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第二十五話 連載再開したしテコ入れしてみるか!

「失礼します魔王様」


 僕がベッドに寝そべって『我が闘争』(原文)を読んでいると、いつものようにノックの音が二回して部屋のドアを開いた。ちらりと目そちらに目をやる。………珍しい。人間形態のアルだ。


「どうしたんだい? 見ての通り、僕は読書で忙しいんだ。重要度の低い案件なら後にしてくれないかな?」

「いえ、それが重要な案件でございます。それと魔王様。伍長殿の著書はあまりお読みにならない方が宜しいかと」

「? どうして」

「彼の伍長殿のせいでヨーロッパ中の人外の者の多くが弾圧を受け、殺されました。今でも憎んでいるものは多く、反感を買いますよ」

「そうなのかい? それなら隠れて読むことにするよ」


僕は区切りのいいところで切り上げ、栞を挟む。本は適当にベッドの下に仕舞った。

 僕はゆっくり起き上がり、仕事机に着く。


「それで、重要な案件って言うのは?」

「はい。かねてより魔王様が要請していた援軍が到着致しました」

「本当か!?」


あれだけ僕の要請を拒否していたアルが既に手を回していたとは意外だった。というかどうして援軍を呼んだのだろう?


「あれだけ反対していたのに、意外だね。どういう風の吹き回しなの?」


アルは軽く顎を撫でて目を細めた。


「いえ。連載も長らく中断していたことですし、ここは新キャラを追加してテコ入れしようと思ったまでです」

「…………は? 連載? テコ入れ?」

「魔王様は知らなくて良いことです」

「そうか?」


アルは時々意味不明なことを言う。いつも僕には関わりの無いことだとはぐらかしてばかりだ。が、別にそれが不便という訳ではないから気にしないことにしている。

 それより援軍だ。どれだけの兵力が得られたのか、どんな猛者たちがいるのか気になって仕方が無い。


「アル、援軍の規模は? 構成する種族はどうなんだい?」

「増援の規模は1。構成する種族は………説明が少々面倒なのでここに連れて参ります」


アルはそれだけいって部屋を後にした。………増援1? えーと、一個中隊ってことかな?

 それに連れて来るって………隊長をって意味だよね?

 何やら望まない未来が現実感を持ってこっちにダッシュで向かってきているように感じるのは気のせいだろうか?

 僕は嫌な予感を払拭するために、仕事机の冷蔵機能を搭載した引き出しに秘蔵しているチョコレート(ゴディバ)の袋を開けた。冷蔵機能が不調なのかぐにゃぐにゃに変形している。


「不吉だ………」


嫌な予感は更に増大した。




 僕が仕方無く変形したゴディバを食べていると、ノックの音が部屋に響いた。


「失礼します」


いつものように僕の返事を待たずにアルが部屋に入ってきた。やはり人間形態である。その傍らには小柄な少年−−背格好から12歳前後だと想像できる−−が両目を閉じたままの無表情で立っていた。他に人影は見えない。


「アル、もしかしてその子が………」

「はい。彼、三乃木疾風さんのぎはやてさんが今回の援軍です」


悪い予感は得てして的中するものだ。

 僕は肩を落とした。


「援軍って………、やっぱり一人?」

「ええ、当然です。たかだか夜討ちに正規軍は必要ありませんし、そもそも彼の能力なら一人で必要十分です」

「ふーん………」


正直、頼りなかった。身長は低ければ体格も十人並。そこらにいる少年と変わらないように見えるからだ。僕が露骨にじろじろ疾風を観察していると、疾風はうっとおしそうに顔をしかめた。


「………値踏みされるのは………嫌い………」


蚊が鳴くような小さな声。それが疾風の声だと気づくのに数瞬を要し、気付いて戦慄を覚えた。

 疾風は僕に会ってから一度も目を開いていないのに僕の行動を咎めたのだ。疾風は見えている。目では見えない何かが。


「不快な思いをさせたのなら謝るよ。でも、作戦を立案して指揮をする者としては君の能力を把握しなきゃならないんだ」

「………それなら………体験するのが………一番………」

「!? 止めなさい疾風っ!」


アルが制止するよりも早く、疾風の額に第三の目が出現した。それと目があった途端に、僕の体は自由を失い、意識は強制的に無限の暗闇に落とされていった。


「自分の能力………これ………」


いや、意識はあるらしい。証拠に疾風の声が聞こえる。能力なのか分からなかったので問おうとするが、声が出ない。いや、それどころか口が動いている感触が無い。


「魔王様、疾風の能力は相手の五感の乗っ取りです」

「魔王様の………触覚と味覚、視覚、嗅覚を………もらった………」


それって全部じゃんか。幼い容姿の割にエグいことするなぁ。

 それよりこの状態、非常に気持ち悪い。死ねない体になって宇宙空間に放り出されたらこんな気分がするのだろうか?


「ほら、疾風。魔王様の感覚をお返ししてください」

「………わかった………」


そんな会話が聞こえた次の瞬間、急に重力が僕を襲った。さっきまで何も感じていなかった脳では対応は不可能で、僕は尻餅をついてしまう。


「いや、うん。凄い能力だね。空気の匂いとか重力が気持ち悪いって感じられるなんて貴重な体験だったよ」


ありがとう、と僕が皮肉半分で言うと疾風は律儀にどういたしましてと返してきた。肩の力が抜ける。


「疾風、君は自分の部屋に戻ってゆっくりして。君の家は今日からココだから」


僕がそう言うと、疾風は全く感情の読めない表情で一礼し、部屋を後にした。


「如何です? 満足いただけましたでしょうか」

「満足だよ。直ぐにでも兄さん達とケリをつけられそうだ」


僕はくつくつと笑う。愉快で仕方が無い。まだ気持ちは悪いが。


「ではいつ頃に作戦開始と致しますか?」

「そうだねぇ、うん。二週間後の土曜日までに全員の準備を完了させておいて。方々への根回しも」

「はい。承りました。それでは失礼します」


アルは一礼して部屋を後にした。疾風と違って悪い笑みを浮かべて。

 僕は机に仕舞っておいた我が闘争とおやつを取り出す。さて、アルも居なくなったことだし、伍長殿の主張でも考察しよう。

公約を早速破って13日目の更新です。僕の努力目標を鵜呑みにしたみなさん。本当に申し訳ない。


そして謝っておきます。新連載を始めるので更新が更に遅くなr

最悪2週間に一回は更新したいので、見捨てないでくださるとうれしいです。

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