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詩龍のCapotasto   作者: Ask
第二楽章
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第二楽章 五小節 「ドラグナド研究所」Ⅱ

 ドラグナド研究所入口にて。薄紫の髪を月光になびかせて手を払う。その背中は頼り甲斐のある大人の女性のそれだ。本当に成長したなと、俺はしみじみとまだ自身の背丈の半分ほどだった志弦を重ねる。


「──奏梛、終わったよ」


「志弦、今のは?」


 志弦は「奏梛の式の応用だよ?」と言って誇らしそうにしている。今行ったのは封印と解除の同時使用による【共振】だ。その場に質量ごと封印し、かつその現象を同時に解除する事で相反する現象が起きる【共振】という目に見えない波紋を利用した簡易式。その場に、大きな揺らぎが起きる事で当てられた対象は昏倒し意識を失う。俺の得意技であるが、本来もっと大規模な破壊を生み出してしまう。志弦はそれを人を殺めない程度の威力に「自分が放った後の現象」であるその効果、規模を巧みにコントロールしてみせる。


「──俺はそこまで緻密な操作は出来ない、志弦ならではの式だな」


 志弦は「本当?!もっと褒めても!」と嬉しそうにぱたぱたとその場で動き回っている。


「これは、俺の出番は無さそうかな…」


「奏梛…?そんなに見られると恥ずかしい…」


 奏梛は気づくと、志弦から目を離せなかった自分に心の中で苦笑し自身を戒める。


「ああ…すまない、行こう」


△▼△▼ △▼△▼


ードラグナド研究所一階ー


「──誰も居ないね」


 志弦が辺りを警戒しているが辺りを見ても入り口の警備兵以外人の気配が無い。志弦が口に手を当てて考え込んでいる。


「何も無いところに警備なんて置かないし…」


「────」


「──志弦、見つけたぞこっちだ」


「隠し通路…まって奏梛、わたしが先に。さっきの共振を利用してこの先をマッピングするから、ちょっと待って」


 志弦が空間に簡易化した式を出して威力調整をしている。俺はその式の構成を把握すると「志弦、ここはこうしたらどうだ?」と言って印を追加した。


「──これでもっと楽に共振を起こせるはずだ」


「…私の式もかなり考えて練ったものなのに、さらに出力調整が細かくできる様に…」


 普段の倍のスピードでマッピングを終え驚く志弦だが、すぐに意識を切り替えて、奏梛に式を使い共有する。


「これは…かなり深いな…下手をすれば地底の龍脈まで届きそうだぞ…」


 志弦から共有された地図に表情を歪める奏梛。奏梛の表情が曇る理由は志弦にも分かっていた。龍脈まで届きそうだという事は、ここで龍脈を吸い上げている可能性があるということ。隠し通路の周りにも、見たこともない機械が多く、おそらくこの先が本命だ。


「──行こう」


「待て志弦、念の為だ。これを」


 奏梛は自分のネックレスを志弦の首に手を回して首元に添える。


「奏梛、これは…?」


「──もしもの保険だよ」


 志弦は、胸元に光る鍵状のネックレスが奏梛の武器をモチーフにしているものだと気づく。


「ん、ありがと」


 志弦は、暗闇の中明かりを指に纏わせながら先導していく。


△▼△▼ △▼△▼


ードラグナド研究所地下一階 培養室ー


 奥に進んでいくと、培養された生物のサンプルが大量に並んでいる大きなホールに出る。


「奏梛これって…」


「人だな…正確には()()()ものだ。人以外にも獣、植物、脈獣も…趣味が悪いな──志弦、大丈夫か」


 志弦は口元を押さえてはいるが「大丈夫だよ」と言って進んでいく。ガラス状の丸い円筒に、サンプルとして名前のような番号が振られている。志弦は酷い不快感を覚えている様だった。当たり前の反応だ。ソノマ機械都市──ここ数年で台頭してきた新興国の一つ。


「人の命ってこんな風に扱って良いものじゃない…」


 志弦は呼吸を整えて、再度進んでいく。進んでいくと更に地下へ降りられる道があり更に階層を降りていく。地下二階へ降りられる道を進んでいくと、突然後ろからものすごい殺気が志弦を射抜いた。後ろには奏梛がいる。なのにどうして後ろから殺気が飛んでくるのか。振り向くと、奏梛ではなくそこには脈獣が──獲物としてこちらを伺っている。瞬時に状況把握に努めようとする。


「いつの間に…脈の動きも何も感じなかった。奏梛は...?さっきまで後ろにいたはずなのに….いや奏梛は余程のことがない限りは大丈夫なはず──まずはこいつをどうにかしないと…!」


意識を切り替え、志弦は対処を開始する。


△▼△▼ △▼△▼


ードラグナド研究所一階 ホールー


 奏梛は志弦の後をついて行っていたはずだが、地下への道を下ると突然この空間に引き戻される。


「へえ…」


 よく見ると辺りに先程までなかったはずの空間式があちこちに刻まれ起動している。


「──実験にでも、巻き込まれたかな…」そう呟くと眼前に黒い影のような靄が現れる。黒い霧が人の形を成し始めると女性を模った。


「──また会いましたね、()()()()()()様」


 そう言うと奏梛の見覚えのある顔に影が変化する。地上で奏梛と揉めたドッドという男の姉──。ソノマの機械都市の騎兵団団長「シルディ」のようなものがそこにいた。


「──なんだ、シルディ…人間辞めたのか」


「ふふふ…わたしは関わらないで、と言いましたよ」


「──そりゃあ、お前じゃなくてリノザの言葉だろう。それに──リノザが泣くぞ。娘が人間辞めてるって知ったらな」


 軽口を叩く奏梛だが、表情に怒りが少し垣間見える。


「イグノア様から頂いた力、剣聖に試せるなんてわたしはなんて運が良いのでしょう…」


()()()()()()()ものは口角をこれ以上無いくらいにあげながら奏梛に切りかかった。


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