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  作者: くじら文学
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1話

 腹の中に黒い渦が巻いているようだ。等間隔で吐き気を感じる。誰も私を許さない。私が私を許すことはない。罪悪感という悪魔に苛まれる。冷汗がドバっとでできた。これから先どうすればいいのか。逃げ切れるのか。昔の楽しかった記憶が脳を駆け抜けた。


 こんなことがしたかった訳ではない。本当はこんなこと。私は悪くない。あいつが悪い。あいつがそうさせたんだ。私は被害者なんだ。


 彼は地味である。はっきり言って華やかさは皆無で、クラスの端っこで本読んでいるような男だ。彼のその性格から他の人物は関わることを避けていた。人と話すときは目を合わせることはなく、床の木目を凝視しながら話す。ただその発する言葉の裏には自信がかすかに漂っていた。痩せたその体を気怠そうに、まるでゾンビのようにのっそのっそと歩く。胸を張って歩くことの対義語があるのならばそれに該当する。彼は人の前で堂々と意見を述べる。自身がなさそうに下を向きながらはっきりとした口調で。彼は臆することはない。いくら陰口を言われようがどこ吹く風。自分がルールであり、万物の法則であるとでも思っているかのようだ。彼は勉強ができた。しかし彼はそれを自慢しない。できて当たり前かのような態度をとった。彼との一番初めの記憶は私が勉強を教えてもったときの記憶だ。


「教科書に書いてることを真似すれば解けるよ」


 そのときは勉強できる人は違うなと思った。変な奴だと思った。私はその時点では明らかに下に見ていた。自分の脅威になるような人間ではないと明らかに馬鹿にしていた。髪はぼさぼさ、ワックスの存在も知らなそう。いつもメガネが合わないのかメガネをくいっと上げているその姿、明らかに格下であった。そんな奴と仲良くすれば自分の株が上がると思っていた。だから私は懸命に話しかけた。誰も近寄らない彼に。彼をみんなに紹介してやった。


「変わったやつだけど、面白くて良いやつなんだよ」


 みんなは懐疑の目を向けた。私はその目を見て気持ちがよかった。その目を彼に向けさせたことに優越感を覚えた。体の芯がゾクゾクしているのを感じる。あれが私の屈辱と嫉妬の日々の始まりだった。


 結論を述べる。私はその男に嫉妬し、手にかけた。

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