世話になったな…
「これからどうするんだよ。援軍呼んだんだろ?」
「大丈夫。呼ぶ地点を変えたから、直接的には来ないよ。呼んでから10分は経ってるから、後10分程度かな。あ、ちなみに兄さんには催眠ガスから無理矢理起こす薬を飲ませたんだ。だからその副作用で頭痛がするって訳。」
そう言ってニッコリする燈亜。燈馬は笑えなかったが…。
「兄さんもサリニャに来るといいよ。僕と同じ施設に入って装置の完成を待とう。それなら直ぐにもとの世界に帰れるはずだから。上層部には僕から何とか伝えておくよ。早く帰らないと、奈々姉さんに殺されちゃいそうだしね。」
にこりと笑いながら言う燈亜だが、その表情は少し引き攣っていた。燈馬は迷った。確かにこのままサリニャに行く方法もある。
「世話になったな、ミリィ。」
軽く頭を撫でて、燈馬はその場を去ろうとする。彼にとって見れば、ミリィはルームメイト。それに、これ以上あの部屋にいて同棲している事がバレたら、彼女達の面目も潰れてしまうに違いない。それを思っての事だった。
「トーマ…、行っちゃやだ…」
燈馬の服の端をギュッと掴んだミリィ。
「大分気に入られてるんだね、兄さんは。」
燈亜が笑いながら立ち上がった。
「さて、僕は行くよ。偽の報告も考えないとだしね。例の装置が出来上がったら呼びに来るよ。それまでに僕らが戦っていない事を祈らないとね。」
それじゃ、とだけ残して、燈亜は去っていったのだった。