第1日目 平凡で平和で
別世界…、地球…、日本に住む1人の『クダラナイ』お話。
―――・・・。
「…ふーん。何か結構残酷な物語だね~?」
ふーんと興味無さそうに答える1人の女性。
薄茶のショートヘアで、大きい黒目が印象的な女性。
「なんだよ…、せっかくお前の好きそうなジャンルの小説探してやったのに」
不機嫌そうに俺は言った。右手に持っていた携帯をパチンッと閉じて
真横にいる女性を睨んだ。
俺は黒髪ショートで、男にも関わらず大きくて綺麗な黒目とよく言われる。名前は筒巳 佐熊と言う。
すると女性が、眉を潜めて言った。
「まぁー興味あるっちゃぁ、あるけど。そろそろ試験近いんだよ?小説所じゃないでしょ」
頭をグシャグシャと掻き毟りながら女性は言った。
この女の名前は、鈴崎 凛と言う、俺の幼馴染だ。
俺は目を逸らしながら言った。
「あー…はいはいそうですね、試験ですね~。(棒読み)」
若干棒読み気味で言った俺に対し、凛が「はぁー」と深い溜め息をついて
哀れみを持った目で俺を睨んだ後、教室へと入って行った。
(ったく、何だよ凛のやつ…。あーあ、女ってめんどくさいなぁ…)
俺は、ため息交じりに頭をグシャグシャーと掻き毟って、不機嫌そうな顔をした。
刹那
「キーンコーンカーンコーン・・・」
(あっ、ヤバイ!もう授業なのか。次英語だ…最悪だ。居眠りでもしてやり過ごそう…と)
そんな事を思いつつ、俺は2年A組と言う教室へと渋々入って行った。
―――この世界は、エレメンタル・ワールドとは別次元にある日本という場所だ。
この日本は至って平和で、住んでいる者達は剣を扱ったり、ましてや魔力がある者はいなかった。
たまに『占い師』や『超能力者』という者達がいるようだが、それでも魔力を持つ者は皆無に等しい。
遠い昔に何度か他国と戦争を起こしたと言うが、今は終戦して平和になっている。
そんな平和で安全?な場所に暮らす日本男児。それが『筒巳 佐熊』だ。
佐熊は平凡な高校2年生で、母と父を原因不明の"事故"で既に亡くしており、11歳の妹と二人暮らし。
たまに携帯小説を書く、自評『隠れ小説家』でもある。
そして今、佐熊がいる場所は犬美第一高校と言う所だ。
今年2年生になり、それなりに興味のある女子もいて、それなりに『しあわせ』な日々だった。
「z…z…z…」
コツン・・・コツン・・・
段々と誰かの足音が佐熊に近づいて来る。
午前の暖かな陽気に照らされ、夏の匂いを漂わす風が、『ふわん』とカーテンを揺らしている。
―――バシンッ!
「ッ!うおあぁ!!」「うわっ・・・」
頭に強烈な痛みが走った
「え?え?あ・・・先生。」
「あ・・・先生。じゃないだろう?授業中に涎垂らしながら寝る奴がいるか?」
先程の『バシンッ』と言う音は、英語の先生が俺の頭を教科書で叩いた音だった。
それにびっくりして俺は驚いたが、同時に先生も俺の声に驚いて間抜けな声を出していた。
俺は、涎?と思い、腕で口元を拭うと、ズルッ!と腕が滑った。
顔を少し赤らめて、捲くっていたワイシャツの袖を下ろして、口元を拭いた。
「ハハハハハ!佐熊!口が緩んでるんじゃないのかぁ~?」
と親しげに笑って来た、憎たらしい男友達。
すると英語の先生が、大きくて深い溜め息を「はぁー…」と吐いた。
俺は心の中で
(いささか教師が生徒の前で、こんな大きな溜め息をついて良い物なのだろうか…?)なんて
どうでも良いことを、ぼんやりと考えてみたのだった。
人間は、恥ずかしいとか驚いた時に、どうでも良いこと細かく考える習性がある…と思うが、
それは俺だけだろうか?
そんなこんなで、再びチャイムが鳴った。
「キーンコーンカーンコーン・・・」
「ぅぅーん!あぁー終わったぁ。」
チャイムと共に、今までガッチリと集中していた生徒達が、ごまあざらしのお腹のように、ペタンと
上半身を机の上に倒した。
俺は、「ぅぅーん!」と背筋を伸ばし大きくあくびをした。
その顔は、凄く眠たげな顔をしていることだろう。
すると1人の女子が俺の机の前に堂々と立っていた。
「It seems to be sleepy. It returns alone because my piano is practiced today. 」
驚いた俺はふと顔を上げてみると、そこには鈴崎 凛がいた。
俺は眉をひそめて顔を横に傾けた。
「え・・・えーっと、い・・・YES?」
凛はその答えに、思わず「ブッ…!あはははは」と吹いていた。
俺はその反応に不機嫌そうな顔をして
「な、何なんだよ!そんなに笑わなくたって良いだろ!」
凛は笑い泣きしていた瞳を拭って言った。
「ははは・・・。えっとね。眠そうな顔してるね。今日私ピアノの練習があるから1人で帰ってね」
と言って、ニッコリと微笑んだ。
俺は恥ずかしそうな顔をしつつ「最初からそう言えっ!」と強気に答えた。
凛は再び優しく微笑んで
「しぃーけぇーん!忘れないようにねっ。」
と言って、「じゃあね」と付け足して教室を後にした。
凛は言葉使いがちょっと荒くて、ショートヘアだから少しボーイッシュに見えるけれど、
本当は優しい性格で、おしとやかな女の子なのだ。
凛は高校生である傍ら、ピアニストでもあり、それなりに有名だった。
時刻は午後4時過ぎ。
(今日はサタンスーパーで買い物して帰ろっと)
俺は、窓越しに曇りかけた夕焼け空を見つめ、静かに微笑んだ。
一度携帯をパチンと開き、時刻を確認すると再びパチンと携帯を閉じた。
――そして俺は学校を後にしたのだった。
光陰に関守なし。
月日がとどまることなく、進み続ける時間。
それが果たして幸せなのか…?時間が流れることにより、小さくとも大きくとも
――争いは生まれる。
―――光は日、陰は月の意から『光陰』は月日。
『関守』は関所の番人のこと。