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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【バリアリバル】
20/759

◇19



ビビ様から借りた細剣は今までわたしが使ったどの剣よりも重い。細剣でこの重さは正直どうなんだろう?と思ったが選んでいる時間すら惜しい。

雨のアルミナルもまた芸術的。と思っている人々なのだろうか、濡れながらも街並み見ては声をあげる。味も歯応えもない芸術になどに興味が沸く訳もなく、わたしはただ走り続けた。途中速度を少し落とし腰に細剣を装備。外れない事を確認し一気に足を進める。

目指す場所は時計塔。




先程ビビ様の店で色々と話していた時、突然わたしのフォンが鳴り響いた。

画面に表示されている名前はアスラン。数少ない...と言うか3人しかいないフレンドの1人だ。セッカとは友達だけど彼女はフォンを持っていなかったのでフレンド登録は出来なかった。次会った時はきっとフレンド登録も出来るハズ。

ビビ様はまだフレンド登録していない。なぜビビ様と呼んでいるかと言うと...武具を見て触った時ゾクゾクとしていて少しでも気になる部分、気に入らない部分などを見つけると容赦なくハンマーで叩き直す姿、あの表情は...ドMのブタを調教する女王様の姿に似ていたからだ。鞭ではなくハンマーで。愛を持って武具を調教する鍛冶屋...第1印象通りヤバイヤツだ。

その女王ビビ様と大事な話しをしている途中に通話を飛ばしてくるアスランのタイミングの悪さにムスっとしながらも応答するとウンディー大陸に上陸したのかを聞いてくるではないか。

そんな事を聞く為にメッセージではなく、わざわざ通話を飛ばしてきたのなら怒ってやろうと思っているとアスランは 今からアルミナルの時計塔で会おう。と言い始めた。わたしは丁度アルミナルに居たし問題ないのだがデートの誘いならば丁寧にお断りをするつもりだった。

しかし、オイシイ話しがある。と言うではないか。アスランが言うオイシイ話しはお金の話以外あり得ない。気がした。

話だけでも聞いてみようと店を飛び出して今まさに時計塔へ到着した。


フードも傘もない人影。あの変な赤髪は間違いなくアスランだろうけど他に2人いる...茶色の髪で鎧姿の男と緑の髪の...めったに見れない和國防具の男。

何かを楽しそうに話しているが、どうせゲスい男子会話だろう。ため息を吐きアスラン達と合流する。



「男子会話終わった?」


「お?きたな。男子会話ってなんや」


約1ヶ月ぶりに会うアスランはコレと言って変わりはない...が背中に背負っている武器が剣に変わっていた事に少し驚いた。ナックル、クロー、使っている所は見た事ないが魔銃も持っていたアスラン。剣も使えるのか?


「おっと、エミリオよ。こっちの鎧マニアがゆうせー、隣の侍がれっぷーだ」


「ゆうせーさんとれっぷーさん、ね。エミリオだよ!」



鎧姿の男がゆうせー。

ヘルムは手に持っていて背中にはタワーシールドとハルバード。


和國防具の男はれっぷー。

カタナを腰から下げている。アレも和國の武器だったハズ。


一通り挨拶を済ませてアスランの話を聞きたいのだが、出来れば何処かでゆっくりしながらが望ましい。しかしこのアルミナルには食べ物屋が全然ない。

するとアスランが 移動してから話す。と言い足を動かした。わたしは黙って後を追う。

さすがはアスラン。アルミナルではレアなレストランへわたしを案内してくれるとはプロだな。丁度お腹も減ってたし何か食べよう。


丸いテーブルを4人で囲み座る。3人は飲み物を注文、わたしは飲み物と食べ物。思ったより早く注文の品が届きわたしはハンバーガーを手に取りクチへ運ぼうとしていた。

3人は謎の表情を浮かべわたしを見ているが、分け与える気はない。一気にハンバーガーへかぶりつき最高の感想を聞かせてやろうと思っていると...。


「...んぐ!?」


思わず喉から声が漏れる。

なんだこの味。歯応えは普通にハンバーガーなのだが味が大変な事になっている。


舌を痺れさせる謎のソース。辛いや苦いではなく、とにかく舌が麻痺する。そして生臭い何かと変に酸っぱい何か。

クチを右手で押さえると3人は、吐くなよ!と言うが...、ごめん、無理。


「おっえぇ」


皿の上に吐き出し自然と涙が溢れる。こんなの食べ物じゃない...。

店の人が苦笑いで皿を片付けてくれた。今すぐ飲み物でクチの中をリセットしたいのだが...怖い。

このコーラも変異しているのではないか。


「飲み物は大丈夫や」


アスランの言葉を信じられる訳もなく、わたしは一番近くにあったれっぷーのブドウジュースを飲んだ。

これは大丈夫だと解っている。届いた時れっぷーは一口飲んでいたのを見たからだ。

予想通り普通のブドウジュースでクチの中をリセットする事に成功。

落ち着いた所でアスランが話を始める。


「ギガースドラゴって知っとるか?」


勿論わたしは知らない。ドラゴンではなくドラゴ...なんかショボそうだけどギガースって名前がタフそうな響き。


「ギガースドラゴって青い鱗の地竜種だっけ?」


れっぷーが知ってる雰囲気を出しながら言う。

ドラゴンにも色々と種類がある。空を呼ぶのを得意とする種類が飛竜種。火を得意とする種類が火竜種。今話しに出たドラゴンは地竜種...地底深くに潜っているドラゴンが地竜種。

確か動きが遅くて飛べないドラゴンだったハズだけど、防御力は高い。


「その地竜がどうしたの?」


わたしが質問するとアスランはフォンのマップを起動させ画面のマップを指さす。鎧の男ゆうせーさんはモンスター図鑑を。


「今朝ゆうせーとクエストしとったら発見したんや...ここで、その地竜を」


まさかの地竜発見。ドラゴンは存在する。それは誰もが知っている事だが 発見した とは驚いた。ドラゴンに似たモンスター、リザード系やワイバーン系は探す必要もない程存在しているがドラゴンは探しても見つからない程レアなモンスター種の1つ。それを発見したとは幸運なんてレベルじゃない。正直わたしも本物のドラゴンを眼の前で見た事はない。

ゆうせーさんのモンスター図鑑を確認すると、確かに地竜種と書かれている。


[ギガースドラゴ]

地竜種。

岩の様に堅い青の鱗を持つ地竜。スピードは遅いが攻撃力と防御力は高くブレス攻撃も持つ下級ドラゴン。



下級ドラゴンと書かれているが恐ろしい事にそのランクはB+だ。

Bランククエストを何度も成功している実力者が挑めるレベル。あくまで挑めるレベルだ。討伐するとなればAランクレベルの実力が必要。

自分のランクはフォンで確認可能だが、確認するまでもなくD。+すらない最低ランクの冒険者。

まぁ地竜に挑む場合、必要最低限ランクの話しだが....正直ここで発見した事を発表するという事は間違いなく...。



「今からこの地竜を倒しに行こう思うんや。4人で」



やっぱりそうなるか。1ミリも勝てる気はしないし地竜だってバカじゃない。と言うかドラゴンは知能が高いと言われている。危険判断なども出来る生き物だろう、もうその場所から移動している確率も高いし地竜なら地面に潜ってる気がする。

しかし...これは本当にオイシイ話だ。

もし、もしその地竜を討伐出来れば素材がガッポリ入るだろう。それを売れば相当な金額になる。


「オレはいいよ、地竜見たいし」


侍れっぷーがあっさり討伐賛成。見たいという気持ちだけで挑む相手ではないが...なんだろうか。やれそうな気がする。よし。


「わたしも行く」


こんなチャンスは滅多にないしスピードが遅いならヤバくなったら逃げればいい。何より見てみたい。ドラゴンと呼ばれる存在を眼の前で。


「よし!今から出発や、準備は...大丈夫やろ?」


アスランの言葉に3人同時に頷き、わたしは一応ポーチを確認した。

ポーション類はバッチリ、武器も折れたレイピアではなく鍛冶屋ビビが作った細剣。ニワトリ騎士ヒガシンから貰ったロングソードより少し重いが問題ない。

気合いを入れわたし達はその地竜がいた場所へ向かった。





芸術の街を出て少し歩いた所にある洞窟で1度止まる。


「この洞窟の奥で地竜を見た、そんな長くない洞窟や。ここでパテ組もうか」


パテ、パーティの略。

フォンのパーティ機能を使ってチームを組む感じだったはず。パーティを組めばドロップアイテムがパーティメンバーに自動的に分けられるシステム。フレンド登録していなくても近くに相手のフォンがあればマナのやり取りをして組む事が出来る。

パーティを組む場合リーダーのフォンが他のフォンとマナのやり取りをする為、リーダー以外はわざわざメンバー全員とマナ交換をしなくて済む。

リーダーはアスラン。


「おけ、ドロはゲットした人のもんや」


この一言は大事だ。パーティ機能でドロップアイテムが分けられているにも関わらず戦闘終了後に一旦ドロップアイテムを全て取り出してから分けるバカも存在すると聞いた。そんな面倒な事を望むヤツなど存在する訳がないし、嘘だって言える。

パーティ機能でドロップアイテムが自動的に分けられるとしても100パーセントドロップする訳ではない。大量ゲットするメンバーも居れば何1つゲット出来ないメンバーも勿論いる。

こればかりは運だ。


「部位破壊は近くにいるヤツが拾って戦闘終了後にどうするか決める。ええか?」


部位破壊。モンスターの部位を破壊した時、その部位等はその場に落ちる。数秒~数十分はその場に落ちたままなのでモンスターを倒し終えた後でも拾えるが討伐時間が思った以上にかかった場合は残念ながら消滅する。


モンスターも部位も消滅する時は灰の様になって消えるが、その時フォンも感知出来ない程 微量のマナを出して消えるらしい。

そのマナは空間に溶け込み、半分は普段わたし達が使っている空気中に無限に存在するマナとなり、もう半分は消滅したモンスターのリソースマナにもなるらしい。

人間等は死んだ時、体内にあるマナだけが空間に溶け込む。死体は灰にならずに残り、マナを失った身体はゆっくりと腐っていく。

魔女であるわたしは腐らず黒紫の炎が身体を焼き消す。


ま、今どうでもいい話しだ。


部位破壊ドロップの件もわたし達は承諾し、いざ地竜が眠る洞窟を進む。

モンスターの気配もなくサクサク進めると思ったがここは洞窟、暗くて足場も悪い。


「まって」


わたしは小声で言い足を一旦止めた。全員が近くにいる事を確認してから詠唱を始める。

発動した魔術は支援系、バフだ。魔方陣は展開されず無色の光が全員を一瞬輝かせる。そして視界が明るくなる。

驚きの声を漏らすメンバーの反応がバフ効果が発動した報告だろう。わたしは頷き再び洞窟の奥を目指した。

このバフのいい所は日の光を浴びなければ解けない所だ。

洞窟内や夜等はその効果を存分に発揮してくれる便利バフの1つ。

これは何度使っても効果の変化がない魔術なので覚えて放置していても問題ない。


思ったよりサクサク進めたのかもう洞窟の奥へ到着した。妙に広くなっている空間だが...地竜っぽい姿はない。

やっぱり逃げられたか。と思っていると、ゆうせーさんが岩の塊を指さす。

少し近付きよく見てみると岩が所々エメラルドブルーに輝く。


「あれが地竜の背中や」


アスランがそう言うと3人は少し距離をとった。れっぷーは手で 下がって と合図を出すのでわたしは3歩程下がる。

全員がわたしの方を見て頷いた。一瞬何がしたいのか理解出来なかったが皆武器へゆっくり手を伸ばし構える姿を見て狙いが解った。

わたしも頷き返し詠唱に入った。落ち着いて停止した状態での詠唱、それも魔力をそこまで使わずにした為、僅か1秒でファイアボールの発動に成功した。火球が2つ洞窟をてらし飛び地面から少し出ている地竜の背中へヒット。


よし!と言おうとした時、地面が揺れバランスを崩してしまう。手を付き何とか堪えていると地面をエグり地中から飛び出す地竜、ギガースドラゴ。

地面を吹き飛ばし現れたその姿に息を飲んだ。


首、背中、尻尾の先までを覆う岩の様な鱗。4足で着地する足も鋭い爪以外は岩の様な鱗で覆われていて、鼻は巨大な角の様に尖っている。何よりも驚いたのはその大きさ。

ノムーの平原で戦ったムカデや蜘蛛も大きかったがそんなレベルではない。4足歩行で3...4メートル程はあろうその巨体さ。



これがドラゴン。


初めて見るドラゴンに感激している暇もなく、咆哮が炸裂する。これはもう鳴き声ではなく攻撃だ。

空気がビリビリと揺れ肌を叩く。耳を塞がずにはいられない程の音量に怯んでいると地竜ギガースドラゴは前足で地面ごと引っ掻く。足の幅も広い為、攻撃範囲も広い。ガードなんて選択肢は無い。


全員が必要以上に回避したが、その理由はエグり飛ばされる岩も回避したからだ。

振られた前足が戻る時産まれた隙を逃さず、ゆうせーさんはタワーシールドを構え一気に突撃。地面に付きそうな地竜の前足を盾で弾き上げハルバードで攻撃。

盾とハルバードでの攻撃で地竜のターゲットはゆうせーさんに。尖った鼻で凪ぎ払う攻撃をタワーシールドで受け止めてる隙にわたし達は後ろへ回り込み一気に攻める。


アスランの剣、れっぷーのカタナが無色光を纏い煌めく。


右下から左上へ、左から右へ水平に、上から下へ一気に剣を振るアスラン。間違いなく剣術だろう。


右下から左へ、そしてまた右へとジグザグに切り上げ、少し溜めを入れて一気に切り下げるカタナ剣術。


2人の剣術はわたし達から見て左後ろ足へヒット。少しグラつく地竜だが転倒させるにはまだ足りない。

剣術で攻撃している間に詠唱していたわたしの魔術。今回も停止詠唱した為、落ち着いてゆっくり魔力を込める事に成功、土属性魔術を発動。

剣術を叩き込んだ左後ろ足を狙い、下から一気に突き上げる巨大な岩の槍。

地竜は巨大な悲鳴と共に今度こそ転倒した。

足に岩の槍がヒットした時、地竜を覆っていた岩が砕け飛んだ。


「エミリオは部位ドロ!」


アスランはそう言い、れっぷーと2人で地竜へ攻める。頭はゆうせーさん、お腹はアスレプが攻撃する中でわたしは部位破壊した岩の鱗をフォンに収集する。

砕けた鱗の断面は綺麗なエメラルドブルー。

砕けているとは言え、わたしの手のひらより大きい。

ノムーの平原で花を採取した時は摘んだ花をフォンに近付けてマナ感知を済ませ収納したが今回は逆。フォンを鱗に近付けて収納。

固有名は[恥ずかしがる地竜の鱗]と画面に表示され1/99と所持数/限界数も同時に出る。それをゆっくり確認する暇もなく次の鱗、次の鱗をサクサク収納し、全てを拾い終えた頃地竜が起き上がり怒りの咆哮を叫び回転する様に尻尾を振り回す。3人はガードしたものの面白い程吹き飛ばされ、地竜は回転を止め一気に空気を吸い込んだ。


「やべ、腰やってもうた」


と、アスランがもがき叫ぶ。


「オレ膝やったわ」


と、れっぷーが言う。


「タワーシールドがお腹に...」


と、ゆうせーさん。


ついさっきまで素晴らしく輝いていたチーム高年齢(ゆうせーさんは若い気がする)は一撃で曇り汚れる。

それより...。


「アレ何かヤバそうじゃない?!」


わたしは地竜を指さし言うと3人は酷い顔で地竜を見る。相当痛いのか...。

一気に空気を吸い込み、吸い込んだ空気を溜める様な形でスタンバイしている地竜を見て酷い顔がより深く、より濃く歪んだ。


「「「ブレスだ」」」


シンクロ率120パーセントで呟かれた言葉にわたしは戦慄した。ブレス。

ドラゴン以外でもブレス攻撃を使うモンスターは沢山存在しているが、ドラゴンブレスの破壊力は天災と言われる程の威力。

こんな近くで天災ブレスをモロに受けたら...跡形もなく消し飛ぶだろう。防御?回避?そんな小さな事では話しにならない。マズイ...いや、手遅か?


「んぬぅおぁ」


命の終わりを感じるこの時にアスランは気持ち悪い声を上げ、顔をグシャグシャに歪めながら立ち上がった。

れっぷーも負けじと立ち上がるが、この2人...遊んでいるのか?

アスランは突然動きが停止し、あっ...と小さく声を漏らしクチを開きっぱなしに。れっぷーは両膝ガグガクで身体を支える事が精一杯。ゆうせーさんはタワーシールドがお腹にヒットし、気絶。

もう頼れるのは自分しかいない。

ブレスに魔術をぶつけて相殺作戦しか...ない。

行動中に詠唱できて、ファンブルも基本的に無く威力低下もない。これは魔女の特性。

停止した状態でいつもより多くの魔力を注ぎ詠唱する事でその魔術はさらなる爆発力を発揮する。

魔力を多く使って詠唱、発動は人間でも可能。だが魔女がそれをした場合の破壊力はドラゴンブレスの破壊力以上になる。が、そこまで魔力を注ぐ時間は無さそうだ。

それにウザウザマテリアで魔力を抑えている状態だ。ドラゴンブレス越えの魔術は難しいか.....でも相殺程度ならいける。


相殺に成功してもこの距離だとぶっ飛ぶだろう...消し飛ぶより100倍マシ。

魔術の詠唱に入ろうとした時、わたしの身体が突然凄いスピードで動いた。いや違う。凄いスピードの何かがわたしを引っ張っているのか?

とにかく景色がブレ流れる。

耳に届く大轟音はどこか遠くに聞こえると思えば突然全身が濡れ、地面に落とされる。

ここは洞窟の外...平原。


「ごめん、限界」


その言葉を残し、侍れっぷーは雨で濡れる地面に倒れた。

何が何なのか全く解らないが、助かった事には違いない。


ウンディー大陸に降る雨が少し冷たくて気持よく感じる。





「何とか生きてたな!」


「本当死ぬかと思ったな!膝は死んだけど!」


「ゆうせーも死んでるけどな!ガハハハハハ」



あの後、わたしは近くを走っていた馬車を捕まえて3人を乗せアルミナルを目指した。今はその馬車の中だが...この2人、アスランとれっぷーは数分前の地竜戦をもう笑い話にしようとしている。ゆうせーさんはまだ気絶状態。相当いい所にタワーシールドがヒットしたのだろう...しかし残念だ。そのタワーシールドは何処かへ消えてしまったぞゆうせーさん。



「しかし、何度見ても卑怯なディアやな れぷさんの痛風技」


アスランの言葉に反応せざるを得ない。


「ディア?れぷさんの?どんなの??」


「自分のスピードを極端に上げるディア、それで3人をつかんで一気に洞窟を抜けた。盾とハルバードを拾う余裕はなかったねー残念」



あの凄い速度の正体と引っ張られる感覚の正体はれっぷーだったのか。

自分の速度を極端に上げるディア...アレはもう眼で捕らえられる速度ではない気が...凄いな。

しかしディアには必ずリスクがつくハズ。れっぷーは大丈夫なのか?


「今は大丈夫だよ、ただ明日から全身筋肉痛地獄...入院生活が始まる」


「痛風で介護が必要なおっさんやからな!れぷさんは」


「アスランも腰が弱いおっさんだから仲良く入院だな」


「なに!?俺様も尿瓶デビューか!?」



なるほど。れっぷーのディアリスクは筋肉痛か。確かにアレだけの速度で走ったんだ。足だけではなく全身筋肉痛になるのは理解できる。

で、アスランの腰は地竜にやられたのか。


酷い顔でもがき苦しんで、無理に立ち上がったせいで腰ポキしたのによく笑っていられるな...。


もっと落ち着いてれっぷーのディアを見たかったがあの場面でそんな余裕は無かった。またいつかチャンスがあるハズだ。

今のうちにフレンド登録を。


「ね、れぷさんフレンド登録しよう」


そう言ってフォンを取り出すとアスランがある事を思い出す。


「そうや!貴様しっかり部位破壊した素材拾ったか!?」


くそ!バレた!このまま進めば全てわたしのモノになると思っていたのに、フレンド登録なんてしなきゃよかった。


「拾ったよ、でもいらないっしょ?」


そう言うとれっぷーはあっさり、いらない。と言った。ゆうせーさんは...いらないらしい。問題はコイツだ。


「そのアイテムはよ吐き出せ!俺様と貴様で分けるぞ!」


興奮し立ち上がろうとするアスランだが、腰の痛みでまたフリーズ。そして素晴らしいタイミングで馬車が石の上を通過し揺れる。

声にならない悲鳴をあげ跳ね倒れるアスラン。

わたしはアスランの腰を軽く足で突つき質問をした。


「ね、アスランも素材いらないしょ?」


何度も突つき、その度にもがくアスラン。

アスランが 素材いらない と言うまでこの地獄は続いた。






そんなこんなで無事地竜戦を終えアルミナルへ帰還。

夜になっても雨は止まず街灯に光が灯り昼間とは違う表情のアルミナルが眼の前に広がる。今度は天気のいい日に見たいものだ。


アスラン達と解散し、わたしはワタポが居るビビ様の店へ急いだ。

昼少し過ぎにアスラン達と地竜討伐へ向かい帰ってきたのが夜....6時間も経過していたとは思わなかった。


地竜討伐は大失敗に終わったが部位破壊で入手した素材は全てわたしのモノになったのでよしとしよう。



空腹に泣くお腹を優しく撫でて雨のアルミナルを今度はゆっくり歩いて進んだ。


初のパーティ戦は不完全な結果に終わるが、相手はドラゴン。

全員生きて帰れた事が奇跡だろう...。






夜の雨は少し冷たく感じた。






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