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エレメンタル・バスターズ  作者: 春奈
第00章 時ノ秒針
4/11

第1日目 寸陰を惜しむことなり

どんなに些細な時間でも、お大事に。

――進んだ時間は"2度と"戻りはしないから。

ぞろぞろと下校時間か、列を成して歩く学生たち。

 春が終わりを告げようとしている梅雨の季節。

むしむしとした暑さと、湿ったかのようなジメついた匂い。

簡単に言えば日の元に出せずに、濡れている状態の洗濯物のような匂いだ。


 俺、佐熊さくまは両耳にイヤホンをつけて、音楽プレイヤーを右手で操作した。

音量は5。風が吹くと、テレビの砂嵐のような雑音が混じった。

 駅のホームに着き、少し距離のある階段を。

コツン…コツン…と登っていく。

 1回だけ小さく溜め息をつくと、丁度電車が来ると言うナレーションが流れた。

{~まもなく電車が参ります。黄色い線の内側でお待ち下さい~}

 眠そうな顔をしながら俺は電車に乗り、20分くらい電車に揺られた。

電車の中では立っている人は前を向いて、景色を眺めていることが多い。

逆に座っている人は携帯を見たり、自分の足元を見たりして、視線を下に向けている所をよく見る。

『何故だろう?』


 そんな些細ささいなことを、俺はボンヤリしながら考えてみた。

結局人は、人を自然と嫌っているんでは無いだろうか?

余計な所を見なければ、面倒事に巻き込まれない。

 けれど、そんな人達の中にも良い人はいるはず。

実際この電車に乗っている人達は、大体は良い人ではないだろうか?

――ただ面倒事に巻き込まれたく無いだけ。無責任なだけ。

 そんな事を考えていたら、電車が目的地に到着した。

俺は『何考えてるんだ、俺・・・』と思って、眠りそうになった目をこすって

電車を降りた。

 駅の改札を出て、駐輪場にある自分の自転車に乗って、第二目的地の『サタンスーパー』へと向かった。



――ウィーン

 と音を立てて自動ドアが開くと、涼しげな冷気が体を包んだ。

夏に友達の家に遊びに行ったり、スーパーまたはデパートに入る時に良くある事だ。

冷房の効いた室内。室内を出ると蒸し暑い外…。まるで天国と地獄ではないか・・・。

 サタンスーパーで俺は卵や、お弁当のおかずになるような冷凍食品を買い物籠へと入れた。

サタンスーパーは、1階建ての中規模なスーパーだ。

お弁当売り場、魚売り場、肉売り場に端っこのスペースに小規模な本屋さん。

 そして俺は、一通り買い物を終えると。なるべく空いているレジへと並んだ。

レジの傍には、ガムやグミ。飴の入った小袋。

俺は、何となく反射的に1番好きなレモン味のグミを1つポイッと籠に入れて、精算を済ませた。



 そして、買い物袋を右手で持ちながら外へ出ると…。

ぶわっと、生温い風が髪をなびかせた。

(まだ6月だって言うのに、何でこんなに暑いんだろうなぁ?)

 そんなことを俺は思いつつ買い物袋を自転車の前カゴに、ゆっくり置いた。

自転車に乗り、帰ろうと思った時。

「ピヨピヨ…ピヨピヨ…」

 と、ヒヨコの着信音と共に携帯が鳴った。

背中に背負っていた黒いリュックサックを背中から下ろして、膝の上に乗せたまま

リュックサックの横に付いているジッパーから携帯を取り出した。

(ん…?りんからのメールだ)


|From:凛

|Subject:お疲れ!

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

|もう家に着いたかな?

| 私は今ピアノの練習終わったよ♪

| 

| えっと、それでね。7月21日にある

|夏祭り何だけど…。一緒にどう?行かない?

|ダメならダメで大丈夫だからね(;・Δ・)

| 

| それじゃあ、妹の癒恵ゆえちゃんにヨロシクね♪

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

(お祭りかぁ。あの生真面目きまじめな凛が…、珍しいなぁ。)

 俺はそんなことを思いつつ、頭の上でピンポーンッ!と電球が点いた見たいに

「あっ!」と言って手を1回叩いた。

(これって、もしかしてチャンスじゃないか!?うんうん、きっと凛が俺に興味を持って!)

 俺は次第に顔をニヤつかせていった。

そして携帯メールの返信ボタンをピッ!と押した。


|To:凛

|Subject:Re:お疲れ!

|Text:

|凛もお疲れ!

| 家にはまだ帰ってないよ。

|ちょっと近くのスーパーで買い物して来た。

| 

| それと夏祭りの件。

|丁度暇だし、行けるよ。

| 

| 癒恵にもちゃんと伝えておく。

| それじゃ凛も早く帰りなよ。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

(送信っと!よし!帰るか。癒恵も帰ってる頃だろうし)

 パチンと携帯を閉じて、黒色のリュックサックに携帯を入れて、再び背負った。

未だに顔をニヤつかせながら、俺は家路についたのだった。

梅雨の夕焼け

――真っ赤に染まる景色。

少女の孤独。彼女はまだ一人ぼっち。

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