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一旦整理しよう。

 一旦整理しよう。


 はじめこそ面白かったのに、何度も何度も同じ話を読み返しするせいで飽きてしまった国語の授業時間を使って、ごちゃごちゃになっているお母さんを整理することにした。


・お母さんのせいり


 ぼーっとしていて気付かなかった。宇和奈先生が真横にいた。さっと右手で隠すも遅かった。が、先生はノートを見るやぎょっとして悩ましげに誰か探してでもいるようにとみこうみ、自分以外に誰も言う人がいないのを悟ったように息をつく。わたしはぐっと身構えていたが、結局何も云わずに後方へと去っていった。授業を再開する。何人か訝しんだ生徒がチラと顔をあげた。

 ?

 なんだありゃ。

 宇和奈先生しか先生はいないんだから、注意するのも宇和奈先生しかいないだろーに。

 よくわからない。いっやー。らっきー。はっぴー。


 改めまして(頭の中で山崎バニラが喋る。バニラちゃん好き。ああいうお声になりたい。将来の夢は声優さん)。


・お母さんのせいり


1.赤ちゃんのお母さん

 二才~四才。五才六才ってことはないと思う。かんかく。もちょっと詳しく言うと、わたしも五才くらいからはちゃんと考えてしゃべることができたから。意思そつう? って言うの? 赤ちゃんお母さんは単語ばっかりで意味くみ取るのにすごい苦労するから。だから二才三才四才。それより上はない。

 あとは何よりおはし。

 うまくあつかえてないのが何より。

 小さなころからはじめても、だいたいの人は五才くらいまでいかないとうまくあつかえないらしい。個人差だってあるだろうけど。

 今まで話して印しょうにのこってる単語。

『ママ』←これはおばあちゃんのこと? そのときはお姉さんに言ってたけど。『ぽっちゃん』←犬見て言ってた。『しゃな』←わたしにむかって言った。だれだよ。

 あとはやっぱりそう。めっちゃコケる。年的には歩けはするはずなんだけどな。体がなれないのかな。


2.六才のお母さん。コミちゃん。

 ちょっと、うん、かなり、苦手。

 泣いてる、落ちこんでることが多い。お母さんのすがたでそれされるってだけでもわたしはけっこうやだ。

 でも、なんかこの子はそれだけじゃない。

 学校行きたい。

 外出たい。

 お姉さんとはあまり仲良くない。おたがいかんしょうしないようにしている? お姉さんは最低限だけ言うは言う。体はあつかいなれてるって感じ。

 よくわからない。

 げんじょう一番謎。

 見られてる。


3.八才のお母さん。お姉さん。

 一番たよりになる。

 そんけいしてる。

 かっこいい。

 いけない。これじゃただの感想だ。えぇっと……

 九十二才のおばあちゃんお母さんはお姉さんの命令をよく聞く(命令よく聞くって言っても孫にせっする時のそれだろって言われればそれまで)。

 面倒見がいい。

 でも、意外と体はなれてないらしい? よく「いってぇな!」って、足の小指とかぶつけてぶつくさ言ってるすがたを見る。

 犬猫ひろってくる。大めいわく(どっから?)。

 他に気になることといえば……、六才~八才の間に何があったの? ってくらいにせーかく変わってない? ねえ?


4.九十二才のお母さん。おばあちゃん。

 げんじょうわが家のだいこくばしら?

 この人がいなくなったらマズいと感じる……。

 料理せんたくそうじ。ぜんぶ。衣食住をになう。住はないか。衣食か。

 反面、困ったさんでもある。ゴミ集める。どっから持ってきてんのかっていう。そ大ゴミでくさくないのが救い。ちなみに、わが家で出るゴミはわたしが捨てることにした。お母さんの二人ぐらしからお母さんたちとの五人ぐらし。ゴミは増える。ゴミ収集所の場所くらいは分かる。曜日は冷ぞうこに貼ってあったから良かった。

 かんわきゅうだい。

 体のあつかいは意外やなれてる。とも、ちがうような……? 説明ができない。でもそう感じた。

 どうも外を恐れているらしい。

 夜中トイレに立つ回数が多い。朝が早い。


「こんなところかな」

 授業が終わるに合わせて、わたしはぐっと伸びをする。頭は整理できた。お母さんは整理できない。

 もっとお母さんと会話しないといけないな。個々の深堀りをしていかないと繋がりが見えてこない。繋がりが何にに繋がるのかえさえ、分からないが。何もしてないよりはいい。

 今より悪くなるってことはないだろう。


 お母さんのことをよく知ろう、なんて、お母さんがいた頃には考えもしなかったなと思ってわたしはぐっと涙が出る。


5.お母さん。本物のお母さん。


 この項目で止まってしまったのは、決してわたしがお母さんをちゃんと知らなかったじゃなくて、授業が終わってしまったからであって、それでそれでそれで……



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