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タメダ2

 坂﨑の土地買収の件は失敗に終わった。

 仕方ない。こういうこともある。

「……」

 部下は気まずそうに車を運転している。

 それはそうだろう。今回の件はこいつが引っ張ってきたんだ。ここまできた。いいとこまできた。公園として使用していい土地、必要とされる場所探し、周囲の子供の有無、状況、周辺住人の納得、全て得られてひと仕事終えたことになる。


 前回は全部タメダがやった。その手本をみせた。

 今回はある程度任せた。フォローすべきところはフォローし、肝心なところはやらせてみた。

 独り立ちできるようにだ。急いてやる必要など全くないが、ある程度できるという自負があった方が人間強いし、組織に対して貢献できているという自覚も生まれ、じっくり腰を据えて長く安心して働けるようになる。

 基盤がゆらゆらだと人間は不安になるからだ。


 最後の最後でしくじってしまった。


 こういうことはある。


 仕事をしていると。

 いいところを見せようとして失敗するなんてよくよくある話だし、それがタイミングとして絶対に失敗しちゃいけないところだったなんてのもありふれた話だ。ただ自分には今まで、幸いにしてか不幸にしてか、ここまで縁がなかったというだけ。

 基盤が揺れていたのか。引っ掛かっていることでもあったか。

 タメダは言う。

「すまんな」

 目の端にぎゅっとハンドルを握り直した吉岡の姿がみえた。

「いえ。大丈夫です」

 それから、

「タメダさんはやれることやってました。あそこまでやってもだめなこともあるんだって後ろにいて愕然としましたもん。だいたい、あの人おかしいっすよ。近所に今のご時世あんだけ子供いる家あって、俺行ったときも道っぱたでボール持って遊んでましたし、俺が車通ったときみんなで一斉に端っこ避けて、俺あん時、ああ、絶対これ成功させなきゃなーって奮起して。ああ、タメダさんのこと責めてるわけじゃないんすよ! ね、あの人の、あの人の家だけいければって俺――」


 何度めかになる言葉をタメダは聞き流した。

 今の子供は外で遊ばない。しかし、遊ばないわけじゃない。遊べる場所を提供してやればこっちが思っている以上に存外遊ぶものだ。

 ――場所、場所か。

 子供を家に閉じ込めているのなんて、もったいない。子供は絶対に外でのびのび遊ばせていた方がいい。

 などと、タメダは自分でも時代に合ってない、おっさん通り越してじいさん臭いんじゃないかといったことを思う。


「ね? タメダさん聞いてます? だからあんま思い詰めないで下さいね? たぶんよくあることだとは理解しているんで」

「ああ」

 意識を戻した。

「菓子折り無駄になったな」

「俺、甘いの無理なんですよね。タメダさん食います?」

「ああ」

 生返事し、菓子折りをタメダが処理することになった。


 ――そう。子供を家に閉じ込めていると、将来碌な大人に育たないんだ。

 経験則だった。


 場所の提供。

 タメダは菓子折りをぎゅっと握った。紙袋が音を立てた。皺ができた。それを部下は目の端で捉えている。再度車内に沈黙が生まれる。また気まずそうにしているが、タメダは気にしていない。次に行うことをひたすらに考えている。早く公園に行きたい。



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