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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【バリアリバル】
22/759

◇21



分厚く上質な木材で作られた橋。恐ろしく太い鎖が左右から伸びている。

橋を上げる事も可能。その場合は中に入る事も外に出る事も出来ない。何か意味があってこのスタイルで作られた橋なのか、芸術なのか解らない。

そんな巨大橋を1歩、また1歩進み ついに橋が終わる。

木材から石材へと地面が変わり1歩踏み込むと雰囲気は一変する。


人の数はドメイライトにも引けを取らない。

しかし大きな違いがある。それは、各々が武具を装備している所だ。ドメイライトは貴族や街人、騎士に観光客などが多かったがここは冒険者が圧倒的に多い。

観光客や街の人も勿論いるが7割は冒険者だろうか...外でこのレベル。冒険者達が集まる建物内は凄い事になっている気がする。


これが バリアリバル。


アルミナルに居たせいか、建物や街灯はシンプルに見えるが...街の雰囲気に合っている。この街はアルミナルと違って建物やオブジェなどがメインではなく人、冒険者がメインの街。

地図看板で街の全体像を見てある事を知る。

ドメイライトは段で別れているがここは円形。入り口は2つでどちらもあの橋を渡らなければ入れない。街の周りは高い壁で囲まれていて橋を上げると完全に出入口が無くなり街は壁に包まれる。

中心街には大きな建物がいくつかあり、この街を拠点にする場合は重要になりそうだ。

街の4ヶ所には壁よりも高い塔の様な建物があり、そこから壁...街の外を見る事が出来る。


キューレ、マルチェ、他にも有名な人物やギルドがこの街にいる。

それだけで心が高鳴る。隣に誰も居ないのは少し寂しいが必ずわたしの隣に戻ってくる。それまで自分の出来る事をする。


クエストでレベルを上げてや色々な情報を集めて、フレンドも沢山ほしい。

ギルドは...考えてない。



同じ事を繰り返さない様に。

少しでも多くの命を繋ぐ。


人工魔結晶の存在は命を奪う存在だ。作るのに命を使い、得た力で命を奪う。


何をどうすればいいか細かい事は正直今も解らない。でも、人工魔結晶を無くす事は命を繋げる事にもなるのではないか?

今わたしがやるべき事は人工魔結晶の存在について知る事だ。


人間のルールは難しい。

命を奪う...殺しはダメ。

人を裏切る行為も良くない。

他にも色々と面倒なルールが存在する。


邪魔なら殺すし欲しければ奪う。従えなければ反対する。

こんな中で小さい頃生きていたわたしは、人間のルール等知った事か。やりたい様にやるのが魔女。と思っていた。

でもやっぱり魔女のルールはオカシイ。人間のルールこそが一番いいと今では思っている。他の魔女から見ればわたしは馬鹿な魔女だろう。それでも、この世界に興味を持ってしまった以上はこの世界のルールに出来るだけ従う。

ハッキリしている訳ではないが、この世界でやるべき事がある以上はこの世界で生きる。

ただそれだけだ。



魔女も人間も他の種もみんな仲良くなれれば最高に楽しい世界になると思うのに...。


ま、そんな理想は夢でも有り得ない事だ。



さて、最初にやる事は...解らないぞ。

何をすればいいんだ?

そもそもこの街でみんな何をして生きてるんだ?人工魔結晶などの情報収集したいがズバっと聞き込み等をすれば大変な事になるだろう。そのくらいわたしにも予想できる。


今は一刻も早くこの街、冒険者やギルドに溶け込める様にならなければ...。



「おーおー、早速困っておる様子じゃのぉー」



ぶつぶつと独り言を呟き考えていると後ろから声をかけられた。じゃのぉー。と 歳より染みた言葉使いをする人物に心当たりがある。


「そーなのよー、さっそく迷子。やほーキューレ」


高位情報屋のキューレ。

何度も会った事がある人物で、もう顔馴染みだ。

返事をしてから振り返るとそこに居たキューレはわたしの知るキューレでは無かった。

フードローブは変わりないが髪型がちょっと違う!前髪を束ねていてそして色が赤じゃない!



「おでこ出てる!ヤシの木ヘアー!色も茶色っぽいしイメチェン?」



おでこ全開でヤシの木みたいに前髪を束ねていて、茶色っぽい赤になっていた。

アスランよりも茶色が強い。


「髪は伸びてきたんじゃ、この色が本物じゃよ。前は染めとっただけで面倒になって放置しとる」


「情報屋って目立つとヤバそうだし今のがいいよ。かわいいし」


前は何処か渋さを感じていたが、今のキューレは何処と無くカワイイ雰囲気を少し持っている。多分髪型とおでこ効果だろうか...絶対今の方がいい。


キューレはこの街が一応拠点らしく、たまたまわたしを見つけて声をかけてくれた。

色々情報が欲しいし近くの店へ入る事に。

飾り気のないレストランだが、中は冒険者で賑わっている。一番目立たない席をキューレが選び取り合えず適当に注文。食べ物が届くまでの時間にキューレから1000vでバリアリバルの完成マップデータを買い取った。完成マップデータは自ら埋める必要がなく便利。自分で街を隅々まで走り回ればいいだけの話だが...正直ドメイライトにも引けを取らない大きさの街を走るのは面倒。

買い取ったマップデータを確認し終えた所で注文した品がテーブルに届いた。

キューレはほんのり黄色のミルク。わたしはコーラ。

食べ物は適当に注文したがどれも美味しそう。


フライドポテトを食べながらキューレに色々と話を聞いた。

わたしが予想していたよりも、この街に溶け込むのは難しい様だ。

まず、今現在でわたしエミリオは無名冒険者。ランクもDと最低。

この街に溶け込むにはまず最低でもB+程のレベルが必要。有名になりたいのならばA~S+のランク、最強になりたいのならばS2かMAXのS3ランクが必要。



クエストランクの最高値はSS(S2)だが個人の最高ランクはSSS(S3)らしい。

S3レベルだとどのクエストも受注でき、報酬額も上乗せされる事があるらしい。

危険極まりないモンスターの討伐などのパテにも呼ばれる。言わば強者。


一番理解しておかなければならないのは、+ の 事だ。

わたしはDランクだがD+のクエストは受注不可能。

Dランクの高難度クエストを成功させれば+がつく。+はそのランクの中の最高難易度クラスのクエストをさす。

最高難易度をクリアすればランクは上がる。しかしその最高難易度はほとんどがボス級モンスターの討伐らしい。


前回戦ったギガースドラゴはB+...Bランクの最高難易度モンスター。そりゃボロクソにやられるハズだ。

しかしあの地竜レベルでB+...A+やその上のS等はとんでもないモンスターが存在しているのか...。

これは地道にランクを上げなければ本当に死んでしまう。


話によるとC+までは、そこそこ戦えれば簡単に上がるらしい。しかしC+からは戦闘能力だけではなく、判断力や武具のスキル、剣術や魔術、アイテム等々の勘や感覚、個人の戦闘経験から産まれる熟練度スキルが必要とされる。

勿論ソロで勝てる相手ではない。


思ってた以上に冒険者やギルドは難しい仕事なのだ。

常に死が付きまとう仕事。

まぁビビっていても始まらない。


色々な情報を教えてくれたキューレにお礼を言うと、気にするでない。と珍しくヴァンズ請求がない...これは何かあるな?と思っているとやはり対価と言うか情報を求めて来た。



「お前さんの防具の個有名を教えて貰えんかのぉ?出来れば入手方法等も知りたいのじゃが」


「防具?白黒?」


そう言うとキューレは頷き、わたしは個有名を確認する為にフォンを操作する。

今自分が装備している武具等は装備品ポーチの中にある武具名に黒い星マークが付く。

武具等を放置していたり、奪われた時はこの星マークが徐々に白くなっていく。全てが白になった時はその武具はドロップアイテム扱いになるので置き忘れや奪われっぱなしには注意。


さて、わたしの防具の個有名は...。


ギガレスシャツ

ギガレスパンツ

ギガレスブーツ

ブラック タイ


ブラック タイ はネクタイか?

ブレスレットを装備しているのでアクセサリは2つ使ってる事になりタイツやベルト、サスペンダはただのオシャレアイテムという事になる。

ついでにスロット数を確認してみた所、ブーツが空き2。他は空きがない。

おそらく作成中にスロットを埋めたのだろう。ブーツのスロットには何を入れるか本人が悩む楽しさまで用意してくれるとは...さすがマスタースミスのビビ様だ。



個有名と入手方法(素材は言わず作製者名だけ教えた)を言いキューレとの取引は終了した。

簡単に食事を済ませ、わたしは中心街へ。キューレは情報収集へ。ここで別れる事に。


「お前さんも今日から正式に冒険者じゃの。何かあればウチを頼っとくれ」


「うん、わたしも面白い話とか聞けたら教えるね」


軽く挨拶を済ませ各々別の方向へ進んだ。


中心街にある集会場本部へ行きクエストをする。

サクサクC+まで上げて、そこからがスタートだ。


バリアリバルの飲食店は武器を装備したままの来店は禁止だった為、フォンからフルーレを取り出し腰へ。

そのままマップデータを開き中心街を目指した。




石材ではなく木材で建てられた大きな建物。

木材と言っても素朴な感じではなく木材にしか出せない雰囲気を纏ったこの建物が集会場本部。

他の場所にある集会場よりも大きいらしいが、集会場自体見るのが初めてのわたしには比べる事は出来ない。



さすがは中心街。冒険者や人の数もカナリ多く、店の数も入り口付近とは比べモノにならない数だ。


集会場からさらに奥へ進むと本当の中心。そこにはユニオンがある。今ユニオンに行っても何の意味もないので行かないが、暇を見て1度見学に行ってみよう。

今はとにかく、集会場だ。


ドアは二重になっていて、雨等の日以外は1枚目のドアは開きっぱなし。2枚目のドアはスイングドアになっていて外から中が覗ける様になっているが、どうせ今から入るんだ。覗く必要もないのでスイングドアを押し中へ。


「おおぉ...!」


つい言葉が漏れてしまう。


中は予想以上に広く、高い天井の2階建て。2階に行く階段には[バール・トラットリア]と書かれているがサッパリ意味が解らない。

無人のカウンターが20、受付人が座るカウンターが10。おそらくアレがクエストカウンターだろう。無人の方には冒険者が自由に座りフォンをコードと繋ぎクエストを見ている。別のカウンターは冒険者とマルチェの女性が相談しつつクエストを見て決めている。

クエストカウンターの他にもテーブルやイス等もありクエスト出発前の作戦会議やクエスト終了後のメンバーが各々時間を過ごしている。

薬品類を売るアイテムショップもあり、そのショップの近くにはアイテムボックスへ繋げる事ができるコードも複数存在している。


アイテムを買い揃える者。

作戦会議をする者。

クエスト成功を喜ぶ者と失敗を悔しがる者。

2階へ登り降りする者達とただイスに座り冒険者を観察する者など、色々な人がそこには居た。


わたしは初めてなので人が居るカウンターへ向かい、挨拶をしランク上げをしたい。と相談してみた所、すぐさまクエストリストをスクロールする。


フォンをコードと繋ぐ事によりクエストリストが画面に表示される。人が居るカウンターでは相手(この場合わたし)の言う条件に合うクエストをいくつかピックアップしてくれて、その中から自分に出来そうなモノを自分で選ぶスタイルだ。


わたしの言った条件は1つ。

ランクを上げたい。


画面に表示されたクエストは4つ。


[平原を荒らす猪達]

[カワイイ厄介者]

[素朴な味を]

[ドリードル討伐命令]


正直どれがいいのか解らない。指先が行き場に迷っていると、簡単に説明をしてくれる。

上が一番簡単な難易度で下が一番難しい難易度。

上3つをこなせばD+になれて、下の1つ[ドリードル討伐命令]をこなせばD+。どちらも結果は同じだがクエスト数が違う。


ドリードルとはどんなモンスターなのか...全く予想出来ない。すると受付人はアイテムショップの横にある一回り小さな店を指差した。

どうやらあの店でモンスターデータ、図鑑を買えるらしい。

ショップへ行きドリードルを求めてみると300vで販売されていた。迷わず買いモンスター図鑑を開いて見るとドリードルが追加されている。これは便利だ。モンスター図鑑は永久的に保存されるので1度買えばそのモンスターの情報は何時でも確認可能。そしてこちらがレアなモンスターの情報を持っている場合は買い取ってもらえる。勿論売ってもこちらの図鑑からは消えない。


ドリードルの情報を購入し、もう1度カウンターへ戻りゆっくり確認する。


[ドリードル]

全長約180センチの亜人モンスター。緑色の皮膚と1つ眼が特徴。

棍棒を武器に戦う。魔法等は使えない。



なるほど。なんか弱そうなヤツだ。

クエストではこのドリードルを10匹討伐する事になるのか...よし。


わたしは[ドリードル討伐命令]を受注し、クエストカウンターを後にした。


生息場所などが解るモンスターはクエストやモンスター図鑑にその情報が記入されているので、近くにあったイスへ座り情報とアイテムの確認をする。

このクエストをこなせば...上手く進めば数時間でランクアップできる。


ドリードルは毒等のデハフは無いらしいので腰のポーチを回復ポーションのみに変更しドリードルが生息しているウンディー大陸の洞窟へ向かう。

途中モンスターを発見しても他の冒険者やギルドの人達が倒しているので戦わずに済んだ。

スムーズに進み、目的の洞窟へ到着。クオォォ と、風の鳴る音が響き少し湿った風を吐き出す入り口。

雰囲気は半端じゃない。が、今わたしがやっているのはD+へ上がる為のクエスト...一番レベルの低いクエストだ。


自分にそう言い、心にある恐怖心と不安感を消し去り生温い洞窟を進んだ。






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