第十五話 帰って来た狼男な屋敷の最後の住人
これで最初の構想にあったキャラクターを全て出すことが出来ました。ようやくいつでも征服編をスタート出来る……!
帰って来た。長く苦しかった修行生活を終え、俺はようやく幽霊屋敷へと帰って来た……!
おっと。あまりの嬉しさに自己紹介を忘れていたな。俺の名はジェイク、ジェイク・ロスフォールだ。俺はワーウルフ、日本語では確か狼男だったか。満月を見ると狼に似た怪物に変身するあれだ。
容姿は……、人混みの中でも頭一つ出る長身で、髪は銀の短髪をオールバック風味にワイルドに固めてる。目はブラウンで切れ長、満月のときは金色になる。顔は……そうだな、彫りの深い北欧系の色男って感じだな。
まぁ、俺の自己紹介はどうでもいい。名前さえ覚えてくれればな。とりあえずは俺の帰還を仲間達に伝えなければなるまい。
俺は屋敷の門に据え付けられたチャイムのボタンを押した。
カーン
西洋風の鐘の鳴る音。なんて懐かしい音だろう。確か、そう。半年くらい前に聞いたきりだな。
十五秒程して、屋敷の中から黒ずくめの線の細い男が姿を現した。
俺は右手を上げて気さくに声をかけた。
「よぉ、久しぶりだな」
アルは小首をかしげて、
「はぁ? どちら様でしょうか?」
あろうことかそんなことをのたまりやがった。
あ、冗談ね。
俺は失笑を浮かべた。
「アル、お前に冗談は似合わねぇぞ?」
「は? 冗談も何もなく初対面だと思うのですが……。というか私の名をどこで知ったのですか?」
アルは本当に何も分からないというような表情だ。オイオイ、冗談だろ?
「あのなぁアル。そういう意地っ張りはカッコ悪いぜ?」
「あの……、貴方は本当に誰です?」
アルは段々ウザく感じてきたのか眉間に皺が寄ってきている。ちょっと待てよっ!! 半年で人のこと忘れるなんて有り得ないだろ!?
「俺だよ、俺! 半年前に修行に出たジェイク! ジェイク・ロスフォールだッ!! ほら、ワーウルフの!!」
アルはもう、うんざりといった風にしっしっ、と犬にするように手を振り、
「妄想はほどほどにしたほうがいいですよ? では、貴方のような妄想たくましい方に付き合っている暇は私にはありませんので」
屋敷の方へ引っ込んでいく。
「お、おい! アル! てめぇ、ふざけてんじゃねぇ!! おい!!」
アルは俺の叫びなんて完全無視で屋敷の中に入って行った。
「マジかよ!? ありえねぇだろ!!」
俺は屋敷に向かって悪態をつく。
あの野郎、絶対に確信犯だ……。俺を蚊帳の外に置いて何企んでんだ?
俺は腕を組んでしばらく考えたが、頭の回らない俺に何かに気付く筈もなく、直ぐに諦めた。
「まぁ、俺にゃぁ関係ない話だわな」
俺は屋敷の門の前にどっかりと腰を下ろした。沙雪の奴はどうか分からねぇが、朋殿ならアルの野郎の不正を暴いてくれるだろう。なら、とりあえずは安心だな。ま、それまで寝て待ってるか……。
俺は門に背を預け、ゆっくりと瞼を下ろす。すると、今まで感じなかった疲れが津波のように押し寄せ、俺の意識は夢へと旅立った。
僕は屋敷の前で硬直していた。それというのも、屋敷の門にあの男がもたれかかって眠っていたからだ。
そいつは、僕がこの屋敷に来たときに僕を全殺しにする寸前までいった狼男。名はジェイク・ロスフォール。バーサーカーの称号が似合いまくりの無骨な大男だ。
あの時、偶然にも死なずに(無傷で)僕が勝利して、半ば追い出すようにして修行に出したジェイクがもう戻って来ようとは……。
僕は戦慄を感じて背筋を震わせた。
「沙雪さん……。今まで短い間だったけど、楽しかったよ……」
「どうしたの!? いきなりお別れ!?」
「僕はそこの馬鹿犬に殺されて天に召されるから……」
「あぁ、それね」
沙雪さんは合点がいったように手を打って頷く。僕はこの世の終わりのように天を仰いで涙を流した。冗談とかじゃなくて、本気で。
沙雪さんはそんな僕をケラケラと軽く笑い飛ばした。
「大丈夫よ。一回勝ってるんだから、また勝てるよ」
「……そうだったらいいのにね……。僕はそこの馬鹿犬の一発でも貰ったら、それだけでミンチみたいになるから……」
「? 全部避ければいい話でしょ。そういうの、得意だよね?」
簡単そうに言う沙雪さん。僕は深く、深くため息をついた。
「避けるのは簡単だけど、僕の場合は集中力が一瞬でも緩むと……」
「ふーん。まぁとにかく起こそうよ、それ」
沙雪さんはそう言って馬鹿犬、ジェイクを指差した。僕は一瞬迷うが、ゆっくりと頷いた。沙雪さんは僕に頷き返して、あろうことかジェイクの鳩尾に思い切り蹴りを入れやがった!!
「げふぅっ!?」
油断していた、もとい眠っていたジェイクは完璧な形で蹴りを貰い、大きくせき込んだ。
「てめぇ、何しやが……って沙雪じゃねぇか! 久しぶりだな!」
「……そうね。あたしは会いたく無かったけど」
「おいおい、寂しいこと言ってくれるな……」
ジェイクは鳩尾を蹴られたことなど忘れてうなだれた。
僕は、本当は嫌だけど、ぎこちなくジェイクに声をかけた。
「や、やぁ、ジェイク。修行は済んだの?」
「おぉ、朋殿! 言われたとおり月一でヒグマと格闘してきたぜ!!」
ジェイクはボディビルダーのようなポーズをとって筋肉を見せ付ける。……着てるのがスーツだから良く分かんないんだけど。
沙雪さんは僕に耳打ちをした。
「ヒグマと格闘させたのって本当?」
「うん。いくら力馬鹿犬でもヒグマと闘ったら死ぬかなって」
「……朋って、黒いね……」
「何を今更」
沙雪さんは疲れたようにため息をついて、ふらふらと屋敷の中へと入って行った。
はて? 何か沙雪さんを疲れさせるようなことを言っただろうか?
僕が本気でそんなことを考えていると、ジェイクが思い出したように僕に泣きついた。
「そうだ、朋殿ぉ〜。聞いてくれよぉ〜」
僕は鬱陶しくてジェイクを振り払ら………えなかった。つまりは自分の非力が全て悪い訳で。
「ジェイク、離れてくれないかな? ウザいから」
「うざっ!?」
ジェイクは相当ショックだったらしく、がくりとうなだれた。いちいちオーバーな奴だな……。
が、ジェイクは直ぐに立ち直った。
はやっ!!
「でな、帰って来たらよ。アルの奴が、かくかくしかじか……」
「ふんふん、そんなことが……………って、かくかくしかじかで分かるかッ!!」
「しょうがない人だな、朋殿は。仕方ない。ちゃんと教えるから一回で聞けよ?」
あれ? おかしいよね? かくかくしかじかで全部分かる人間なんて、そういないと思うんだけど。ていうかいないよね。
僕の心の抗議は完全無視で、ジェイクの回想は始まった。
ー五分後ー
「……ってわけなんだが、どうにかしてくれねぇか?」
「あー、そういうこと……ね」
まぁ、つまりは犬と猫は相容れないものっていうかなんていうか……。
僕は最高に難しい最適な答えをジェイクに授けることにした。
「簡単なことだよ。ジェイク、君がアルを仲間だと思っているから彼が嫌がるんだ」
「?」
ジェイクは何のことか全く分からないようで、頭の上に複数の?マークを浮かべている。
……どうやって浮かべているんだろ……?
それはさておき、僕は言葉を続ける。
「まぁ、つまりは猫であるアルの習性と狼の君の習性とは全く違うってこと。具体的に言うと、アルには群意識とか仲間意識とかが薄いんだ。だから君の馴れ馴れしくまとわり付きがちな性格は嫌がられる」
「はぁ〜ん?」
ジェイクの頭の上の?マークは益々増えていく。僕は苦笑して屋敷に足を向けた。
「まぁ、いつも通りにすればいいよ。そうすればアルも無視できないから」
「あ、それもそうだな」
僕とジェイクは並んで屋敷の敷地を歩いたのだった。何となく命を拾ったような清々し……、
「あぁ、朋殿。来週の日曜日に手合わせしような」
拾った命は偽物で、全てが崩れさったのでした……。
これで今年は終わりですね。『魔王の日々 〜現代版〜』を応援してくださった皆さん、ありがとうございました。




