第二楽章 四小節 「ドラグナド研究所」Ⅰ
ドラグナド研究所──ここは亡くなったライガン侯爵が最も力を入れていた、天候操作を研究していた場所だ。ソノマ侵攻の折に、一番最初に占拠された場所と聞いている。入り口には、複数の警備兵が辺りを見まわし、研究所を崖上から眺められるポイントを探す。
「ここで、少し様子をみよう…今日は野宿だな。雨もひどいし、雨除けのためにも結界を張る」
「奏梛はなるべく式を使わない方がいいよ、私が張る」
奏梛がへえ、と驚き「頼めるか?」と志弦を頼った。
「もちろん」
志弦は、真剣な表情で式を簡易的に構築していく。「冷え込むし、結界内で火を使うと目立つし…ここで二人の体温を冷えない様に固定するね」と手際よく式を拡大して対象者と自身の体温を封印する。
「──これでしばらくは大丈夫だね」
「志弦、辛くなったらすぐに言うんだ。長時間の展開は負担も大きい」
「うん」
奏梛は周りにある石を積み上げて椅子を型取り志弦を座らせる。
「──少し話を整理しよう。まず双眼の眼の仕組みだが、あの巨大な門から吹く風が龍脈影響下の地域に溜まると、受戒者の紋様を刻まれるリスクがある」
「うん、そしてそのリスクを避けるための方法をソノマは見つけている…って事だよね」
「──そうだ。関係があるかわからないが、ライガンの死後即ゲンディア侵攻をソノマは開始。ドラグナド研究所で天候操作を用いて、風の影響を中和したと発表している」
「──でも、実際は何も変わってない?」
志弦が疑問符をつける。
「そんな事して何の利益があるのかな?風の影響が無いと伝えることが目的ではない…?」
「それなんだが…。おそらくソノマ機械都市…こいつらは龍脈を吸い上げて、それをエネルギーに転換してるって話だが…。おそらく吸い上げたエネルギーを濾過する必要があるんだと思う。俺自身、龍脈と嫌というほど付き合ってきたからな。龍脈から吸い上げたエネルギーは、純粋過ぎるんだ。それゆえに濾過しきれない、残りのエネルギーはどうなっているのか考えた。これは、おそらくゲンディアに降り続けている雨と関係していると俺は踏んでいる。やつら、おそらく龍脈から濾過しきれなかったエネルギーを、ドラグナド研究所の装置を使って雨としてこの地に撒いている可能性が高い」
「──それって…龍脈の膿を雨にして撒いてるって事…?そんな酷い事…!!じゃあ、ゲンディアの人達はみんな、放っておくと脈獣に…!」
「──抑止力として脈獣の街を作ろうとしている…というのが仮説だ。ソノマはここ数年で台頭してきた、新しい国の一つだ。ソノマの現在の国王はソラリスから遣わされたという武官イグノアが来てから、龍脈エネルギーを突然提唱している──タイミングが良過ぎるんだ。おそらく裏にソラリスが関わっている可能性がある」
「──今すぐ止めないと…!ここはルクセリアにも近いし、母様やクガネにだって放っておいたら影響がある!すぐにこの雨を止めないと…生身の人間が龍脈の雨なんか浴び続けたら、どんな作用があるか…!」
「まずは、研究所に忍び込むぞ」
「うん!」




