5 くだんの日
「お、お、お、お、お、落ち着くんだ……!」
その日の夜、俺は自室で机に向かってひたすら同じことを繰り返し呟いていた。
それくらい、今日一日の出来事は強烈すぎた。
地味に、目立たないように生きてきた今までの人生の数万倍の刺激に満ち溢れた、とてつもない一日だった。
「そ、それが、明日も続くって言うのか?」
それって、つまり、デートってことか?
「いや、あり得ない!あんなつまらないスポットにいきなり連れて行くような甲斐性ナシ、加えて会話も満足にできないコミュ障にそんな誘いをするわけがない!」
そうだ。あの喫茶店があまりにも退屈だったから、彼女は俺に"お手本"を見せてくれようとしているに違いない。
彼女はどんなことにも全力投球だ。さっきも言っていたように、この多部ログにも全身全霊で挑もうとしているのだろう。
そんな時にあんな面白みのない店を紹介されたから怒ってるんだ。こんな店のレビューを書いて、満足に単位がもらえると思うなよ、と。
時間も限られているから、土日も惜しんでレビューにふさわしい店を探そうとしているんだ。きっとそうだ!
「理由はどうあれ、まさか土曜日も彼女と会えるなんて……」
ぼうっとしながら、書き終えたラブレターの下書きを保存する。
今日のも中々の出来だったが、正直言って今の俺では冷静なジャッジができない。また後日、しっかりと校正をし直せばいい。
「ああ、早く明日にならないかなあ」
気もそぞろに、俺はタッチパッドを操作してちゃっちゃと下書きを保存し、PCを立ち下げる。
その時、いつもなら入念にチェックしていた『非公開』のチェックボックスは、浮かれきったオレの目には霞んで見えていたのだった……。
EDF6クリアしました。
この主人公は、タイムリープはしません。