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第十九話 滝川朋のお姉ちゃん

最近更新が遅い&不定期ですね。言い訳するとスランプなんです。言い訳しないとすみません、と平に謝るしかありません。


………猫小判の戯れ言は軽くスルーして本編をどうぞ。

「……ただいま」

「たっだいま〜!」

僕と沙雪さんはいつも通りに、いや、僕はいつもよりだるそうに、沙雪さんはいつもより爽やかに帰宅を知らせる挨拶をした。

 沙雪さんはこの前の乱闘が余程良いストレス発散になったらしい。ここ一週間程、ずっとこの調子だ。

 ストレスと抑圧で暴走寸前の頃よりは断然よくなったけど、やっぱり僕が疲れるのは変わらない。……どっか遠くへ逃げてやろうかな……。


 下らないことを考えながら玄関を見回すと、見たこともないカラフルな女物の靴が端の方にちょこんと寄せられているのが目に入った。

「あれ? 沙雪さん、友達呼んだ?」

「ううん。あんな趣味悪い靴履く友達なんていないよ」

沙雪さんも靴に、いや靴の持ち主に興味があるのだろう、じっと靴を見つめている。

 しばらく靴を見つめる沙雪さんを見るでもなく眺めていると、彼女は何を思ったのか急に僕の方に顔を向けた。その表情からは微かな怒りを読み取れた。

「朋、もしかして貴方の知り合いかな?」

「……そうかもね。でもそうじゃないかもしれない。いや、そうじゃないと信じたい」

「?」

沙雪さんは僕の的を得ない発言に首を傾げる。僕は僕で腕を組んで自分の思考に沈み込んだ。

 その靴の持ち主が本当に僕が思い描いた彼女ならば。僕がこの屋敷を出ざるを得ない状況に追い詰めることが出来る人物がこの屋敷に確実にいることになるーー。


「なんてね。彼女はそんな人間じゃない」

僕は自嘲気味に笑って溜め息をついた。

 この靴の持ち主は僕の味方だ。敵の身内ではあるけれど、確実に僕の味方。彼女は僕の戦いをぶち壊すことが可能な、僕にとって天敵の位置にいる人間だけれど、信頼出来る味方だ。

「さ、いつまでもぼさっと突っ立ってないで上がろうよ沙雪さん」

「あ、うん」

僕は靴を脱ぎ、カラフルな靴の横に並べる。呆けていた沙雪さんは慌てて靴を脱ぎ捨て、それを揃えること無く僕の隣に並んだ。

 僕は苦笑いを噛み殺して、沙雪さんと連れ立って居間へと足を向けた。


 ーーとりあえずはどうしてここが知れたのか問いたださなきゃーー



 そして居間。そこでは僕の予想通りの人物が、ソファーに深く腰を下ろしケーキを頬張りながら紅茶を飲んでいた。傍らに立つアルの口元は若干ひきつっていた。一体、何個目のケーキなんだろうか?

 僕は深々と溜め息をついて、その女性ーー我が姉ーーに仕方なしに声をかけた。

「やぁ。久しぶり、姉さん」

ケーキを夢中で頬張っていた姉さんは、僕の声を聞いた途端にガバッと顔を上げた。そして僕を視界におさめるとニコリと、何かを取り繕うように完璧な微笑を浮かべた。

「ええ、久しぶりね」

本人は取り繕ってるつもりだろうけど、全く取り繕えてない。だってほっぺに生クリームがついたままだし。


 彼女は竜造りゅうぞう 有里香ゆりか。名字が違うけど、とにかく僕の姉だ。

 黒髪は腰まで無造作に伸び前髪も目が隠れるくらいの長さ。その向こうに揺れる漆黒の瞳は並々ならぬ意志を感じさせる。服装は黒いスーツで固めていた。

 正にクールビューティーという名に相応しい容姿なのだが、その本質はお茶目さん一直線だ。……………まぁ、追々分かってくるので割愛の方向で。


 僕は自分の頬を指差して呆れて言った。

「姉さん、ほっぺた。生クリームついてるよ……」

「えっ、うそ!?」

姉さんは右頬を、生クリームが付いている反対の頬を弄った。

「姉さん、逆だよ逆」

「あははは……」

姉さんは顔を真っ赤にして頬の生クリームをすくってペロリと舐めた。………それが親父の怒りを買っているのだと分かんないのだろうか?

「ねぇねぇ」

沙雪さんが僕の背中をちょいちょいとつついた。僕は振り返る。

「どうしたの?」

「そのひと、朋のお姉さん?」

「あぁ、うん。紹介してなかったね」

すっかり忘れてたよ。

 僕は姉さんを二人に紹介した。

「彼女は僕の五つ上の姉さん」

ついでにと、今度は沙雪さんとアルを姉さんに紹介する。

「黒いスーツの彼がアル、僕の隣に立ってるのが沙雪さん。二人ともこのお屋敷で部屋を借りてる友達だよ」

僕が紹介し終わると、姉さんが丁寧に頭を下げる。それに少し遅れてアルも丁寧に頭を下げ、つられて沙雪さんも雑に頭を下げた。

「有里香です。弟がお世話になってます」

「そ、そんなことないです。あたしの方こそお世話になりっぱなしで……」

「アルフレッドです。いつも朋君の世話をしています」

アル、君に社交辞令とか一般常識とかは無いのか? 普通、こちらこそお世話になってます、とか言うもんだろ。姉さんは姉さんで気にしてないみたいだし。沙雪さんを見習………って何か知らないけど萎縮してるだけみたいだね、沙雪さん。

 萎縮している沙雪さんをじっと見て、姉さんはいやらしい笑みを口元に浮かべた。

「へぇ〜、朋の隣にいる可愛い女の子、彼女さん? 一年も経たない内にもう彼女がいるなんて、朋も隅に置けないわね〜」

「ぇえっ?!」

沙雪さんは素っ頓狂な叫び声を上げた。顔は真っ赤。それを見た姉さんは更に笑みを深くする。

 僕は今日何度目かの深い溜め息をついた。

「違うよ姉さん。沙雪さんは彼女なんていう大層なものじゃない。ていうかね、僕の近くにいる女の子は僕の彼女だって決めつけるのは止めてくれないかな」

「えぇっ!?」

今度は沙雪さんの悲しみの叫び声が上がった。

「絶対零度の完璧あっさり瞬間否定!? あぁ! この子はなんて冷めたつまらない子供に育ってしまったのでしょう。お姉ちゃんは悲しいわ……」

姉さんはおおげさに、口元を抑えよよよと泣き真似をした。黒スーツのクールビューティーな外見でそれはあんまりにアンバランスだ。

「そんな真面目に否定しなくても……」

沙雪さんは嘘とか冗談ではなく、本気で泣き崩れた。

 アルは僕を冷たい目が、姉さんは何だか良くわからないにやけた視線が僕に刺さっていた。


「あのねぇ……、嘘ついて勘違いさせて希望を持たせるよりは、現実を突きつけてあきらめさせた方が良くはないか?」


なんて僕には言えるはずもなく、僕には二人の視線と沙雪さんのすすり泣く声を苦笑いで受け流すことしかできなかった……。

次回は朋くんの家族事情が垣間見ることが出来るかもしれません。かもしれません、というのはプロット無しで日々の勢いに任せてこの作品を書いているに他ならないからです。無謀ですね。

ちなみに次回の更新日はいつものように未定。感想頂けると早くお目にかけれるかも……?

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