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第二十話 魔王様と家庭の事情

今回、いつもより短いです。そしてシリアスです。

「で、姉さん。どうしてここが?」

泣いてる沙雪さんを部屋に下がらせ、僕は唐突に切り出した。まぁ、聞くまでもなく大体の想像はついているけど。

 姉さんはアルに入れ直させた紅茶を一口含む。

「お父さんに内緒で、うちの情報班動かしちゃった」

「やっぱり……」

はぁ、と僕はこれ見よがしに深い溜め息をついた。

「それじゃ父さんにこの場所はバレてないんだね?」

「そうね。そもそも父さんはもう貴方を探す気なんて無いみたい」

「へぇ……」

僕は気のない返事を姉さんに返した。

 それにしても、あの男が諦めるなんて意外だ。蛇みたいに狡猾でしつこい質だと思ってたんだけど。少し再評価する必要が有りそう。ほんの、ほんの少しね。

 姉さんはティーカップを置いて、真剣な表情で僕を見つめる。少し怖いよ姉さん。

「ねぇ、家に帰って来る気は無い? あの子もあなたの帰りを待ってる」

姉さんの口から出た言葉は、中学入学と同時に家を出てから、何度となく問われた言葉。姉さんの悲しげな表情を見ていると、妹が声を押し殺して泣いているのを想像すると思わず頷いてしまいそうになる。

 それでも僕は、鋼の意志でその思考を心の隅に押し込めた。

「ごめん、姉さん。僕は家には帰れない」

姉さんは僕の目をじっと見つめ、小さくため息をついた。

「………そう言うと思ってたわ」

「姉さん……」

予想通りと言った姉さんの表情はとても寂しそうで、僕も思わず俯いた。

 僕の顔を覗いた姉さんは苦笑いを浮かべた。

「そんな顔しないで。あなたの選択は正しい」

姉さんは続ける。苦しそうな表情で。

「でも、でもね。正しい選択がいつも最良とは………限らないから」

「分かってる、分かってるよ姉さん。だからーー」

僕はその次に続く言葉を繋げられなかった。それを言ってしまったら、姉さんとはこれっきり会えなくなってしまいそうだったから。今まで築いてきた全てが、水泡に帰してしまうから。

 僕らの上に重くのしかかる空気。僕はそれをはねのけるように、さっと立ち上がった。

「そういえば姉さん、今日はどうするの? 泊まっていくんなら部屋を用意するけど」

「いえ、もう帰るわ。名残惜しいけど、これ以上ここにいると帰れなくなっちゃうから」

姉さんは微笑んでやんわりと拒絶し、立ち上がった。

「そっ、か。それじゃあ玄関まで送るよ」

「そうね。お願い」

僕と姉さんは連れ立ってリビングを出て玄関へと向かった。




 玄関先にはいつの間にか黒塗りのBMWが止められていた。姉さんと僕が屋敷から出ると、運転席から背広姿の初老の男性が恭しく礼をして後部座席のドアを開いた。

 姉さんは車に乗り込もうとして、思い出したように声を上げた。

「そういえば忘れてたわ」

「どうしたの?」

僕が問い返すと、姉さんは苦虫でも噛み潰したかのような渋い表情で答えた。

「あのね。父さんは諦めたんだけどね、馬鹿兄弟共がまだあなたのことを気にしてるの」

「………それで?」

「あなたのことをよっぽど消したがってるから、くれぐれも気をつけて」

姉さんの表情は真剣そのものだ。僕は小さく、ニヒルに笑む。

「姉さん。僕があんなボンクラ共に遅れを取るとでも?」

「ふふ、確かにね」

姉さんは純粋な笑みで返してきた。………眩しい笑顔だ。

「じゃ、健康に気を付けるのよ。………若松、出して」

「はい、お嬢様」

姉さんは今度こそ後部座席に乗り込む。若松と呼ばれた初老の男性男性は姉さんが席に着くのを確認してドアを閉めた。そして若松さんは口を開いた。

「坊ちゃま。貴方はいかがなさるおつもりですか?」

「………何が言いたいの?」

「いえ、貴方が滝川家にいらっしゃることで滝川は混迷を極めております」

その言葉は、胸に、グサリと、突き刺さった。

 若松さんはそれに気が付かないのかそれとも無視しているのか、そのまま続ける。

「坊ちゃま、朋様は元々滝川をお継ぎになるためにいらっしゃった筈です。それなのに家を継がれることなく遊んでいらしている。これがどれだけお嬢様にご負担をかけているかお分かりですか?」

「………」

「家をお継ぎになるにせよ、ならないにせよはっきりとして頂きたい。………縁を切る、というのも一つの手ですぞ」

僕は押し黙ったまま、何も言うことが出来ない。考えてないわけでは無かった。だが、それはーー。

 若松さんは、

「それでは失礼します」

そう恭しく頭を垂れて車に乗り込んだ。

 僕が呆然と立ち尽くしている間に、黒のBMWはするすると遠ざかっていったのだった。






 世界征服の活動を始める前に、僕にはやるべきことがあるようだーー。

………1ヶ月以上の間を開けての投稿です。その上短いし……。本当にすみません。


今回、色々伏線張りまくりましたが回収するかどうかは未定。そして世界征服はどんどん遠ざかっております。魔王様は何がしたいのでしょう。猫小判にもちょっと予想がつきません(オイ)



次回は恐らくはコメディーになると思います。


「コメディーはいらねぇからシリアスとかバトルとかやりやがれ!」


という方は感想かメッセージの方に激を送ってください。一つでもそういう意見があったらそっちにシフトしますので。

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