表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/26

第六話 魔王様の本気と古典的な不良

あ、えと……。み、みみみなさん、こんにちは。ぼぼ僕ことヴァンパイアのレイです。こ、今回は魔王様のたっての希望で、魔王様の本気が発揮されるらしいです。よ、良かったですね魔王様。それにしても僕の出番は少ないですね。作者は僕が嫌いなのでしょうか……。

 その後(第五話の後)僕は結局、放課後まで爆睡していた。つまり僕は、学校に居ながらにして全授業をサボるという離れ業をやってのけたわけだ。まぁ、あまり良いことではないけれど。

 そして今、僕は沙雪さんと幽霊屋敷への帰路を辿っている。

「いつも思ってるけど、朋って図太いよねぇ」

沙雪さんは腕を組んでしみじみと頷いている。僕は何のことか分からないから、問い返してみた。

「それってどういうことなの?」

「それが図太いっていうんだよ〜」

沙雪さんは笑いをかみ殺すように口元を抑える。

「朋が眠ってから四人の先生が君を起こそうとしたんだけど、どうなったと思う?」

「僕は一体何をしたの?」

本当に、全く覚えがない。

「朋はね、起こされそうになると急に起き上がって、『俺の眠りを妨げる奴は地上でも天国でも地獄でも追い回して、歯ぁペンチで全部引っこ抜いてその面の皮引き剥がすぞ!』って脅したんだよ。それも君が般若みたいな顔で言うもんだから、先生達はみんな裸足で逃げ出して……」

沙雪さんはもう堪えきれないといったふうに大口を開けて笑い始めた。……沙雪さんは仮にも女の子なのだからそういうのはやめた方がいいと思う。だってほら、幻滅するから。

「沙雪さん、僕は本当にそんなこと言ったの?」

「うん、本当。久しぶりに笑わせて貰いましたよ、くふふふ」

沙雪さんは向こうに行ったまま、なかなか帰ってこない。駄目だこりゃ。

 それにしても、教師に対してそんな暴言を吐いたのなら、明日からの学校が憂鬱だなぁ。僕は一応優等生で通しているから、先生達も衝撃的だったろうなぁ。

 まぁ、くよくよ考えても仕方が無いから、沙雪さんを引っ張りながら家路を急ぐことにした。どうして急いだのかって? 何となく嫌な予感がして……、



「おいおい兄ちゃん。可愛い娘連れてんじゃん」

「羨ましいねぇ」

「俺達にも分けてくれよ、その幸せ」



悪い予感というのは的中するものだ。僕達に声を掛けてきたのは、トサカのようにおっ立てたリーゼントが特徴の典型的な不良三人組だった。学ランを着ている癖に煙草なんぞをふかしている。

 全く、沙雪さんと歩いているといつもこうだ。彼女は鬼だということを差し引けば、極上に可愛いため、五月蝿い男共がやたらと寄ってくるのだ。因みに前回絡まれたのは二か月前。沙雪さんが旅に出る前の日だったのは、もう笑い事でしかない。

 なんかもう古いをぶっちぎりで通り過ぎて、古典的でさえある不良達は僕達にがに股の不良歩きで近付いてきた。それ、もう流行らないから。見てて哀れだから。

 僕はそんなことを考えながら、極力生ぬるい視線を不良達に浴びせてやった。

「何か、用ですか?」

僕はとりあえずは下手に出てみる。最終的には叩きのめすのだが、奴らの出方を伺うのも一興だね。

 不良達は僕を気の弱そうな一般学生だとでも思ったのだろう。三人の中で一番背の低い男が下品な笑みを浮かべる。

「いやね、あんまりにもあんたらが幸せそうに歩いてるもんだからよ。おすそ分けして欲しいなと思ったわけよ」

言葉は僕に向けてのものだったが、小さい不良の視線は沙雪さんを舐めるように眺めていた。

 沙雪さんはまだ笑いの波が引いていないのか、未だにお腹を抱えている。ついでに僕と沙雪さんの手はがっちり握られていた。

 背筋を冷たいものが走る。沙雪さんの美貌を貴様のような雑魚で屑がそんな風に見ると色々減るから見るな!

「言ってる意味が良く分かりません……。僕と彼女は用事があるので、これで……」

僕は沙雪さんの手を引いて不良達の横を通り過ぎようとして、

「まあまあ、ちょっと待ちなや」

長身の不良に肩をがっちり掴まれた。僕の女の子のように華奢な肩はみしみしと悲鳴を上げる。痛ぇよ、この馬鹿力が!

 そんなとき、沙雪さんの手がぴくりと動いた。ようやく笑いの国からご帰還したようです。

 沙雪さんはまず僕を見、次に不良達三人を順番に見て、またもや大爆笑。

「あははははっ! 朋、この人達天然記念物に指定できるよ! お腹が捻れる〜!!」

瞬間、気温が二、三度上がった。不良達の怒気で、だ。

「このアマぁ、気にしてることを!」

まだ話していなかった不良が沙雪さんにガンを飛ばす……、って分かりにくいな。発言した順番に不良A、B、Cとしよう。というか気にしてるなら服装を改めれば良い話だろうに……。

 沙雪さんは不良を睨み返しながら僕の耳元に口を寄せた。

「ねぇ、朋。この不良達、身の程を知らなさ過ぎよ。……殺して良いかな?」

ま、まずい! 沙雪さんの背中からオーラが立ち昇っている! 彼女は非常に喧嘩っ早いんだよ。このままじゃ本気で死人が出るだろう。この人は加減を知らないからなぁ。

 そろそろ本気だして、不良に本当の悪を叩き込みましょうかね。

「沙雪さん、不良の更正は僕の役目だよ」

「そうだったね。久々に朋の本気が見れるかな?」

沙雪さんは僕に前を譲り、身を引いた。


「何をこそこそやってるんだぁ!? 俺達を無視するな!!」

不良Aが痺れを切らして声を上げる。不良達はもうすっかり臨戦態勢だった。

 僕は大きく息を吸って細く吐き出し、集中を高める。構えることなく不良達と正対し、ただ純粋な感情のない笑みを作り上げた。

「君達じゃ役不足だけど、いいよ。やり合おうじゃないか」

「は?」

不良達は予想外の言葉に一瞬自分を見失い、茹で蛸のように顔を紅くしていく。

「てめぇ! その可愛いツラ、ぐちゃぐちゃにしてやる!」

そう言って動いたのは不良B。僕の懐に一足で飛び込んでくる。見た目に違わず、速い。不良Bはそのままアッパー気味の右を繰り出しす。これも速い。僕はすんでのところで拳をかわし、バックステップで距離を取った。

 不良Bの動きは僕の予測の少し上を行っていた。が、それも誤差範囲内。さしたる問題は無い。ほんの少し修正を加えればいいことだ。

 不良Bは自分の拳を見て、不思議そうな表情をしている。そんなBの肩を不良Aがバンと叩いた。

「何外してんだよ。格好悪いぜ」

「うるせえよ」

Bはそう返して、また僕に肉迫する。やはり速い。そして飛来するのは彼の左ストレート。それを頬に掠らせながら首の動きだけで避けた。

 次々に来襲する拳を悉く紙一重で避け、繰り出される蹴りは出る前に潰す。

 僕はまだ一度も手を出さない。不良Bの動きをつぶさに観察し、次の行動、体の運び、拳の軌跡を予測していく。その予測された動きは現実の動きの上に貼り付けられ、不良Bの0.5秒先の動きが全て見えていき、それは完全に同調した。

 そして放たれる大振り。それが僕の顔面を捉えるよりも早く、それに力がのるよりも早くかわした。驚愕に染まるBの顔。その顔を見ながら僕は虚空へと拳を放つ。Bは吸い込まれるように拳の先へと顎を晒し、一撃の下に昏倒した。

 集中力は最高に高まった。これで僕に怖いものは無くなる。相手が人間であるなら。

「さて、君達はどうするのかな?」

僕は呆然と突っ立っている残りの二人に声をかける。不良AとCは同時に動いた。

「まぐれで倒したからっていい気になるんじゃねぇ!」

二人は僕を挟むように左右から迫る。しかしそのスピードは、先ほどのBに遠く及ばない。僕は難なく顎に拳を合わせて、残りの二人も地面に這い蹲ることになった。


ぱちぱちぱち。


 小さいが、高く澄んだ拍手。それと共に沙雪さんは僕に微笑みかけた。

「相変わらず見事だねぇ。君の方が身体能力は完全に下だろうに」「技は力を制す、が僕のモットーだからね」

僕はそう答えながら、自分の鞄を漁る。確かいつも入れてた筈なんだけど……。

「お、あったあった」

散々に鞄をかき回して取り出したのは、バリカンと『悪よ、スマートに生きよ』とプリントされた冊子だった。ちなみにその本の作者は僕自身だ。沙雪さんはため息をつく。

「今日もやるの、それ?」

「うん、当然だよ。やっぱり、トサカは見るに耐えないからね」

僕はにんまりと笑ってバリカンのスイッチを入れる。甲高い振動音と共に刃先が怪しくぶれる。それを不良の頭に押し当てて、綺麗に刈って行ったのだった。


 しばらくして、僕の前からは不良が消えた。代わりに坊主頭が三人昏倒している。本当であれば、剃刀で剃り上げてスキンヘッドにした方がより悪っぽいのだが、僕も暇ではない。ていうか面倒なので放置することにした。最後の仕上げに、それぞれの懐に『悪よ、スマートに生きよ』を押し込む。

「これで彼らも悪に目覚めるだろうね、うん」

僕はうんうんと満足して頷いている。

 そんな僕の行動の一部始終を、沙雪さんは呆れ顔で静観していた。

「はぁ、それって完全に自己満足よね……」

「それがいけないのかな? 僕は悪や魔の者の品性を上げようと必死なんだよ」

「……そう」

それきり沙雪さんは押し黙ってしまった。完全に呆れられてしまったようだ。

 それでも僕の悪の美学を崇拝する心は少しも怯まない。いつか僕が世界の支配者になったときにこそ、真の力を発揮するのだから。

 まぁ、そんな先のことはいいや。今日は早く家に帰って、沙雪さんの仕事の報告を聞くことにしよう。

「さぁ帰ろうか、沙雪さん」

「そうしよう。あたし、なんか疲れたよ……」

沙雪さんは肩をおとしてとぼとぼと歩き出した。僕も沙雪さんの隣を歩き、


「止まれ! 滝川朋!!」


今日二度目の僕のフルネームに、僕と沙雪さんは思わず足を止めたのだった。

みんなー、元気ー?みんなのアイドル、奥寺美里でーす!たった一回しか出てないけど、これでもわたしメインキャラだからみんな忘れないでね〜。ていうか作者はわたしを出す気が無いみたい……。美しいって罪ね……。……そんなことは置いておきましょう。じゃあ、次回予告でーす。次回の語り手は、なんと里香ちゃん!朋くんの本気を里香ちゃんがお送りしますよ〜。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ