◇親殺しの三魔女
上下───地上と地脈から、ここ地殻へと向かってくる魔女をわたし達は迎え撃つ事に。
魔力隠蔽魔術を使っていても不思議な事にわたしは相手が魔女である事がハッキリわかった。
「来るぞ!」
一度叫び、水属性魔術を詠唱する。
わたしとワタポが相手をする魔女は【紅玉の魔女】と呼ばれる火や炎の属性に恐ろしい適性を持つ【四大魔女】だ。
天井の一部がオレンジ色に染まったかと思えばすぐに赤く溶け、マグマのような魔術が降り注ぐ。過剰詠唱で待機していた水魔術を放ち、降り注ぐマグマを一気に冷却し、個体化したマグマが落下する中で、
『むー? 誰だー?』
空中で燃える炎が停滞する。
『相変わらずダッセェ鉄箒乗ってんなぁ、ラヴァイア』
魔女語に対しわたしも魔女語で返しつつ、冷却によって発生した水蒸気をそのまま隠蔽魔術に利用し、ワタポを潜ませる。
大型のバーナーをイメージして作られた鉄製の箒───最早箒の形状をしていないそれに跨がる赤髪の魔女が水蒸気を掻き分け姿を見せた。
『エミリオちゃん! あたしの事覚えてるって事は思い出したって事ね!? それじゃあ───』
相手の姿が見えるという事は、相手もわたしの姿が見えるという事。
紅玉の魔女は真っ赤な瞳を見開き、相変わらずのテンションで喋る。
魔女の中でも比較的に温厚......会話が出来る魔女だと覚えているが───残念ながらわたしが相手となれば順番は、戦闘、会話、となるだろう。
『───あたしのリベンジマッチに付き合ってもらうよ!』
『チッ───いつの話題持ち出してんだよラヴァイア!』
そう答えつつ中指を立てて軽く挑発すると、炎を噴射させるように鉄箒が加速し、わたしへ降下してくる。
紅玉の魔女の宝石名を持つラヴァイアは───紅玉の魔女、蒼玉の魔女、翠玉の魔女、の3人は魔女の中でも天才も言われていた。
適性属性が性格に合っているのか、すぐにその実力を示し、年上の魔女達を押し退けて【宝石魔女】となり、すぐに【四大魔女】へとなった。
幼いわたしもよく覚えている。
【宝石魔女】となったばかりの3人が個人的に当時の【四大魔女】へ序列を賭けた決戦を挑み、殺して奪った事を。
当時はこの話題で持ちきりだったのをよく覚えている......【親殺しの三魔女】という大層な名前までつけられた話題を。
『テメーのリベンジマッチなんて真っ向から受けるワケねーだろ!』
『ううん、受けて貰うよ! 本当なら外界に引っ張り出して狙うつもりだったけどね!』
『あっそ』
今の強魔女───【宝石魔女】が誰なのかを全員知らないが、ダプネ、シェイネ、グリーシアンが【宝石魔女】として君臨している事から似たような世代だと予想している。
【四大魔女】はフローも含めて全員、わたしの予想通り......と言うか変わってない。
つまり、今【四大魔女】として偉そうにしてる3人はわたしを殺したくて殺したくてたまらないってワケだ。
『あの日、クソガキだったわたしにびびってたお偉い四大魔女さん───びびって漏らした時用に替えのパンツは用意してるか?』
更に挑発しラヴァイアの頭に熱を入れる。
眉を寄せ怒りを見せた瞬間にわたしは、
「───ワタポ!」
魔女語ではなく人語で水蒸気の霧に潜んでいた仲間の名を呼んだ。
挑発はラヴァイアの視野を狭めるためであり、降下させるためでもあり、何より周囲の警戒を忘れさせるためだ。
コイツは熱くなるとすぐ索敵を捨てるタイプだからな。
『───ッ!?』
水蒸気の霧を焼き払うような熱を帯びた剣戟が駆け抜けた。
剣戟はラヴァイアの肌を軽く抉る程度だが、作戦通り箒は真っ二つに切断出来た。
「ナイス!」
「───この人が四大魔女なのね」
素早くわたしの隣へと後退しワタポは地に落ちたラヴァイアの姿を凝視した。
◆
「おっほぉー! 予想通りラヴァちゃんが来てるっちゃ───んで、チミ達はわたしに用事でもあるナリか?」
紅玉の魔女が登場しエミリオと戦闘を開始した数秒後、フローが地殻に顔を出した。
いつも通りのふざけた雰囲気で自分を待っていたであろう2人に声をかけるフロー。
「確認したい事がある」
まず、黒布で両眼を隠すトウヤがフローに問う。
「どーぞ! 答えないかもしれんけど!」
両手を頭の上で繋げ、丸を作る程度に余裕を持つフロー。耳障りな笑い声がこの上なくふざけた雰囲気を醸す中、トウヤは質問を投げかけた。
「十年前、お前はイフリーにいたな? 黒髪の科学者として」
「覚えててくれたナリかぁー? ウザいねぇー! で、そっちのワンコは?」
そう答え次にカイトへグルグル眼鏡を向ける。
「ホムンクルスを求めてたのはお前か? 何のために求めた」
「世界平和のためナリ!」
即答でふざけた事を言うフロー。カイトはその答えに「これ以上の会話は無意味だ」と判断し、それでも最後に一言。
「お前の行動でどれだけの人が犠牲になったと思ってる......どれだけの人が......ッ」
「そんなの知らねぇッス! チミは今までどれくらい水を飲んだナリ? パンを食ったナリ? 今までチミは何時間寝たナリ? 何回呼吸したナリ? そんなの数えてるワケないっしょ? それと同じっちゃ。わたしの行動が原因で死んだヤツの数なんて知らねーッス! さーせんっ!」
自分の頭を左手でポカンと叩き、舌を可愛らしく出すフロー。
頭を叩いた時にとファンシーな星を出すという、ふざけた魔術まで使いこの状況でも遊びに走る。
「もういいだろカイト、行くぞ」
「あぁ、アイツをここで討伐する」
「ええぇぇぇ!? 討伐って殺すって事ぉ!? なんでぇ!? なんでそんな事言うのぉ!? そもそも───チミ達じゃ無理って何でわかんないナリぃ?」
いちいち大袈裟な反応を見せるフローはグヒヒと笑い、2人へ「かかってこいやぁ!」と拳を空打ちするようにし、最後までふざけてこちらの戦闘も開戦した。




