深夜の散歩
屋根に転んだまま、ぼんやりと月に照らされるシェリカを見る。
風に揺れる木々がざわざわと鳴り、静かで心地良い時間が流れた。
「ねぇ、ロウ。一緒に満月草見に行こうよ。」
振り返ったシェリカと目が合いそうになると、慌てて目を逸らすロウ。
「ま、満月草?あの洞窟は・・・まぁ、いっか。シェリカのたってのお願いだしな。」
「ホント!?・・・ありがとう!ロウ、大好きっ!」
再び目を輝かせて喜ぶシェリカはさらりとあの言葉を言う。
「・・・大好き、ね。」
「ロウ?」
「んー?何でもないよ。行くか。」
ロウは立ち上がると、5メートル程ある屋根の上から身軽に飛び降りた。
続いてシェリカも飛び降りようとするが、立ち止まる。
上ってきた梯子は裏手にあり、洞窟へ続く道とは反対の方向だ。
「ほら、受け止めてやるから来なよ。」
両手を拡げて屋根の上に取り残されたシェリカを見上げるロウ。
5メートル。
意外に高さを感じるハズだ。
抱きかかえて一緒に降りてやれば良かったか等と考える間もなく、ふわりとシェリカが飛び降りた。
―――トスッ!
「100点満点!!」
高らかに両手を上げてポーズを決めるシェリカ。
よくよく見ると、股の間でスカートの裾がしっかりと結ばれ、かぼちゃパンツ状態になっている。
「・・・そうだよね。」
虚しく広げた両手を引っ込め、玄関口に立てかけてある棍棒とランプを持ってシェリカの元へ戻る。
皆寝静まり家々に明かりが灯っていない事を確認して、村の奥地へと進んだ。
でこぼこと足場の悪い道を暫く歩くと、石畳の階段が見えてきた。
風に揺れる木々の間から、時折飛び立つ野鳥に肝を冷やし、獄生の気配にも気を配りながら、不揃いな階段を一段ずつ登って行く。
この場所は幼い頃から近づいてはならない場所と教えられており、この島に住む者は誰もこの地へ足を踏み入れなかった。
しかし、ロウとシェリカがこの地へ来るのは2度目だった。
頂上まで来たと思うと、辺りは荒れ放題の草木で道を塞がれており、ロウは愛用の棍でその障害物を薙ぎ倒して進む。
「・・・はぁ。二年前とはまるで違う場所みたいだな。」