奇襲
第34話 奇襲
レクサム『この数を、相手にするのは危険だ!リンフェル!』
ゼイル『おいおい…食いしん坊の嬢ちゃん!』
ゼイル『こいつは、周囲の仲間も呼んだみたいだ!数え切れないほどの「魔樹」がそこまで迫って来ている!』
ニイ(あれを使うしか無いようですね…でもあれは…)
リンフェル『大丈夫です。まあ…見ててください…』
レクサム(あの弓…何処から出てきた…)
レクサム(あれは、収納魔法ではない…)
リンフェル『古の弓シャミール…』
リンフェル『一族の家宝…これで仕留めて見せます。』
ギィィ…
ズシュゥン!!
レクサム(たった1本の矢で…何を…)
プスッ…
ドキュゥン!!
彼女が放った1本の矢は、化け物に命中した。
その瞬間に…
ゼイル『動きが止まった…』
ニイ『それだけでは、ありません…』
シェルピー『あれは…弓法…』
レクサム『直ぐ、そこまで迫って来ていた…化け物も止まっている…』
リンフェル『これが…私の魔力特性「キューピッド」です。』
リンフェル『そして…弓法「ラブリールーレット」は、弓矢に組み込んだ「魔法効果」によって…射抜いた者を、強制的に無作為な行動しかとれなくします。』
ゼイル『なるほど…「魔力特性」持ちか…』
ゼイル『…』
ニイ『魔法効果…魔力特性に備わる特殊な能力を、魔法として置き換えたものですね…』
レクサム『俺も、剣法として組み込んである…』
レクサム『たく…独学だったから苦労したよ…』
ゼイル『俺もだ…』
レクサム「!」
レクサム『どうやら…まだ、安心している場合では無いらしい…』
レクサム『姉貴…』
ニイ『はい…何か来ます。』
レクサム『こいつらに、隠れて今まで気づかなかった。』
レクサム(この異様な気配は、魔王以来だな…)
レクサム『リンフェル…こいつらを何処かに移動させられるか?』
レクサム『後々…邪魔になる…』
リンフェル『はい…もちろんできます。』
レクサム『かなりの数だ。此処で迎え撃つしかない…』
魔樹たちが、退いた暗い森の奥深く…
その異様な気配は、すぐにその姿を現した。
それは一瞬だった…
ガサッガサッガサッ!
ドッドッドッドッドッ!!
ザザザザザザザザザザ!!!
ゼイル『おいおい…今度は何だ!』
ゼイル『此奴らは一体!?』
「ドゥニッタ…ハガパロ…」
(実に生きが良いな…剥ぎ甲斐がある…)
「ドゥラッタ…ドゥラッタ…」
(見つけた…見つけたぞ…)
「ハダァリッタ…パグ…」
(お前らは全て…我らの食糧だ。)
ニタァ…
ギィギィギィギィ!
得体の知れない…
無数の化け物の笑みと笑い声は、あるものを連想させる。
それはまるで、悪魔そのものだった…
レクサム『間違いない…』
レクサム『精霊界に巣食う…食人魔族…』
レクサム『その名は、グシャハギ…』
ーーー
同時刻
調定国 ミスリルティア領
自然洞窟 ディルローブ内部
「この気配…遂に現れたか…この地に棲まう魔物め…」
グラドール『やっと…見つけましたよ…』
グラドール『おや…あれは…』
グラドール『魔境大陸に棲まう…食人魔族では…』
グラドール『確か…少々…厄介な「魔力性質」を持っておりましたね…あの者たちは、それに気付くのか…ですが…』
ーーー
主導国 ソルティシア
首都 リュグナル
魔導協会本部
クラン『今…世界中で、未知の現象が群発している。』
クラン『その一つが、魔龍の襲来だ…』
「何故…今になって…魔龍が…」
魔導国セルスピア 学園長
ハーストン・マーディス
クラン『古の時代より…魔龍は、世界に「天変地異」を齎すと言い伝えられている…』
クラン『これは…今後…更なる混乱を招く恐れがある…』
ライル『まあ…置き換えれば…英雄軍と謳われた者たちが残した「戦いの痕」だ。まだ安い物だよ…』
ラザトーム『その通りであります。会長殿…』
ハーストン(会長殿…あまり関連性のない物言いは避けた方が…)
クラン『ええ…』
クラン『近頃、開かれる…中央国会議に向けて…この問題は、今後の重要な課題とし…即刻、解決に向けて動くべきです。』
ライル『クランの言う通りだ。』
ライル『この件は、中央国会議でも出すつもりだよ…』
クラン『はい…』
クラン『問題は更なる問題を生む…この様な事態が今も起こりつつある…』
ライル『僕も分かっているよ…』
ライル『大災害を招く悪しき龍…僕がすべて解決すれば、それで良いんだが…』
ライル『どうも…中央国会議への準備が最優先だ。』
クラン『会長…当たり前です。』
ライル『…』
「あの…発言を…」
ライル『どうぞ…』
「これらの異変は、ある者たちの近くで起こりつつありますよね…」
ライル『…』
クラン『…』
「この件以外にも…あると…聞いています。」
「何でも…その者たちの中には、得体の知れない力を扱う者も居るのだとか…」
魔導国アストラル 学園長
ルノワール・ベーシック
ライル(既に広まってたか…)
クラン(これではまるで…あの者たちが、これらの事象を引き起こしているのと同義では無いか…)
ラザトーム(私は、何も伝えておりませんよ…会長殿…)
ルノワール『この様に…あの者達こそ…更なる混乱を生む恐れがあるのでは?』
クラン『しかし…』
ライル『それは無いよ…』
ルノワール『その根拠は何処にあるのです?ライル会長…』
ルノワール『私の性分は、十分にご理解なされている筈です。』
ライル(それは…十二分にあるくらいには…)
ルノワール『それに、先代の会長なら…これらの課題の本質を見抜き…早急なご判断を成されて居たことでしょう…』
ルノワール『今思えば、あの方は幅広い分野で多大な功績を残されました。』
ルノワール『これは、少々…手荒い発言にはなりますが…』
ルノワール『ライル会長は、その座を甘く見ています。「魔導協会会長」とは、そう言う立場の人間なのです。』
ルノワール『ただの家柄…経験…才能だけでは決して成し得ない…』
ルノワール『それを肝に銘じておいて下さい。』
ライル『それは…心得ているよ…』
ライル(あの人の話になると止まらないんだよな…この人…)
ライル『でも…』
ライル『あの人に、この座を譲り受けてから分かったことがあるよ…』
ライル『「魔導協会会長」とは、魔法界を牽引する立場として…最も信頼できる者にこの座を託す義務がある。』
ライル『だから…僕は、この座が相応しい…次期会長を既に決めている。』
ルノワール『まあ…勝手な判断を…』
ライル『ルノワール…同期であった君が僕をよく思っていないのは知っているよ…』
ライル『僕より…恩師である…先代の方が秀でているのも分かっている…』
ライル『それを踏まえて…僕は決めている…』
ライル『そう…あの者たちの中でね…』
ーーー




