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第三章:汚染された湿地帯と、ジャンク・データの墓場
森のさらに奥、「言の葉の沼」と呼ばれていたエリアは、今や「スパムの湿地帯」と化していた。
足首まで浸かる泥沼は、かつてのような詩的な文章ではなく、無数の「BUY NOW」「CLICK HERE」「WARNING」という毒々しいポップアップ広告の残骸で構成されていた。
かつて哲学的なヤドカリ「パン・パン」がいた場所には、錆びたサーバーラックの残骸が墓標のように突き出し、そこから漏れ出す冷却液が水面を虹色に汚染している。
「ひどい場所ね」
ルナは舌打ちをした。
ここにあるのは「夢」ではない。人類がネットの海に吐き捨てた、欲望と虚栄の排泄物だ。
「ルナ、感傷に浸っている暇はないぞ。ターゲットのバイタルが上昇している。誰かが先に手を出しているかもしれん」
ハンドラーの声に、ルナはライフルを構え直した。
「了解。……これより、コア・エリアへ侵入する」
ルナは湿地帯を抜け、開けた場所へと出た。
そこはかつて、星空とオーロラを映し出した美しい湖だった場所だ。




