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詩龍のCapotasto   作者: Ask
第二楽章
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第二楽章 三小節 「双眼華」

「ソノマが、ね…」


「──わたしは母からの伝言を伝えただけです。真意はわかりません…おそらく奏梛殿がこの国に来た以前とは、かなり趣が異なっていることでしょう。それに──ソノマは双眼の眼から吹く風を完全にコントロールする方法を見つけています。このまま…関わらずに居ていただけますか?」


「…」


「──わたしのお伝えしたかった事はそれだけです。それでは、また…どこかで」


 そう言うとシルディは直ぐに席を立ち、部屋を後にした。今後の対策を考えるため一度宿に戻る。


△▼△▼ △▼△▼


「──聞いたよ奏梛君!志弦ちゃん無事に奪い返した様だねえ!」


「ん、女将さん…私は特に捕まったりしてないよ?」


 奏梛はなんだか、見た事ない表情をしている。


「志弦ちゃんに一目惚れした騎兵団長が、嫁の権利をかけて戦ってたのさ!」


「わざわざ志弦の前で言わなくても…」


「え…?」


「おや、志弦ちゃんは知らなかったのかい?」


 「奏梛カッコいい!やっぱり志弦お姉ちゃんが一番だもんね!」と、ユリが喜んでいる。奏梛は表情を変えずに「当たり前だ」とユリを撫でながら答えている。志弦は顔を紅くして、嬉しさで混乱している。


「……まあ、そんな感じだ、ご飯にしよう」


 女将さんは嬉しそうに笑っていて、志弦は頬を染めて顔を伏せている。


「奏梛…私の事考えて…ん?って言うかまって、そういえば加護の式って生涯かけられる人って二人で、そのうちの一人わたしで…これからずっと一緒で…」


「──奏梛くん、ご飯の支度手伝ってくれるかい?」


「もちろんです」


「──わ、わたしも一緒に手伝うよ!」



△▼△▼△▼△▼



 その日の夜中、俺はこの地で咲くことが絶対にない「ある花」を海岸沿いで探していた。


「朝露の光華が咲かないのであれば、代わりに──やはり……か。双眼華…時間がないな…」


 よく見るとまばらだが辺りにかなりの数が生えているのを確認できた。双眼華──。放っておくと溜め込んだ粒子を風に乗せて飛散させ、辺り一体を侵食していく性質のある華。主に受戒者の死後の身体に生えるとされており、この華が咲いていると言う事はこの辺りはもう──。幸い、完全には咲ききっていない様で、まだ粒子を飛散させる前の状態である事を確認すると、この辺り一体のその華が「咲く事が無い」状態へと()()。事を終えて足早に宿へ向かうと、志弦が入り口で奏梛を待っていた。


「──おかえりなさい...奏梛居なくて、ビックリして目覚めちゃった…。夜に急に居なくなるの…いやだ」


「すまない...」


「次はわたしも、散歩に連れて行って欲しい…わたしは奏梛の身体を預かってるんだよ…?」


 志弦が奏梛の服の袖を掴んで悲しそうにうつむいている。奏梛は優しく髪をすいて、そっと肩を寄せた。



△▼△▼△▼△▼



 朝目を覚ますと、奏梛が隣で寝息を立てている。私はしばらく、何も言わずに奏梛の寝顔を見つめている。

クガネが言っていた。奏梛には()()()()()()()()がいた──と。どんな人だったのだろうか?まとまらない思考を続けながら彼の寝顔をまじまじと見つめ続けた。しばらく堪能した後、静かに部屋を出ると、ちょうど起きてきたユリと会う。


「おはよう、ユリ」

「おっはよー志弦!」


「あれ、なんか今日志弦ツヤツヤしてるね」


 ユリがまじまじと志弦を見つめている。


「…ふーん」


「な、なに?どうしたの?」


「ふーん...ご飯、準備しよー!」


 そう言って一階に降りていく。その日の朝──奏梛はいつもより遅い目覚めだった。体調が悪いのかと、こっそり式で体調を確認する。よくはないけど、変化は感じなかった。ひとまずは大丈夫だろう。


「奏梛、食べれそう?」


「ああ、もちろん。志弦の味付けはサッパリしてていいな」


美味しそうに食べながら感想を述べている。


 心配そうに見ていると、横から女将さんが「今日はどうするんだい?」と聞いてくる。奏梛は考えながら「今日は遅くなりますから、自分で夕食は用意します」と告げると、志弦を見て「志弦、今日はちょっと大変だぞ?」と優しく微笑んだ。


「──任せて」


「じゃあ、遅くなるなら戸は閉めておくから鍵をわたしておくさね」


 鍵を受け取ると、志弦にそれを預け女将さんにお礼をする。


「ありがとうございます」


「志弦、この付近にすでに双眼の眼の影響の痕跡があった、あまりゆっくりしていられない。まずは、この雨を止めるところからだ」


「──わかった」


△▼△▼ △▼△▼


 ふたりはまず海岸へ向かい双眼華の痕跡の位置を確認した。双眼の眼という巨大な門から吹く風は、ある濃度を超えている地域には毒となる。それが龍脈の濃度だ。歩きながら龍脈が血栓のように留まってしまっている場所をまずは探す。そこに、本来の生態系を無視した生物や作物が生まれ始める。そこが龍脈の洞穴、この大地の核となる場所へつづくサインだ。だが、先日から痕跡があるであろう場所に、その痕跡が消された跡が残っているのだ。奏梛の式によるものでは無い。人工的に排除された跡とでも言うか──。


「……志弦」


「どうしたの奏梛」


「──これは思ったより大変そうだ…騎兵団宿舎に行こうか。考えたくは無いが…双眼の眼の風の影響下にあるという事実を隠匿しているな...」


「龍脈の洞穴の場所には心当たりはあるの?」


「おそらく──、ドラグナド研究所だ」


「女将さんが、研究所は閉鎖されてるって…」


「──表向きは、だろうな」


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