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08.幕間2

「うまっ」

 出されたご飯を高校生たち、名倉伊予利と新國司は食べていた。

 テーブルの向かい側にいる隼人たちも、はじめは伊予利と司を睨むように見ていたが、一緒に食べている。

 もぐもぐ、ごくん。もぐもぐ……。

 食器を流しに片し、お茶を出された頃には伊予利と司を睨むような視線はなくなったが、まだ警戒されてるな、と司は思った。

 司は伊予利の付き添いみたいなものだ。高校に入学後、司と伊予利は席が前後で仲良くなった。二年に上がっても同じクラスだったのだが、最近の伊予利は考え事でもしているのか、放課後になっても司が声を掛けるまで気づかない。

「どうしたんだよ」

「ん?」

「いや、ん? じゃないだろ。……何かあったのか?」

 司が真剣に聞けば、伊予利は唸るような声を出した。

「言いづらい事なら聞かないけど」

「あー、いや、違、くはない、けど、うーん……」

 伊予利はしばらく黙ったかと思うと、小さい声で司に言った。

「……馬鹿にしない?」

「内容による」

「確かに」

「言うだけ言ってみろよ」

 催促するように司が言えば、伊予利が肩の力を抜いて笑った。

「いや、何でそんな偉そうに言うんだよ」

 はー、と息を吐いて、話し出した伊予利の言葉に、司は耳を傾けた。やけに具体的な、夢の話だ。

「変な夢だなって起きた時は思ったんだけどさ、学校に行く途中、俺を起こしてくれた女の子に会ったんだ」

 診療所からの帰りだったらしくて、お兄さんみたいな人に抱えられて、眠ってたから話したり出来なかったけど、間違いなく、その女の子だった。お兄さんの方が鍵を落としそうになったから、自分の手のひらに鍵を移動させて渡したんだよ。そしたらタイミング良いのか、悪いのかわからないんだけど、お兄さんのウエストポーチの留め具も外れちゃって、お兄さんは女の子抱えてるから、俺が代わりに持って家まで一緒に行ったんだ。

 そこまで話した伊予利は、話しづらそうに言った。

「多分、俺のせいで、あの女の子はああなったんだと思う」

「……? いや、何でだよ。関係ないだろ?」

 いつそんな話ししたよ。夢で会っただけだろと司は思ったが、伊予利は心当たりがあるようだ。

「糸を掴んだんだ」

 これを逃したら、もう起きれない。そう思った。その糸を掴んだら、夢の中だけど、目が覚めて、女の子がいて、手を握ってた。

「握ったところから、満たされなかったものが満たされたみたいな、使いきった分が充電されるみたいな、そんな感じがあったんだ。女の子を見た瞬間、あ、夢じゃないって思ったんだよ」

 信じられないかもしれないけど、と言う伊予利は自分の左手をじっと見ていた。

「それで?」

 司が促すように言えば、伊予利が首を傾げる。

「それでって、何が?」

 こいつ、これだけ悩んどいて何がはないだろ、と司は呆れた。

「もしそれが夢じゃないとしたら、どうするんだ?」

「…………あの女の子と話しがしたい。聞きたいこともあるけど、ちゃんとお礼が言いたい」

 まだ、ありがとうって言えてないんだ。ただ、実は昨日、その女の子の家まで行ったのだが、結局どうしたらいいかわからず、伊予利はインターホンを押さず帰ってしまったと言う。

「いや、押せよ」

 ただの不審者じゃねーか、と司は容赦なく言い放った。

「ぐっ、だって、相手はランドセル背負ってるような年齢の子だぞ? 知らない高校生がいきなり訪ねてきたら普通怖いだろうし、何て言えばいいかわかんないし」

「この前の女の子が心配でとか、適当に言えば良いだろ」

「それこそおかしいだろ。たった一回会っただけの子を心配して、家まで訪ねる奴のが不審者だって」

「まあ、確かに」

「だろ?」

 それでも昨日行ってる時点で既に怪しいのだが、司は口には出さなかった。

「じゃあ、俺も一緒に付いてってやるから、会うだけ会ってみれば?」

 会って話すくらいだったら簡単だろう。事故については司にも関係があるわけだし、単純に気になった。

 そうやって軽い気持ちで伊予利と行った先で、司は水をぶっかけられたのだ。伊予利がインターホンを押そうか押すまいかしている時だった。

 ばしゃん。

「うぶっ、」

「、何だ?」

 伊予利と司の足元に水が広がる。

 外の音が聞こえたのか、玄関から少年がひょっこりと顔を覗かせた。

「え、何? 隼人、どうかした……? えっ?」

「あー、えっと、こんにちは?」

 ずぶ濡れの状態で、伊予利はそう言った。

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