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お前が言ったんだが?
「向こうだ。」
燈馬が走り出す。リーナも付いてきた。悲鳴のした場所の近くの物陰に隠れ、そこから顔だけを覗かせる。一人の少女が男二人に絡まれていた。
「傭兵ね…」
「マールって軍隊があるんじゃないのか?」
「軍隊って言うのは、私達みたいに兵士としての訓練を受けた者だけが入れるの。経済的理由で訓練を受けられなかったり、ルールの遵守が嫌いな魔法使いは、自分達で傭兵隊を組織するの。実力は確かだけど、あぁやって風紀を乱したりする輩が多いの。不良兵士って所かしら。」
「なるほどな。んじゃ、ちょっと行って来る。」
物陰から出ようとした燈馬を、リーナが必死で抑えた。
「言ったでしょ?傭兵の実力は高いって。戦争時は正規軍隊以上の活躍を見せる場合もあるんだから!」
「まぁ、俺は別に見捨てろって言うなら、それでもいいけど。」
ドライな性格ゆえ、興味本位で見つけた事件を解決するほどお人よしではない燈馬。
「え、ちょっと、見捨てるの!?」
「お前がそう言ったんだが?」
「そうじゃなくて!」
思わず叫んでしまったリーナであった。