繰り返されたゲーム Ⅰ
「「おはよう!」」
あたしと冴子がドアを開けると、いつも賑やかな教室はまるでお通夜のようだった。
「どうしたの?」
冴子は輪の中で一番暗い顔をした工藤友香に声をかけた。
けれど、友香は冴子の顔を見るなり、わっと泣き出してしまい、隣の優奈が代わりに答えてくれた。
「うん、それがね。友香んちの里香ちゃんが昨日から行方不明なのよ」
「友香の妹の?」
「うん。塾の帰りに友達と近所の稲荷神社まで帰ってきたらしいんだけどね、そこから行方不明なのよ」
「お稲荷さんからうちまで百メートルもないの。人通りだってあるし。
だから・・・・。でも、こんなことになるなら迎えにいけばよかった・・・・」
友香はそう言うと、手に顔を伏せて泣きじゃくった。
彼女の家は父子家庭。
一昨年、交通事故で母親を亡くしてから友香は母親代わりになって年の離れた妹の面倒を見ていた。
でも、聖藍学園は私立の進学校、他の高校と比べものにならないくらい勉強が厳しい。
友香は勉強と家事と妹の面倒と頭が下がるほど、毎日頑張っていた。
二か月前、あたしが両親を亡くした時も、何度もあたしのアパートを訪ねてノートのコピーを置いていってくれた。
「あんたは悪くない!
ここにいるみんなはあんたが頑張ってきたのを見てるんだからね」
あたしは喉を詰まらせながら言った。
「そうだよ!」
優奈も声を合わせた。回りにいた女子たちもうんうん頷いている。
「ありがとう、緋奈。みんなもありがとう」
あたしたち、2-AHRの女子有志一同は放課後、里香ちゃんの写真を手にほうぼうを探しまわった、里香ちゃんの手掛かりを求めて。
けれど、その結果は芳しくなかった。
いいや、芳しくなかったどころではない。山手市で行方不明になったのは里香ちゃんひとりじゃなかったのだ。
なんと十二人もの少女が一晩で姿を消していた。