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武具と魔法とモンスターと  作者: Pucci
【ドメイライト】
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102/759

◇101



剣と剣が衝突し、発生した風圧が騎士団本部の廊下を揺らしガラスを数枚破壊した。

破裂する様に砕けたガラスも気にせず片手剣よりも短く、短剣よりも長い双剣を器用に使い攻撃するも、全て盾に吸収される様に止められ一瞬の隙に剣が襲い来る。

地面を蹴り大袈裟なバックステップを入れ距離をとった音楽家ユカと、視線の先で盾を構え立つ鎧姿の騎士アストン。

音楽家ユカは騎士団本部の二階廊下で騎士団長直属の騎士アストンとエンカウントしていた。


アストンの装備は鎧に盾と剣、タンクスタイル。ユカの装備は黒スーツに双剣のスピードスタイル。ユカが扱う武器はスピードと手数重視の双剣だが、それだけではない。希少な音楽魔法サウンドマジックを自在に扱える音楽家で音属性の特質を持つ特質系の人間。


特質系...魔術等で属性を操るではなくユカ本人が音属性持ち。プンプンも同じく特質系で雷の属性を自在に操る。詠唱し属性を持つ魔術を使うではなく、剣術等の無色光が発生した瞬間に自分の魔力を少し混ぜる事で自分の持つ属性を追加できる。


剣術は魔力を必要としない。

空気中にあるマナと自分のマナを剣に纏わせ初動を起こせば無色光が発生し剣術を使える。その時、属性武器ならば勝手にその属性が追加され、属性マテリアを装着している場合はちょっとコツが必要だが属性を乗せる事ができる。

そして特質...元々自分が何らかの属性を持っている場合は魔力を混ぜる事でその属性が盛られる。


エミリオが使う魔剣術は魔術と剣術の複合、しかしマテリアや特質を使った剣術は属性が追加されるも魔術ではなく剣術。魔法の威力は乗らない。しかし属性は乗る為、弱点属性等には効果を抜群に発揮し、プンプンの雷はデバフ持ち。燃費はエミリオの魔剣術の方が悪いが魔女だからこそ出来るスキルで魔力量が多いからこそ使える戦術。

魔女でも魔力量が多いワケでもない種族はこの特質か属性武器、マテリアで属性を盛る方が圧倒的に効率がいい。


音属性...振動を防ぎきる騎士の盾をキュッと睨むユカ。

騎士は驚いた表情を一瞬浮かべクチを開いた。


「今の攻防でこの盾が怪しいと見抜くとは...鋭い冒険者もいるものだな」


盾は攻撃を防ぐ為のモノ。騎士の持つ盾のデザインは妙で、尖り...表面に妙なエッジがある。攻撃を切って左右に流す様なデザインの盾。

ユカはビビの鍛冶屋に頻繁に顔を出していた為、あの盾のエッジに違和感を感じずにはいられなかった。


「その盾、魔術とかを左右に流す形状...」


ユカの言った事は正解だ。しかしユカが知りたいと思っている事はそこではない。なぜ音属性が拡散するのか...これがわからない。

なぜ音属性も?と聞いてわざわざ答える者はいない。その場合自分が音属性を持っている事をただ教えてしまうだけ。会話も戦闘同様ワンミスも許されない。

ユカが戦っている相手はそれ程までに強者。


盾を構え突進するアストンの動きをユカは落ち着いて見抜き、壁を蹴り背後へ回る。本部の廊下は広い。しかし戦闘するには細く狭すぎる。

細く狭い廊下にアストンの速度。

ユカは表情を曇らせ回避する。重鎧装備で踏み込みから接近までの速度が早い。鎧も盾も軽々と扱うアストンはSTR型タンク。壁の様な盾をどうにかしなければ勝ち目はない。

戦闘経験値も戦闘スキルも高い。このレベルの騎士が後何人いるのか...どちらかと言えば相性が悪いタンカーとの戦闘にユカは焦り、ジリジリと余裕が削られてゆく。


アストンは盾を前に構え、距離を詰めてユカが回避し距離を取る。何度も繰り返される攻防の中アストンは盾での突進をフェイントにユカの反応を煽り回避行動に入った時、風属性下級魔術 ウインドカッターを詠唱し、放った。

使い慣れた魔術でランクも下級。詠唱は素早く終わり緑色の魔方陣が展開され風の刃を吐き出した。

回避行動中...空中にいる状態のユカはウインドカッターを回避する事は不可能。

魔術を防御するには防御魔術が必要で詠唱する時間はない。

ここでユカは双剣に無色光を纏わせ、剣術で魔術を破壊、または相殺させる事を選んだ。マジックブラストと呼ばれるスキルで剣術無しで魔術を武器で破壊する者をマジックブラスターまたはスペルブラスターと呼ばれる。


無色光を纏った双剣は素早く動き、風の刃を斬り裂き破壊した。


剣術。

武器を使った強力なワザ。

代償として使用者の武器は一瞬、または数秒重くなり手放す事も出来ず大きな動きを封じられる事をディレイと言う。

ディレイを先伸ばしにし、剣術を繋げて使うスキルも存在し、ディレイ中でも大きな動き...移動や回避が出来るスキルも存在するが剣術の時点で相当な集中力と体力が要求され、剣術を無理に繋げる事やディレイ対象の武器...腕から意識を切り離すタイミングが少しズレただけで全ての行動がファンブルし、ディレイも増加する。


苦手な戦闘スタイルのアストンにユカは余裕を削られ、若干の苛立ちを抱いていたからなのか、ディレイキャンセルに失敗し、上乗せされたディレイがユカにのしかかる。


騎士アストン接近中に盾を背に戻し、無色光を放つ直剣を両手で凪ぎ払う様に振るった。

剣圧が衝撃波の様な威力を持つ 単発重剣術 プレシューロ をユカは腕を全力で動かし双剣で防御するも、速度を乗せた重剣術を腕の力だけでは防ぎきれない。

剣を振った瞬間、接触したのかも解らないうちに、ガラスが砕け散りユカは窓から投げ捨てられる様に外へ。

単発重剣術を極めれば連撃重剣術よりも恐ろしい破壊力を持つ一撃を放てる。

アストンはターゲットを自分に向け続ける...ヘイトコントロールが何よりと重要になるタンカー。連撃を放つより一撃でヘイトを稼ぎ素早く次へ動ける様に単発剣術の道を選んでいた。


二階から弾き飛ばされる様に外へ落ちたユカは中庭で倒れ動かない。じっとりとした液体が地面を這う様に流れ綺麗な緑を赤く染める。



広場で冒険者と戦っている騎士達と団長直属の騎士達では子供と大人以上の差が存在していた。



「生きていたら再戦しにくるがいい」


アストンは二階から呟き、剣を鞘へ納め別の冒険者を探しに行こうとするも、足を止めた。


「...やっとディレイがとけた」


ユカは立ち上がり頭から流れ出る血液を手で拭き取り、払う。


「モンスター相手じゃなきゃ本気になれない感じだったんだけど、そゆ変なルールを自分で作ってたからあの時 脳のチューニングが合わなくて反応できずラミーが殺された...」


ユカの音属性やプンプンの雷属性は少しのミスで人間を殺してしまう。魔術ではない特質的なモノなので熱くなりすぎれば無意識的に強力な属性を使ってしまう場合もある。

その為ユカはモンスター以外に本気を出し戦った事はない。

しかしモンスターよりも危険で凶悪な人間や種族も存在するのが現実。


「自分の力をちゃーんと使える様にならなきゃまた眼の前で無くしちゃだろなぁ...騎士さん、ちょっと私に付き合ってよ。タンカーなら簡単に死なないでしょ?」



ネクタイをゆるめ中庭から二階を見上げ、ユカは笑いアクロバットスキルを全開に使い、石や像を辿り二階へ戻った。


アストンは鋭い視線を向け、剣と盾を構えるとユカは歌う様に詠唱する。音楽魔法を見た事ない者は歌にしか思えない詠唱。アストンは構えるもそれが詠唱だと気付いたのは音楽魔法が発動してからだった。傷の痛みを一時的に消す魔術とスピードと反応速度を一時的に高めるバフ魔術をユカは使った。


そして戦いは終わる。


ユカが双剣に無色光を纏わせるとアストンは盾に無色光を纏わせ剣を構える。タンカーは盾術で攻撃を防ぎ、カウンターで剣術を撃ち込む。細く狭い廊下で初めて2つの無色光がぶつかり合う。


ユカが放った剣術は 十二連撃音属性重剣術 ダウンビブラート。

一撃一撃が相手の体力をダウンさせる様に重く、音属性の振動が防御する武具や身体を振動させダメージを複雑に与えるユカが作り出した剣術。

六連撃が入った所で盾に細かい亀裂が入りアストンは剣術の構えをする。

剣術...剣が無色光を纏う瞬間、ユカは盾の内側へ潜り込む様に動き、高プロパティを持つであろう鎧へ五連撃を撃ち込む。音属性の振動と剣術の威力が盾よりも低い耐久度の鎧を砕く。剣術と防具破壊の衝撃がアストンの剣術をファンブルさせ、ユカは残る最後の一撃を鎧を失ったアストンの胸へ炸裂させる。


剣で斬り裂かれた傷を振動が広げ、内側から血液を押し出す。痛みと重みにアストンは膝から崩れ落ちユカの剣術が終了、素早く範囲系音楽魔法を詠唱しアストンにかかるデバフ振動を消す。


「~~~ッ...はぁ~、疲れた。私の勝ちね。生きていたら再戦しにくるがいい、騎士さんよ」


意識が遠くなるアストンへそう言い、ユカはフラフラ揺れながらその場を後にした。



「shit...クラクラするぜ」




ポーションを飲みつつ、騎士1人を倒した。とキューレへメッセージを送信し、魔女エミリオ探しを再開する。





ドメイライト騎士団本部 三階のレッドカーペットが敷かれた何もない広い部屋。


扉もなくこの部屋はハズレ。

小さく溜め息を吐き出す半妖精のひぃたろは戻ろうとした瞬間、カチンっと心地よい音が広い室内に響いた。


扉の鍵が閉じられる音。

足音、そして声。



「逃げられても面倒なのでここで侵入者を排除させてもらう」


「.....随分派手な騎士ね」



白金色の鎧に赤いマント、大剣も白金色で派手な装飾を持つ。


この部屋に誰か訪れるのを待っていたのか、たまたまひぃたろがこの部屋に入るのを見たのか...前者ならばアホだ。とひぃたろはクチにせず騎士を見る。




ドメイライト騎士団 団長直属の騎士ルキサ。


ギルド フェアリーパンプキンのマスター半妖精ハーフエルフのひぃたろ。





逃げ場も無い部屋で2人は視線をぶつけ合った。








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