表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シンセティック・ワイルドの断層(グリッチ)LUNA‗BOOK TWO  作者: 光闇居士


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/7

第四章:拘束されたリヴァイアサン

 目の前の光景に、感情抑制されていたはずのルナの眉がピクリと動いた。

 湖は死んでいた。

 水面はコールタールのような黒いノイズの膜で覆われ、その上を企業ロゴの入った無数の採掘ドローンがハエのように飛び回っている。彼らは湖から無理やりデータを吸い上げ、甲高い駆動音を響かせていた。

 そして、その中央。

 かつて「空を泳ぐ庭園」と呼ばれた巨大なクジラは、今は見るも無惨な姿で、地上数メートルの高さに拘束されていた。

 何本もの極太のアンカーが打ち込まれ、物理的な鎖と電子的なロックコードによって雁字搦めにされている。

背中にあった美しい角の森は枯れ果て、代わりに巨大な冷却ファンと、データ抽出用のパイプが突き刺さっていた。

 クジラは時折、身をよじり、低く唸った。

『ヴォォォォ……』

 それは歌ではない。システムが崩壊する直前の、悲鳴に似たノイズだった。

「ターゲット視認。リヴァイアサン級データ生命体。……状態、極めて不安定」

「いい眺めだろう?」Kの声が嗤う。「あれ一匹から採れる純度99%の『ノスタルジア』は、富裕層相手に莫大な値がつく。さあルナ、仕上げだ。あいつの脳幹にパイルをぶち込んで、中枢データを吸い出せ」

 ルナはドローンの発着ポートを足場にして跳躍し、クジラの背中へと着地した。

 足裏から伝わる感触は、生き物というより、過熱した発電所の床のようだ。

 枯れた蔦が、ルナの足に力なく絡みつこうとするが、彼女はそれをブーツで踏みちぎった。

「動くな。すぐに楽にしてやる」

 彼女はパイルバンカーを構え、クジラの脊髄にあたるメイン回路のスロットに狙いを定めた。

 これが終われば、借金は消える。スラム街の薄汚いアパートを出て、まともな空気が吸える上層区画へ行けるかもしれない。

 彼女は冷徹に、発射トリガーに指をかけた。

 その時だった。

 クジラの背中の排気ダクトから、圧縮された蒸気が噴き出し、視界を奪った。

 同時に、足元の装甲板が開き、防衛システムの一部である触手がルナの腕を捕らえた。

「チッ、まだ抵抗する気!?」

 ルナはナイフで切り払おうとしたが、触手の先端から伸びたコネクタが、彼女の首筋にある「神経接続ジャック(ニューラル・ポート)」へ、強引に侵入した。

――強制同期ハード・シンクロ

「ガッ……アアアアッ!?」

 ルナの視界がホワイトアウトした。

 バイザーの数値が弾け飛び、脳のファイアウォールが内側から食い破られる。

「不正アクセス検知! リンク切断不能! 逆流してくる……!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ