表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

# 7

「や・・・・山本・・・・さん・・・・!」

「あ。橋本さん、ごめんねぇ」

「わ・・・私こそ、見ちゃって・・・・ごめんなさい・・・・」

「あー。あれ?別にいいのよ。あんな雑魚男」

奈津稀は自分の耳を疑った。

今、姫咲の口から「雑魚男」という言葉が聞こえたような気がした。

普段の姫咲は、いつもニコニコしていて、優しくて、とても女の子らしい言葉を使う、THE.女子だった。

しかし、今、目の前にいる姫咲は、ニコニコしているが、姫咲とは縁のないような言葉を使っていた。

「あの男も運良かったよね。女子に相手してもらえるなんて」

「山本さん・・・・?」

「あ。ごめんね。これが本当のあたしよ。みーんな騙されてるけど(笑)」

「ど・・・どうして私の前では?・・・」

「ムカつくからよ」

見ると、姫咲の顔には、いつものニコニコ笑顔はなく、

奈津稀を睨んでいた。

「え?・・・・」

「橋本さんがムカつくの。だって、昴大と幼馴染なんだもん。

それに・・・」

姫咲はポッケからケータイを出し、ある写真を奈津稀に見せた。

それは、昴大と帰ったあの日、昴大と手を繋いでいる写真だった。

「な・・・んで・・・・・」

「これ。幼馴染がやるような子じゃないよね?

昴大、あんたのこと、好きなの?

「そんなことない・・・です・・・・!

でも・・・なんで・・・・その写真が・・・・」

「ああ。昴大と帰ろうと思ったら昴大、あんたと帰ってるから

後を追いかけたの。そしたら、こんなの撮れちゃったぁー♪」

「け・・・消して・・・・ください・・・・」

「はあ?」

「消してください・・・・!」

「なんで?」

「昂ちゃんに・・・・迷惑かかる・・・から・・・・・」

「はあー。その『昂ちゃん』っていうのも

前から気に食わなかったんだよね」

「・・・・・・・・」

「とにかく、あたしはこれを消さない。あと、あたしがこんな性格だって

誰にも言わないでよ?じゃぁね♪橋本さん」

そう言うと姫咲はその場を去っていった。

いつの間にか夜になり、真っ暗になっていた。

おそらく今は夕食の真っ最中だろう。

「・・・戻りたくないなぁ・・・・」

そう呟いたその時、「委員長?」という声が聞こえてきた。

見ると、そこには聖仁が立っていた。

「有岡くん・・・・」

「なんでこんなとこ、いんの?夕飯は?」

「なんか、戻りたくなくて・・・・・。有岡くんは?・・・」

「んー?散歩(笑)」

そう言って聖仁はニッと笑った。

そして聖仁は、奈津稀の隣に腰をかけた。

「え・・・。も・・・戻ろう?」

「委員長は戻りたいの?」

「・・・・・・・・」

「戻りたくないなら無理に戻らなくて良くない?俺もここにいるし」

「有岡くん・・・・・・」

それから2人は、何も喋らずにずっと海を眺めていた。

「はっくしゅん」

「冷えてきたなー」

「だね・・・・。もう戻ろ?」

「そうだな。風邪ひいてもあれだし」

聖仁はそう言って、自分が着ていた上着を奈津稀にかけた。

「い・・・いいよ!有岡くんが風邪ひいちゃう・・・・」

「俺はこう見えて頑丈ですから(笑)」

「本当にいろいろありがとう・・・・・」

「お礼言い過ぎ(笑)」

「ご・・・ごめんなさいっ・・・・!」

「謝んなって。褒めてんの(笑)」

そう言いながらホテルに向かって歩いていると、「奈津!聖仁!」という声が前から聞こえた。昴大だった。

「昂ちゃん・・・・・」

「お前、何やってんだよ!こんな暗いのに・・・・」

「で・・・でも、有岡くんが・・・」

「馬鹿!聖仁がいなかったら一人だろうが!危ねぇだろ!」

「ご・・・ごめんなさい・・・・」

「昴大、もういいだ・・・・・・・・」

その時、聖仁の言葉を遮るように、昴大は奈津稀を抱きしめた。

「こ・・・うちゃ・・・・・ん・・・・・?」

「心配かけんな・・・・・・」

「・・・・・・・ごめんなさい・・・・」

「んじゃ、早く帰ろうぜ。夕飯、なくなるぞ」

「・・・うん!」

「ほら。聖仁も!」

「・・・・あ。おう!」

3人は海をあとにして、ホテルに戻った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ