前編
前編・中編・後編・エピローグの四部仕立てのお話です。
生まれてすぐその美しい瞳の光を失った少女マナは、周りの人達から同情され大切に育てられた。
その瞳に何も映さなくても、穢れなき美しさを持つ少女は人々を惹きつけ、その評判は村中に広まり…とうとうその噂を聞いた村長に跡取り息子の婚約者にも選ばれた。
家族や村の人達は、少女が幸せになれるとその婚約を心から喜んだ。
でも…彼女の表情に笑顔が浮かぶことはなく、婚約者が根気強く話し掛けても、少女は『はい』か『いいえ』と答えることしかない…。
そして、いつも彼女の美しい空色の瞳は虚空を見つめていた…。
やがて婚約者の彼は学園に通い始め、様々な人々と交流し…そこで恋をした。
マナのような美しさはないけれど、嬉しい時は大声で笑い、人が悲しむ時は共に涙を流し、理不尽なことには本気で怒る…彼が好きになったのは、そんな少女だった。
人見知りをする盲目の少女マナは、婚約者と同じ学園に通わなかった。
元々会話の少なかった二人の仲は、彼が学園に通い始めたことで更に距離があき…
とうとう婚約は解消されることになった。
元々村長からの希望で結ばれた婚約だったため、少し多めの慰謝料が支払われ、婚約は円満に解消された。
その後…家族は必死に止めたけれど、少女は本人の意志で北の果てにある修道院で暮らす一生を選んだ。
〜・〜・〜・〜・〜
「ねえ、どうして君は目が見えないフリをしているの?」
修道院で水汲みをしていた少女マナに話し掛ける者がいた。
『化け物がマナに話し掛けているわ』
『早く助けないと、マナが襲われる!!
でも…怖くて近づけない…』
『誰か!!院長先生を呼んできて〜!!』
他の修道女達が盲目の美しい少女を心配して助けを求めに行く間も、マナは信じられない…という表情で自分に話し掛ける男性の顔を見つめていた。
そうマナにはみんなが化け物と言ったその男性の顔が見えていた。
「マナ、この顔好きでしょ?
だって…ずっと付き合ってきた僕を捨ててまで選んだ男の顔なんだから…」
化け物と呼ばれた彼の言葉にマナの表情は驚愕で歪み…思わず言葉がこぼれた…。
「えっ…セイ君…?」
そう。マナには人には言えない秘密があったのだ…。
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