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錯綜する想い Ⅱ

 あたしは制服の上から白いだぶだぶのカーディガンをはおった。

 カーディをはおったのは、防寒のためはもちろんだけど、どこの生徒か分からなくするためだ。

 うちの制服、なにげに目立つからね。他の三人も、あたしと同じようにセーターをはおったり、ジャージを重ねたりしている。


「さてと、どこからはじめますか?」


 あたしはデイバッグから冴子にもらった緑が丘の地図をごそごそ取り出すと、みんなの前に広げた。

 すると、さっきからスマホで何かを検索してた榊原くんが、


「僕たちのエリアには里香さんが失踪した稲荷神社があります。

 やはりそこから彼女の家までを重点的に調べてはいかがでしょうか?

 街というのは時間帯によってまったく様子が違うものですからね」と、提案してくれた。


「そうだね、朝と夜じゃ歩く人も全然違うだろうしね」


 あたしは榊原くんの意見をそう補足すると言った。


 さて、ここであたし以外のメンツを少し紹介しとくね。

 まず、さっきからスマホを後生大事に離さない榊原征(せい)()くんはアーミーオタク。特に戦闘機系のオタクらしい。

 成績は冴子に続いて学年二位。東大理Ⅲに進んだ後、防衛省に入るのが夢らしい。

 優奈こと、新宮(にいみや)優奈は名前が示す通り神社の家の娘だ。

 明るい茶色の髪をゆるいおさげにした顔はとっても可愛い。

 渋谷あたりにショッピングに行くとモデルにスカウトされるほどだ。

 成績はあたしと同じで中の上といったところ。

 友香とは大の仲良しで、よく友香の家へ家事のヘルプに行っている。 

 ジャンくんのことはよく知らない。

 イギリスから留学生だってことと、外面がいい割には人を寄せつけないふうな所があるってことくらいかな。


 あたしと優奈はちょっと難がある男子二名を連れて、いつものバスに乗った。

 稲荷神社に一番近い緑が丘一丁目で降りると、すぐに神社へ向かう。

 住宅街の一角にある稲荷社は小さいながらも森があって、隅々まで手入れが行き届いていた。


「ここは東松山市の()(きゅう)稲荷神社のお末社なんだ」と、神社の娘が言う。


「んじゃ、神主さんにお話を聞いたりできないの?」


 あたしは少しがっかりしたように訊ねた。


「うん、まぁ。でも、うちのお祖父ちゃんに聞いてみようか? 

 確かここの本社の神主さんと知り合いだったから」


 おお、ナイス!持つべきものはコネのある友人だよね。

 あたしが「お願いっ!」と拝み倒すと、素直な優奈はすぐにお祖父ちゃんに電話をかけてくれた。

 優奈のお祖父ちゃんから連絡を待つ間、あたしたちは稲荷社から友香宅までの道のりの探索をすることにした。

 まず、なんといっても目撃者探しだよね。


「この女の子を一昨日の夜、見かけませんでしたか?」


 見ばえのいいジャンくんと優奈を中心にどんどん通行人に声をかけさせる。

 もちろんジャンくんには女性を、優奈には男性を担当させたのは言うまでもない。


「こんな事件があったら外出は避けますよね」


 隣にいた榊原くんがどんよりしてきた空を見上げながら言った。

 あたしは「うん、それに雨が降ってきそう」と、テンション下がり気味に答えた。

 そんな時だった、優奈の携帯のバイブが振るえたのは。


「もしもし、おじいちゃん?」


「うん、うん。神社の掃除は近所の自治会の人たちが毎日交代でしてるのね。

 それで何か変わったことはあったって?」


「えっ、雨が降っていた? 鳥居の前だけ? ここ一週間、雨なんて降ってないよね?」


「うん、うん、そうなの。いろいろありがとう、お祖父ちゃん。

 大丈夫、友達と一緒だし。遅くならないうちに帰るから心配しないで」


 優奈は祖父との会話を終えると、あたしたちの方へ振り向いた。


「聞いてた?」


「うん、ここだけ雨が降ったんだって?」


「そうみたい、マジ不思議だよね」


 優奈はハムスターのように可愛く首をかしげた。


 “雨が降った”

 それはおぼろげな仮定が決定になった瞬間だった。


「ってか、今も雨が降って来そうだよね。

 それに、こう通行人がいなくちゃ聞き込みなんてムリだし。ちょっと島田くんに電話してみるよ」


 あたしは人が途絶えてしまった通りに、所在無げに立っている仲間に向かって言った。


「もしもし、島田くん。他のグループはどうかな? こっちは今んとこ情報なしだよ」


「うんうん。やっぱりどこも収穫なしか。冴子はなんて言ってる?」


「やっぱ、そうか。んじゃ、雨降りそうだし、一度集まる?」


「OK、んじゃ一時に中央図書館ね」


 けれど、優奈おススメのベーカリーレストランでお昼を食べ、中央図書館に着いた途端、ものすごい雷雨になってしまった。


(まるで、誰かに邪魔されてるみたい)


 そう考えた途端、耳をつんざくような雷があたりに轟いた。

 女の子たちの悲鳴があちこちであがる。

 ひどい雷と雨は夕方まで続き、あたしたちは図書館に閉じ込められ続けたのだった。 

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