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15.原動力

 薄らいでいく意識の中、少年のひどく傷付いた顔を見て、さくらが抱いたのは憐憫よりも怒りだった。

 さくらとして生まれるよりも前、前世、社会人だった時。新卒時代をとっくに通り過ぎ、後輩も増えた頃、ノータイムで全ての仕事をこなせるようになった中での原動力は怒りだった。

 上司が新しい機械を導入するだけして、管理は全て投げてきたこと。お局が仕事を流して来るだけで何もしないこと。後輩たちのクレーム対応を何度も代わったこと。

 二日前に会議の資料作成を言い渡された時には殺意が沸いた。それでいて給料もボーナスも新しく入ってきた後輩より低いこと。食いしばり過ぎて頬の内側に歯形がくっきりついていた。

 生理はもう何年も来ていなかったが、仕事を辞める選択より、全てやりきるという選択を選んだ。単純にこんなことくらいで挫けてたまるかという腹立たしさが勝り、苛立ちを何かに当てたり、誰かにぶつけるよりも、実力でねじ伏せることに注いだ。そういう性格だった。

 そして、その性格はさくらとして生まれてからも変わっていない。むしろ、そんな性格だからこそ、さくらは今の生活を送れている。

 さくらは怒っていた。母が亡くなったことも、自分が気付けなかったことも。

 もし、さくらが本の内容にもっと早く気付いていれば。さくらだけじゃなく、隼人たちだって親を亡くすことはなかったかもしれない。それはさくらの思い上がりだ。

 さくらは何もできなかった。それだけが事実であり、たらればに意味などない。故に、沸々とした怒りはさくらが自身に対して抱いているものだった。

 電子機器が普及する中、電気のエピトは電気を使う物であれば直接干渉できる。それは便利だが、繊細なコントロールが必要だ。感情が揺れ動いた状態で、携帯電話に触れた瞬間壊れたという話は珍しくもない。

 それを利用し発電しようとして爆発した話もあれば、抑制剤の飲み過ぎで搬送された話もある。対電気ブレスレットは、そんな電気のエピト用に開発された物だ。電気のエピト以外が着けても問題ないため、身近に電気のエピトがいる者が着けていることも多い。

 バチッがパチッになる程度には抑えることが出来る。だからさくらは少年の手首にブレスレットが見えても気にしなかった。要は油断したのだ。

 少年と指先が触れた瞬間、手元に雷が落ちるような強い衝撃に、驚くよりも先に自分の不注意にカッとなった。

 さくらは意識が遠くなるのを感じながらも、ぎりっ、と歯を食いしばり、両手を勢いよく合わせて広げた。

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