静かな箱庭で生きる者達
第12話 静かな箱庭で生きる者達
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魔術師ジーラを倒した話は、国中に響き渡った。
旅人である少女を守りながら…魔術師ジーラを倒したこと…
魔竜ウルンズガードンの討伐…
魔導兵団に迫る魔の手を退けたこと…
彼の功績は計り知れず…王国の歴史として刻まれることだろう…
彼の名声とは対照的に…国民により解釈や誇張によって流された者が1人居た。
「俺の手柄は?」
不機嫌そうな…レクサムを見るのはあの時が初めてになる…
リートグルムは、数多くの人々が笑い合っている活気ある国だった。
あの風景を見るまでは…
王都の広場には、1台の馬車が止まっており…巨大な木の格子が備え付けられているのが見える…
虚な目で…ただ一点を見つめる者…
俯き微動だにしない者…
恐怖や悲しみのあまり…嗚咽する者…
傷と痣だらけの人々は、手枷と足枷によって身動きが取れずにいた。
唐突にレクサムがこう呟く…
「姉貴と離れるなよ…あれは奴隷商人だ。」
パメラ『どれい…』
私は状況を上手く理解しきれず…戸惑っていると…ニイさんがこう説明してくれた。
「奴隷商人…忌まわしき商売人であり…」
「違法な模倣品や盗品…戦利品や押収品なども兵団から横流しによって得ており…」
「人間までも…競売に賭けられている…」
レクサムがこう続ける…
「奴らは世界中に存在している…」
「数々の違法な品は、貴族などの重鎮らによって競り落とされる…」
「俺は、奴等のアジトを突き止める…そう遠くないはずだ。」
「奴らも儲けがないのだろう…」
「近頃は、奴隷商人の入国を監視や禁止している国も多くなっているからな…」
奴隷商人の馬車が動き出す…
私は、レクサムとしばらく別れる…
「姉貴…パメラたちを頼む…」
「ええ…」
私たちは、城下町の宿屋で休むことにした。
ーーー
城下町の宿屋の入り口で…
ふと…私は、ある事に疑問を持った。
もう時期…日が暮れる…
森の中に消えてゆく彼を見て…
灯り1つ付けず…低速で移動する馬車を追う姿を…
薄暗い森の中を移動する馬車は、予想よりも大きく…
馬車より先が、見えないほどの幅がある…
ニイ『後は、彼に任せましょう…』
私は、彼女に聞いてみることにした。
パメラ『何故レクサムさんは、暗闇でもあんなに動けるのですか?』
これには…ラグスさんの話にもあった。
「気配認識」と言うワードが、どうも引っかかっていた。
どんなに鮮明に感じられたとしても…暗闇だと視認出来ない話が…
彼女は、少し困った表情を浮かべると…こう答え始める…
「彼は夜が好きなので…その為でしょう…」
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城下町の宿屋に辿り着き…入り口に入ると早々に…
ある1人の青年に呼び止められる…
「なあ…あんた達…」
ニイさんは、強く警戒している…
青年からは、異様な雰囲気が漂っていたからだ…
「1日でもいい…泊めさせてくれないか?」
「今…手持ちが無くてな…」
いつの間にか…さっきまでの異様な雰囲気は無く…気のせいによるものだと思い込んでいた。
「あっ…俺はゼイル…」
「ゼイル・グーベスだ。」
ゼイル『あんた達…あの目立ってた奴の連れだろ?』
ゼイル『中々出来る奴らだったから…一様は頭に入れていた。』
ニイ『それは構いませんが…レクサムが何というか…』
ゼイル『ああ…確かにその名を聞いたな…聞き耳はいつでも立てておかないとな…』
シェルピー『耳が良いんですね…』
ゼイル『ああ…良いぜ…それにしても…ガキの癖に身なりがやたらと良いな…』
ニイ『おっほん…』
ゼイル『?』
パメラ『ええと…シェルピーさんは、ヴァラメンス共同国の第3王女様です。』
ゼイル『えっ?王族?』
ゼイル『王族様と旅してんの?』
「今戻ったぞ…魔導兵団は仕事が早いな…特にラグスという奴…なかなかやってくれる…」
「てか…宿屋の出入り口で、なに固まってんだ…お前ら…」
早々に戻って来た彼に…ことの顛末を説明する…
レクサム『なるほど…一泊だけ泊めて欲しいか…』
レクサム『良いぜ…』
彼の口から意外な回答が出た。
レクサム『だが…1つ条件がある。』
レクサム『お前…行く宛無いんだろ?』
ゼイル『まあな…かれこれ1週間は何も食べてない…』
レクサム『よく持ったな…』
ゼイル『以前…何度も「魔導兵団」に入る為に、いろいろと自分で鍛えていてな…』
ゼイル『断食や剣技は日頃から磨いてきた。』
シェルピー『何故…断食を?』
レクサム『意味無いように聞こえるが…魔導兵団でも…任務に着く時は、いつでも食事を取れる訳では無いからな…』
レクサム『いつでも…対応出来るように、しておくことが重要なんだ。』
レクサム『あと…断食は、敵から逃げる時も案外役に立つぞ…』
ゼイル『よくお前知ってるな…魔導兵団に居たのか?』
レクサム『独学だ。』
ゼイル『ああ…』
ゼイル『それで条件は?』
レクサム『俺たちについて来い…それだけだ。』
ゼイル『良いぜ…乗った。てかっ…それしか俺に道は無いな…』
レクサム『俺達の旅の目的だが…』
レクサム『話が長くなる…飯を食いながら話そう…』
私達はそれぞれの席に着く…
ーーー
「お前…ギルドって知ってるか?」
ゼイル『ああ…知ってるぜ。なんでも…仲間を見捨てるような輩も居るとか…』
レクサム『そいつらは…「三つ眼の蛇」と言う…ギルド名だ。俺はそいつらを、ずっと追っている…』
レクサム『もう3年になるな…』
「何故…追っているんです?」
シェルピーが、そう言うと急に暗い表情をしてレクサムがこう答える…
「ある…大切な人を失った。」
そう言い彼は私の方を見た…




