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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【闘技大会】
83/759

◇82



襲撃事件から1ヶ月があっさり経過した。アルミナルの職人達がここだと言わんばかりに本気を出し、街はあっという間に修復...どころか以前よりも大きな建物が増えた。

ユニオン、自由を象徴する様な謎のオブジェクトまで建てられて、少々やり過ぎではないか?と思ったが職人達はクチを揃えて「まだ甘い」と言う。


レッドキャップは世界樹の宝珠...黄金魔結晶を持っている。しかし最近は全然レッドキャップの名を聞かなくなった。何か悪巧みでもしているのか、魔結晶の使い方が解らず詰んでいるのか、誰にもわからない。



デザリアの件はトラブルなく終わった。王が何者かに操られていて、争う様に糸を引かれていたと知ったデザリア...イフリーの人間達は、偽りの王の命令だったとは言え、取り返しのつかない事をしてしまった。と後悔に包まれた。今後どの様な関係を望むのか、セッカはイフリーの者達へ時間を与え、答えを待った。

その答えは “イフリー大陸はウンディー大陸の下に付く” という答えだった。

これにセッカは「下も上もありません。手を取り合って助け合って進みましょう」と、答え同盟的な感じで終わった。

イフリー大陸の王座はどうなるのか、それはわたし達やセッカ達が気にする事ではない。イフリーの人々が考え、悩み、答えを出すだろう。デザリア軍はそのまま残っているが、アスランは軍を辞め、完全に冒険者としてこの街バリアリバルの住人になった。


シケット、イフリー大陸、ウンディー大陸。

世界は少しずつ、1歩ずつだが、手を取り合って進み始めている。


ひぃたろ...ハロルドとプーはこの街に残る事にし、全員がそれをあっさり受け入れた。今回の...プーの暴走の件を無かった事にするつもりはない。だからこそ、助け合っていこう。と何だか前向きな感じに話が進んだ。

あれからプーは毎日の様に雷を操る修行をしている。ハロルドとワタポも暇を見付けては手合わせしている。

わたしは...片っ端からクエストをする日々。


平和で平凡な日々が毎日続くと、何とも言えない...モヤモヤではないが何かが溜まり始める。そんな時、ある噂がバリアリバル、いや...全世界に広まった。




イフリーの首都、デザリアで闘技大会が開催される と。





ビリリコーラの気泡が昇っては消え、昇っては消える。

これをもう何分見ているだろうか。わたし、天才魔女エミリオ様はワタポ、ハロルド、プーの3人とバリアリバルの酒場 星の番人で夕食ついでにあの話をした。


2ヶ月後デザリアで行われる大規模なイベント。闘技大会の話だ。

話を始めた時は、それはもう吐きそうな程 盛り上がった。

が...キューレから闘技大会についての詳し情報を提供してもらい、それに眼を通して...今の沈黙が始まった。


闘技大会については簡単に説明するとこうだ。

職業、年齢、性別は問わない。


優勝賞金は1000万v。

3人1チーム、大会中変更禁止。メンバーの誰かが参加できない状況になった場合は残りのメンバーで続ける。メンバーが全員参加できない状況になった場合は失格。

ポイントで競い合う。


優勝すればガッポリ稼げるイケイケな大会で、優勝者以外もウマウマらしい。この闘技大会はありとあらゆる職業の者が見る世界規模のイベント。優勝者だけではなく、例え最下位でもこの大会で目立つ事により新たな人生の道が開かれる事もあるらしい。

参加していない場合でも、このイベントを狙って名を売る者も存在する。

数年前の闘技大会で1日毎に不定期クロニクルが発行され、闘技大会ファンは勿論、参加者も購入し、その日の大会記事を噛み付く様に見た。それから不定期クロニクルが超有名雑誌になったらしい。

ギルド マルチェもこの大会でモンスターに詳しいギルドを知り、手を組み、モンスター図鑑を販売し始めたとか。

とにかく参加者は勿論、それ以外にも大きな影響を与えるのがこの闘技大会。


わたしは勿論、3人も参加を強く希望した。

ここで問題が...そう。1チームの上限は3人。わたし達は4人と1匹だが、テイマーは使い魔と合わせて1人になるらしいので、このメンバーから溢れるのは1人。

すぐに決まるじゃんけん(ディアやスキルなし)でメンバーを決める事になった。


張り詰める空気。

ぶつかり合う視線。

空気を斬り裂く様に振り下ろした手は2本の指が美しく立てられている。そう、一番強そうなチョキ、またはチーをわたしは選んだ。

ワタポはパー、ハロルドもパー、プーはグー。


ほぉ。1戦目は各々様子見という訳か。面白い。ならば!


わたしは再び、最強のチョキチョキを炸裂させた。全てを切断するこのフォルム。まさに最強。


「...お、おおぉ!?これはわたしの勝ちじゃん!やっぱコレ最強うぇーい!」


やはり、やはりじゃんけん最強はこのチョキチーチョキチョキだ!じゃんけんを知らないバカ共はバカだから揃って同じパーを出した。頭の中までパーなのだろう。

残念だがこの勝負、エミリオ様の1人勝ちだ。まぁこれが実力の差ってやつだ。

呆然とする3人へわたしは強者の言葉を吐き出す。


「そんな顔するな、わたしが相手では仕方ない。キミ達も強い方だと思うが相手が悪かったのだよ」


「エミちゃ...」

「エミリオ...」

「エミちゃん...」


何を言われ様とわたしの勝ちは決定したのだ。これで闘技大会に参加するのはこのエミリオ様...あれ?おかしい。

勝ったハズなのに、1人だ。


「それじゃあ、エミリオは別チーム。私とプンちゃんとワタポで闘技大会参加でいいわね?」


「え?ちょっとハロルドさん、あれ?なんだろ...勝ったのに、え?」


勝ったのに負けた感が...なぜそうなるハロルド。勝ったのはわたしだぞ?


「エミちゃんが1人勝ち、ボク達は負け、これで1、3に分かれたからチーム決まったね!」


え?プーちょっと、なにそのルール。


「それじゃワタシ達は参加希望して...エミちゃメンバー集めかな?」


ワタポ?え、ワタポまでその感じ?ここは「ワタシの変わりに入る?」とかじゃなくて?


「大会であたっても手加減しないわよエミリオ」


....、....。

最悪だ。1人溢れただけではなく、やべーヤツを敵に回した。チート妖精と人間離れと電撃狐...もうわたしの大会は終わった様なもんだ。いや、いやまだだ。これはチャンスかも知れない。この3人に勝てばわたしの凄さが全世界に轟く。

妖精よりも美しく、人間よりも賢く、狐よりも狸。

これはチャンスだ。


「勝つのはチームエミリオだ!」


「うん、それよりエミちゃメンバー探しは?」


「参加締め切り今日の22時までよ?」


「今は...19時30分だね、エミちゃんいそげー!」





この後わたしはメンバーを探し、締め切りにギリギリ間に合った。


それから毎日、この3人だけではなく、参加者全員に勝つ為に、全力でレベリングする日々があっという間に。

襲撃から1ヶ月、大会までの2ヶ月、合計3ヶ月が1話で過ぎ去ったのではないか?と思う程、コーラの気泡が昇り消える様に、あっという間に過ぎ去った。



そして、大会前日の朝。




わたしはイフリー大陸のデザリアへ。





砂漠があるイフリー大陸。

気温は高いがこの時期は割りと過ごしやすく、闘技大会をするには丁度いい。

イフリーの首都デザリアはウンディーのバリアリバルとそう変わらない大きさの街。この街に参加者達が集い、街外れの高台にある王宮、その王宮の下と言うのか...そこにある闘技場で大会が行われる。

多少暴れても問題ない様に、街や王宮とは距離が設けられている。観客席もあり星霊界の闘技場よりも広い。参加者はこの闘技場から出る必要がない様にレストランや酒場にショップ、医務室、控え室にはシャワーまで付いているらしく、この闘技場内のショップ系...レストランや酒場も、大会に参加しない者が、大会中だけ経営、営業する。


この大会はギルド、冒険者の他に、軍や騎士、他にも様々な種類の参加者が存在する。

貴族が企画した闘技大会ははじめは貴族の暇潰しだったが、今では世界規模のイベントまで成長、参加者もそうでない者も、この闘技大会で自分の力を存分に発揮し何かを得る為に各国から沢山の人間だけではなく数々の種族までもが集まっている。



初のイフリー大陸、デザリアはクエストではなく、闘技大会で訪れる事になるとは。



悪くない。



「んじゃ、行きますか!」



砂漠よりも温度が上がる街、デザリアの門をわたしは...わたし達は進み、活気付く街へ入った。







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