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詩龍のCapotasto   作者: Ask
第三楽章 da capo 「アローガンスムーン」編
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第十三小節 「原質の森林浴」Ⅱ

△▼△▼ △▼△▼ △▼△▼ △▼△▼


「イセリアフォレストの奥地に、()()()()()()と言われる、場所があります。そこでなら、奏梛殿の病状もかなり抑える事ができる筈です──」


△▼△▼ △▼△▼ △▼△▼ △▼△▼



「わ、わたし…原質の森林浴に…捨てられたの」


 一同は驚きと共に、彼女に傾聴する。そう、それは大樹海(イセリアフォレスト)の奥にあるとされる、言い伝え上の場所。スズレは、こんなにもキッカケが早く見つかるとは思ってもいなかった。それは奏梛や胡桃もそうである。この場の誰もが、その言葉が出てくるとは予想していなかった。


「わ、私、元々捨て子で…。原質の森林浴の近くに村があるの。そ…そこで拾われて育てられました」


「続けてくれ」


「わ、私は、ほ、他の人から、脈を受け取って複製する事が出来るって…。だから、そ、それを使えば食べるものには困らないからって、ずっと…」


 複製──。スズレは背筋に嫌な汗が滴るのを感じた。脈の受け渡しもそうだが、それは複製した脈を自身のものにできると言う事。それは、あってはならない事の一つで、この世界の常識から余りにも逸脱している。この少女は一体──。


「──私も複製できるかな…?」


「胡桃は、そういうのはできなかっただろ」


「いや、お二人とも其処じゃないでしょう…。何を呑気なことを…」


 とにかく規格外の二人ではあるが、更に面倒な少女を抱える事になりそうだ、とスズレは頭を抱える。


「良いですか、二人とも。この世界の常識の一つですが、他人が発する脈という力は受け渡すことは出来ません。受け渡す、と言うことは()()()()()()()()を他人から譲り受ければそれすら使用可能になると言うことです」


「白と黒しかないのです──、この世界には既に」


「待ってくれ…俺はグローザと、蒼の脈で繋がって…グローザ、もしかして──」


「う、うん、ソウナの脈──とっても綺麗」


 わたしは、手元に()()()()()()()を照らしてみせると、胡桃とスズレは絶句して言葉を失っていた。


「んなっ…」


「改めて見ると──、驚きを隠せません…」


「わ、わたしこの色、とても好き。優しいしあったかい」


「────」


 胡桃がこちらに歩み寄り膝をつくと、私の目の奥を覗き込んで何かを観察している。彼女もまた、奏梛と同じ匂いのする人──。


「く、胡桃──?」


「よく見ると、少し違う──。奏梛の色と同じだけど、なんて言うか──」


「……」


「──取り敢えず、話を戻すが…グローザ、お前は其処で何かを強制させられてたのか?」


「……」


「言いたくない、か…?」


「ち、違うの、お、思い出したくない事が、ど、同時に頭の中でぐちゃぐちゃに…。い、いや…」


「奏梛、辛そうだよ…?」


「──スズレ、頼めるか」


「わかりました」


 スズレはそう言うと、白い脈を掌に集め、グローザの額にその脈を送り出す。グローザはじたばたと、慣れない脈の流れに困惑しながら暴れているが、スズレはそんな彼女を無視して額に脈を流し込み続けた。暫くすると──、グローザの目元がハッキリと開いて、何か付き物が落ちた様な表情へと変わった。


「何を──したの…?」


「一時的にですが、体の不調を感じない様にしただけです、治療ではありません、あくまでも応急処置のようなものです。これで少しは楽になったのではないですか?」


「ありがとう──。スズレは…お医者さんなの?」


「まぁ、そんなところです。元、ですけどね」


 奏梛はゆっくりとグローザに歩み寄ると、スズレと同じ様に、今度は彼女の額に手を当てて、蒼の脈を灯す。

 本当に綺麗な色だ。この色に包まれると、とても心地いい。今までたくさんの種類の脈を複製させられていたけど、この始めて見る色の力は、そのどれもが違う──唯一無二だった。


「…やはり俺の脈が体内に残っているな。本当に定着してしまっている様だ──」


「こ、この色は捨てたくない…!そのままにして」


「──大丈夫。どちらにしろグローザの体内に流れ込んだ脈を除去なんて出来ないしな」


「そっか…」


 わたしはこの色を手放したくなかった。様々な種類の脈を流されてきたけど──。この色は絶対に手放したくないと思った。わたしの脈の複製は一つずつしか保存できない。この脈にずっと包まれていたい。口元に自然と笑みが──、口角が上がるのを自身で理解すると同時に──、最後に笑ったのはいつだったろうか?


「──グローザ?」


「ううん、なんでもないよ」


「さて──、ではこれからの事ですが…」


「そうだな…」


「グローザ…俺たちはその原質の森林浴に用があってここまで来たんだ。道案内を頼めないか?」


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