで自由の身となる訳だ。


「少し会場を見学してみにゃいか?」


猫人族のるーがそう言い眼を輝かせ尻尾を震えさせる。楽しみにしてたんだな。


「見学しよう!ってか語尾にニャつけないの?」


「つけにゃくてもしゃべるぞ?まぁ変にゃ癖は出るけどニャ」


「ふーん」


確かに今も “な” が “にゃ” に変わっていた。その癖とやらもマニアには堪らないのだろうか。


「お前さん等はこの会場マップを持っとるのか?」


ここにも変な癖を持つ人間がいる。前髪をアップにした年寄り言葉のキューレはフォンを操作し噂のマップデータを見せつけてくる。


「もってないニャ」


「もってにゃいニャ」


む。本家は な を にゃ と言うんだったか、次から気を付けよう。

返事を返すとお互いのフォンが反応し、マップデータが届けられる。本来ならここでお金を請求される場面だが、今回はそれもない。

優勝賞金はキューレが400万v、わたしとるーが300万vで手をうった。100万vも多く貰えるんだ。マップデータくらい無料にするのは当たり前だ!


早速そのマップを頼りに会場内を探検する。

1階のエントランスはありとあらゆるショップ、奥...闘技場付近には控え室。2階は医務室とショップ...三階はショップ...ショップ系多すぎだろ!とさすがにツッコミを入れてしまった。レストランや酒場もあり、大会期間中は夜中でも開店状態らしい。街の酒場やレストランも同じく。


武具屋もあるが、ビビ様の店はない。が、マスタースミスと書かれた看板がわたしの眼を奪った。


「あそこ行こう!マスタースミスの店!」


「気ににゃるニャ。行こう」


「構わんが...お前さん達、その格好は何じゃ?」


キューレの呆れた声に、わたし達はお互いの姿を見る。

闘技大会マスコットのキモカワ モフモフキャラクター ティポルの帽子、ティポルマント。わたしは青でるーは黒。


そして、るーの手にはティポル饅頭(赤)とティポルの汗...と名付けられたドリンク。

わたしはティポルキャンディとティポルの涙...と名付けられた飲むゼリーを持っていた。


「楽しんどる様子じゃし...まぁよいが、恥ずかしいぞ」


「わたしは欲を言えばティポルバーガーを食べたかった」


「俺はティポルパスタが気ににゃるニャ」


この日の為に2ヶ月、るーと2人でクエストや競売で貯めたお金だ。迷わず楽しませて貰うのじゃ....この2人と居ると変な口調になってしまう。


「後で食べにいけばよいじゃろ。それより...あの鍛冶屋は飲食禁止じゃぞ」


「まぢかよ、んなら先にご飯食べよう!鍛冶屋混んでるしさ」


「にゃに食べるニャ?」


「ティポルバーガーとパスタじゃろ?」


「キューレ...それ以外にも食べ物は沢山あるぞ?視野が狭いのはよくないなぁ」


「んにゃんにゃ。よくにゃいニャー」



ティポルキャンディをクチへ入れ、フォンを操作しマップデータからレストランを調べる。るーもティポル饅頭を一口で食べ調べようとするが、あの饅頭は赤...そう、激辛だ。顔を真っ赤に染めドリンクを飲みもがく猫。


「だっせー!るーキモいウケる」


「死ぬかと思ったニャ...辛いを越えて痛いニャ...」


ティポル饅頭(赤)は罰ゲーム用だな。脳内メモにそう刻みわたしも食べ終えたのでゴミ箱へしっかりと。

落ち着いた所で昼食を何にするか会議を始める。

個人的にはティポルバーガー(青セット)かティポティポケーキセットが食べたい。

るーはティポルパスタか新鮮ティポル丼。キューレは何でもいいらしい...しかし気になる。新鮮ティポル丼。

新鮮な何かを使った和國の料理だろうか...今日の昼食はそれに決め、わたし達は2階のレストランへ入る。

天井は吹き抜けで本気を出せば2階、3階からも飛び降りて1階へ行ける。本気を出せばの話だが。

闘技大会の参加者達を観察し情報を眼で集めるキューレと、まだ舌に痛みが残るるー。わたしは暇なのでるーをバカにして遊んでいると噂の丼が届く。可愛いウエイトレスさんが3つの丼をテーブルへ置き、忙しそうに帰る。

さて...新鮮ティポル丼を頂こうでは...な。


「をぉ...」


と、わたしが声を。

るーは固まる。キューレは眼を閉じ斜め下へため息を溢す。


新鮮ティポル丼。

和國の主食で今や全世界で食べられているお米の上に新鮮な魚介類を乗せ、中心にはウネウネと蠢くタコ...に似た生き物がくりっとした両眼を開き、クチをニヘニヘとさせてわたし達を見ていた。何を思ったか、るーは丼へフォンを向け...わたし達へ画面を見せる。



綺麗な水色の毛を持つ軟体生物。

食材になるモンスターで毛には栄養分も豊富。主にイフリー近郊の港でその姿を眼にできる。

イフリーではイベントがある度にこのモンスターをモチーフにしたキャラクターやグッズを販売、気持ち悪くも可愛らしいその姿は世界各国に熱狂的なファンを持つ。


と、書かれた説明文...画面を指先で撫で上へ進めると、名前と写真がバッチリ表示されていた。

水色のタコの様なイカの様なクラゲの様なふっさりした...ティポル。

わたしが今装備しているおしゃれアイテムで、闘技大会のマスコットキャラクターもティポル。丼の中心で蠢くコイツもティポル。


「ウネウネウネウネ...新鮮だニャ」


光ない瞳で呟くるーは心を失ったかの様に、フォークを手に取り...丼の中心でこちらを見るティポルへ突き刺した。

ぴッ と高く奇妙な声をあげるティポルをるーはクチへ運ぶ。ウネウネとフォークに絡み付く足、食べられないと必死に抵抗する笑顔のティポルをるーは一口で。


「いったぞ この猫...」


「恐れを知らぬのぉ...」


アゴを動かし、確実に今ティポルを噛んでいる黒毛の猫人族は結んだ髪を揺らし、ただ...噛み続け、そして飲み込み言った。


「美味しいニャ」


そのまま丼を手に、るーは光を取り戻した瞳で食事する。

キューレは恐る恐るティポルの足をかじる。


「おぉ、うまいのぉ!」


と言い我を忘れたかの様に丼を貪り喰う2人。


完食したるーへわたしは丼を差し出し、親指を立てて言葉を添える。



「わたし、生物、無理」



すぐにブルーベリーサンドを注文し、ティポルを上手く避ける事に成功した。



さすがに...ティポルは食べたくない。






昼食を無事?に済ませ、1階へ戻り、気になっていたマスタースミスの鍛冶屋へ。扉を開くと鐘の音が響く。


綺麗に並べられた武具、ビビ様の店は冒険者っぽい雰囲気だが、この店は貴族っぽい雰囲気。

飾った店内だが武具は相当凄い。白と緑の鎧、何かの角を使って作られた弓、他にも色々な武具やアクセサリーが綺麗に並べられている。

奥からは研磨音、店内にいるのは雇い店員で研磨音を響かせているのがマスタースミスだろう。

名前は...


「ララじゃ」


思考を読んだかの様にキューレが答える。

どうやらここのマスタースミスはララと言うらしい。



「さすがLaLaブランド!この鎧は全属性への耐性値が高いぞ!」


「こっちの太刀は軽くて頑丈、しかも空3で生産にはトロルの魔結晶を使ってる!」



客が周りを気にせずはしゃぐ。

スロ3でトロルの魔結晶使用生産。

トロルの魔結晶は武器専用素材で剣術時にSTRを上昇させる効果がある。と言う事はあの太刀は、剣術時STR上昇効果を持つ...特種効果武具エクストラウェポン。しかもスロ3なので好みのマテリアを装着可能。

さすがマスタースミスを持つ鍛冶屋だ。



最近知った事だが、武具だけは生産時に特種効果エクストラスキルを3つまで付ける事が可能。完成品のスロット数は運。

特種効果を3つ発動させスロット空3の品は最高品。

1人が発動できるスキルは21が限界だったハズだが、その21の対象にならないのが特種効果武具エクストラウェポン。装備者が発動させたスキルではなく、装備品が持つ常時発動スキルなのでカウントされない。


なので正確に言うと1人が発動できる装備スキル数は最大30と言う事になる。

まぁ最大値まで使えるスキルを盛ってる冒険者は存在しないレベルだ。


ここで研磨を済ませたマスタースミスのララが顔を出す。


ミントグリーンの癖毛を持つ細い女性..だと思うがビビ様の件もあるので鍛冶屋の性別は外見で判断出来ない。


「グレンエストックの研磨終わりましたー!取りに来て取りに来て!...んん?」


声は女性だ..てかアイツめっさこっち見てるぞ。


「そこのお兄さん!背中の大剣...それ王竜オウドラ!?」


マスタースミス ララはるーの背にある武骨な大剣を指差し王竜と言った。

そんな名前の剣だったとは知らなかったが、マスタースミスが瞳を輝かせて食い付く代物なのか?


「そうニャ、オウドラゴの真ん中の角を使って生産してもらった武器ニャ」


「お兄さんケットシー!?すっごー!見せて見せて!見せて!」



....鍛冶屋ララ、コイツうるせぇー!







これから約2時間、るーだけではなくわたしの武具まで舐め回す様に見られた。


るーの武器は王竜の角剣。

両手剣で結構凄いらしい。

防具も王竜。耐性も高く、見た目の割に軽く動きやすい和服。威力等を上げる、俗に言う火力装備だ。

黒と赤で派手過ぎない感じ。猫人族は和服も着る。ゆりぽよの和服も多分王竜だろう。


わたしの装備は数ヵ月前必死に素材を集めてビビ様に作って貰った物。それから強化もした現段階でも素晴らしい武具だ。武具全てに剣術ディレイ減少スキル付きの黒紫の計量防具シャドーシリーズ。ブーツまでもがシャドーで闇属性の耐性と闇属性攻撃の威力が上がる。スカートにするか?とビビ様に言われた時は全力で首を横にふり、ホットなパンツに。この長いソックスがたまにかゆくなるが、これが重要らしい。


武器は細剣。薔薇の棘や植物の蔓の様な装飾を施した刀身が青い剣、氷樹の細剣。

名前の通り、氷属性の威力が増加し、炎は低下する。一応特種効果武具になる。

冒険者ランクがB辺りまでくると、特種効果系がデフォだ。

ブラッドオニキスはアクセサリー、ピアスにして装備している。


...あの3人も生産、強化を済ませたとビビ様に聞いた。

どんな武具になっているのか、この大会中お披露目と言う事になる。



と、まぁララの店で武具話に花を咲かせ、大会中武具のメンテは任せて!と笑顔で言ってくれた。ビビ様の店がない以上、他の店に頼るしかないので甘えさせてもらおう。


一通り会場を散策し、わたし達は街へ降りる事にした。宿の場所も知っておきたいし、どうせなら観光もしたい。


ティポルマントを靡かせ人混みを進み、無事街まで到着。

よく見ると本当にティポル系の屋台がある。



「グロいわ!こんなん食えるか!」


響く声。


「ハッハッハッハ!確かにグロいな!でも味はいい...売れそうだ」


聞いた事ある声。


「ブドウパンの店はないのか?」


ブドウパン...。



「フロー、知り合いだろ?挨拶してこいニャ」


「ウチも知っとる顔じゃ、そう言えば るーにちゃんと紹介しとらんかったのぉ」




るーはわたしの事をフローと呼ぶ。

グルグル眼鏡のアイツ...

ほら、あそこのメンバーに混ざってティポルの串焼きを食べて...。



「何でお前がいるんだよぉぉぉ!」





....出会った。








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