表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南さんは南にしかいない  作者: 柊秋人
2/10

第二話

【登場キャラクター】


 ぼく  南さんに興味がある男子高校生。


 南さん 南にしか興味がない女子高校生。


 南さんというのはぼくのクラスメートの名前だ。

 丸眼鏡をかけていて、一見レトロな雰囲気を醸し出す彼女は、机に座ると一昔前の女学生にも見える。三つ編みだったらまさにといった感じだけど、残念なことに彼女はショートヘアだ。いやいや、本当に残念で良かった……。

 まあ、しいて他に紹介するとすれば、友達が少ないということぐらいだろうか。数少ないぼくとの共通点だから、ことさらシンパシーを覚えるのはここだけの秘密だ。

「南さん、おはよう」

 教室にやってきた南さんに、ぼくは爽やかに挨拶をしてみた。

「………………」

 けど南さんは気付かなかったのか、ぼくの目の前を通り過ぎて自分の席へと座り、そのまま机に突っ伏してしまった。うーん、聞こえなかったのだろうか。

「南さーん。おーはーよー」

 南さんの机の近くまで移動して、改めて呼びかけてみた。すると彼女は唸りながらも上体を起こしてぼくを一瞥すると、視線で射殺さんばかりの勢いで睨み付けながらこう言った。

「………あなた、誰?」

 昨日話しかけたというのに忘れてしまった様子だった。そもそもぼくはクラスメートなんだから、せめて見覚えくらいはあってもいいように思えるけど。でもそんなツレナイところも南さんのいいところだから、ぜひその個性を大事にしていってもらいたいとも思う。

「南さんはいつも同じ席に座ってるよね? それはどうして?」

 彼女がどう答えるかなんて、最初から分かっていたけれど、ここでは会話を始める取っ掛かりとして尋ねてみた。

「そんなのここが一番南に近いからに決まってるでしょ」

 窓際の先頭を固定席としている南さんが、その驚愕の事実を暴露する。なんと、席替えのたびに「視力が悪いので前の席で」という従来の説明は虚偽だったのだ。

「もういいでしょ。放っておいてくれる?」

 南さんはそう言うと再び机に突っ伏してしまった。

 どうやらぼくと彼女はまだ友達というやつではないらしい。友達というのは、話をしたら自然となるものだと思っていたけれど、ぼくはまだその域には達していないようだった。

「どうしたら友達になれるのかな?」

 友達になったら髪の匂いとか嗅がせてくれるのだろうか。よくわからないけど、友達になったときのために、色々とお願いごとを考えておこうとぼくは思った。


「南さんは南にしかいない」


 原作: 伊更木音哉/伊古元亜美


 執筆: 伊古元亜美




2015/01/09:誤字訂正



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ