表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【炎塵の女帝】
628/759

◇お届け物は



 頭の奥から全身にかけて、高熱のシビレが血管を利用し流れ周る違和感。自然と眉が寄ってしまう熱と痛みの中で、数メートル先に現れた3人を観察した。


「そこから動くな! エミも動くなよ」


 わたしをエミと呼ぶのはバーバリアンミノス達から同族だと思われ、シャーマンと呼ばれている......一応人間だ。元人間と言うべきなのかさえ曖昧だが、見た目こそふた回り程小さいバーバリアンミノス......と外見が類似した人間......なのだが、


「わっ、普通に喋ってる......」


 そういう反応になるのは仕方ない。パッと見は “それっぽいローブを装備してるバーバリアンミノス” でしかない。そりゃあの前髪が切り揃ってる女も驚くわな。


「マミーも普通に喋ってたよ!」


 わたしの姿を見てマミーだと言うあのクソガキはシャーマンに驚きもしないのが不思議......でもないか。このわたしをマミーなどと呼ぶんだ。相当気合いの入ったアホか、ただのアホか......エミリオ調べでアホは確定している。

 大怪我さえしていなければ迷わずその小さく可愛らしいクチに日々鍛え今では完璧に仕上がった拳を捩じ込むのだが......今あのクソガキはわたしの右手と武器を持っているので下手に刺激し「あーん? うるっせぇヤローだな。この右手燃やそ」なんて言い出したらわたしは高性能義手アーティフィシャルアームの愛用者となってしまう。避けたい未来ではあるが、もしそうなったら......右手はドリルかロケットパンチに、いや、ドリル()ロケットパンチが最強っぽい。


「メティ、動くなって言われたでしょ? 警戒されてるんだからおとなしく座ってなさい」


 クソガキが動こうとしたのを最初に話しかけてきた女が止める。


「......? どうして私があのモンスター達の言うことを聞かなきゃいけないの?」


「どうしても。今はまだ動くなって、はい座って」


 クソガキへ促しつつ自分も座る女。すると当然のように女の前で座り身を預けるクソガキ。仲良し......とは違うみたいだ。女の「また始まった」と言わんばかりの表情でクソガキは満足気な顔。


「なぁ、その手と武器わたしのなんだ。返してくれよ」


「いいよ、はい!」


「どわ!? 投げんなお前!」


 驚くほどあっさりと、迷い無く、駆け引きも取引もなく、わたしの右手と武器を返してくれた。投げ渡すというふざけた返し方だが、シャーマンが上手に右手をキャッチし、剣は上手い具合に地面へ刺さってくれたので一応無事───いや腕がもげてるから無事ではないのだが。とりあえず、


「拾ってくれてサンキュー、こう見えて大事なモノだったんだよ」


 左手で右手を持って礼を言うという、今後もう二度と体験出来ないであろう珍礼に見向きもしない。手と剣を拾ってくれてたヤツは確か......メティ、って呼ばれてたな。

 艶のある濃栗色の長髪でコイツも前髪を切り揃えている。防具はシルキ系の......プンプンのものによく似ていて武器は見当たらない。


「......お前ら何しにきたんだ? つーか誰だよ」


 挨拶といえるものはお互いしていない。するタイミングが無かったといえばそうだが、そもそも挨拶をする出会い方でもない。シャーマンの動くな発言に素直に従った事から、バーバリアン討伐が目的というワケではなさそうだが......そうなると、ここへ来る目的が全く読めなくなる。


「あぁ、インパクトある内容を凄いシルエットの2人が話してたから挨拶が遅れた。私はヨゾラで、このちっこいのがメティ、そしてそこにいるお人形みたいなのがリヒトさん。目的は強いて言えば、右手と剣(落とし物)を届けに来た、かな?」


 ヨゾラと名乗った女はメティともうひとりも軽く紹介し、取ってつけたような目的を言った。

 落とし物......はわたしの手と武器だろうか? それ以外に届け物はなさそうだし......凄いシルエットの2人はシャーマンとわたしだな。ここに異論はない。インパクトある内容......どんな内容の会話してたか忘れたぜ。つーかインパクトならこのヨゾラの髪色も負けてない。

 脱色したような金色で毛先は青林檎色の長髪。メティの “ロングヘアーにした” 感はなく “放置してたら伸びた” みたいな印象がある。前髪の奥には青林檎色のタレ目と、瞳に反した力のある眉。

 わたしはともかく、シャーマン───喋るバーバリアンミノスが居る前であぐら組みで座る余裕は......コイツのイカレたマナが関係してるのか?

 感知にうといわたしでもハッキリ拾える異質さがある。


「ソラさん、メティちゃんが真似するからその座り方はやめた方がいいかも」


「メティ、真似しないで」


「してないよ?」


 ......なんだコイツら。この状況でも緊張感がまるでない。言ってしまえばコイツらの前に未知の存在が2人いるって状況で警戒されてるんだぞ? 目的が落とし物配達ならもうここにいる必要はないし、何を企んでるんだ?


「あ、挨拶が遅れました、こんばんは! えっと......怪我、大丈夫ですか?」


 最後に一番普通の挨拶をしてきたのが......リヒトだったか? 白寄りの金髪で前髪どうした? ってくらい切り揃ってるショートヘア、ソーダ味のグミみたいにハッキリした碧眼。

 髪型も瞳の色も顔立ち、身体のサイズや装備が完全にお人形を連想させる。腐れ犯罪者のリリスと似たようなファッションジャンルだがリヒト(こっち)の方が雰囲気に粗さがなくていい。


「この姿みて大丈夫そうに思えるなら、医者に眼を診てもらった方いいぜ。つーか、お前こそ肌白すぎるけど死んでねーよな?」


 軽いノリ、わたしにとっては挨拶みたいな返事だが、一瞬だけリヒトが醸している丸い雰囲気が角張ったような......そんな気がした。

 ヨゾラ、メティ、リヒト......見た感じイフリー民とは思えないがウンディーでも見かけた事はない。冒険者じゃないとしたら騎士......はないか。騎士ならこんな統一性のない格好はしていないし、まぢに何者だ?


「こっちは一応挨拶したんだし、そっちも名前くらい教えてくれてもいいんじゃない?」


 ツートンヘアの毛先を摘み、興味なさげに発言したのはヨゾラだ。こっちの名前よりキューティクル情報をプレゼントした方がいいか? と思ったが残念ながらわたしは毛に対して興味がないので何も知らない。


「わたしはエミリオだ、あとはコイツから聞いてくれ」


 面倒なワケじゃないが、別に言うこともないし会話ならコイツでも充分だろう、とバーバリアンミノスのシャーマンさんへパスを出し、わたしは横になる。軽い会話で誤魔化せていた熱と痛みも一度思い出してしまえば神経に居座る......厄介で迷惑で腹立ってくるぜ。


「私は、シャーマンと呼ばれている。こんな外見をしているが一応......人間だ」


「シャーマンと、そっちが噂の魔女か......ボロボロだけど今度は何をやらかしたの?」


「あー? 悪いけどわたし今、熱と痛みでだりぃんだよ。話はまた今度にしてくれ」


 わたしを噂の魔女なんて......ちょっとなんか凄いヤツみたいな風に呼んだヨゾラへお話はまたの機会に、と返し左手の感覚を確かめる。まだ麻痺が続いているからこそ、この程度の痛みで済んでいるんだが......返ってきた武器と畳んで置いてある防具をポーチに入れたい。


「シャーマン、わたしのフォン操作して武器と防具しまってくれ。んで痛撃ポーション......は無かったな、なんかポーション類出してくれ」


「やめときなよ」


「───あん?」


 短く発言し、チビメティの頭をポンポン、と撫でてから立ち上がるヨゾラはそのままわたしの方へ寄る。


「装備を入れるのはいい、ポーションは勿体無いよ。それ───普通じゃ消せないから」


「お前......見ただけでわかるのか?」


「うん。ちなみに私は治癒術師ヒーラーでも医者でもないよ」


 治癒術師でも医者でもないヤツが、近くで数秒見ただけで “普通じゃ消せない” と見抜いたってか? 確かにシャーマンもわたしの怪我について “普通じゃ無理” みたいな判定を下していたがそれはあくまでも、多少の医術系知識があっての判定......だと思う。ヨゾラはどっちでもないのにシャーマンより早く見抜いた......なんでだ? 色々な知識を持ってるのか? 様々な経験から叩き出した答えか? それとも───......



「......お前、本当に人間か?」



 一番確率が低いであろう質問をわたしは投げかけていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ