空を自由に飛びたいな
「なぁ、そういえばこのダンジョンってどこにあるんだ?」
俺は、ここ最近毎日のようにライムとラビにかまってばかりのティアに尋ねた。
「どうしたの?藪から棒にそんなこと聞くなんて。」
「俺を追放した王様が俺を何処か危険な場所に転移させるって言ってたからさ。まあ全然危険でもなんでもない場所だったんだけどね。」
「何処か危険な場所に転移させる魔道具なんてないわよ。使用した国にある全てのダンジョンの内の何処かに転移させる魔道具ならあるけどね。多分、カズトはその王に嘘を吐かれたんだと思うわ。」
じゃあここはゼクト王国なのか。あれ?じゃあなんで王様は俺に何処かの危険な場所に転移させるだなんて嘘吐いたんだ?
「多分カズトを追い詰めたかったんじゃない?ゼクト王はカズトのこと大嫌いだったようだし。」
陰湿なことしてくるんだなあ、王様のくせに。
「でも、ダンジョンが危険だということは変わないわよ。カズトは偶然、私が作ったばかりで全然危険じゃないダンジョンに転移してきたから良かったけど、もしも普通のダンジョンに転移してたら簡単に殺されてたかもしれなかったのよ?」
そうだったのか。良かった、転移したのがこのダンジョンで。
もし、このダンジョンに転移してこなかったら、ティアとライムとラビに会えなかったどころか、今頃は魔物のエサになってしまい、そのまま魔物の腹の中にいるだろう。
さすがにそんな結末はごめんだ。
「それじゃ、最初の質問に戻るけどこのダンジョンはゼクト王国の何処にあるんだ?」
「このダンジョンはゼクト王国にある迷いの森という所の一番深い場所にあるわ。一番近い町でもここから60kmほど離れているわよ。」
そんなに離れてるの!?マジかー、いつか町に行こうと思ってたのに……
「なんで町に行きたいの?食料とかなら別に町まで行かなくてもPを使って取り寄せれば大丈夫よ?」
「せっかく異世界に来たんだからこの世界の街並みを見たかったんだ。」
「ふーん。あ、だったら魔法を教えてあげようか?」
「どんな魔法?」
「空を自由自在に飛ぶことができる飛翔魔法。因みに空気抵抗とかは魔法パワーで感じないから目が痛くなったりとかはしない超便利な魔法よ。」
空を飛ぶ魔法か…… 絶対に覚えたい!
「なんで?そんなに町に行きたかったの?」
「それもあるけど、一番の理由は空を飛ぶことができるかもしれないからだな。『ドラ◯もんのうた』でも言ってただろ?『空を自由に飛びたいな』って。俺が住んでた地球では空を飛ぶという行為は誰もが子供の頃に1度は考えたことがあるはずだ。」
「へぇー、地球人って子供の頃にそんなこと考えるんだ。」
「そんなわけで早速俺に飛翔魔法を教えてすれ。さあさあさあ!」
「分かった!分かったから顔が近い!!」
おっと、ごめん。魔法を使うことと空を飛ぶこと、この2つが出来ると思うとついつい興奮しちゃったようだ。
「じゃあ、まずは魔力を体の全体、細胞の隅々まで行き渡らせて。」
魔力を体全体…… 細胞の隅々…… こうかな?
「あら、なかなか筋が良いじゃない。」
それで次は?
「魔力を体全体に行き渡らせたら、今度はその魔力を体の上の方にゆっくり移動させなさい。」
えーと魔力を体の上の方へ…… うわあ!な、なんか体が浮かび始めた!
「体が浮かんだら、その魔力を再び体全体に行き渡らせなさい。そしたら浮かび上がるのが止まるわ。」
再び魔力を体全体に…… よし、出来た!
「後は自分の進みたい方向に魔力を行き渡らせれば、その方向に進むわよ。自由自在に飛ぶためには練習が必要だから頑張ってね………なんで泣いてるの?」
だ、だって飛んだんだよ!?空を飛んだんだよ!?あまりの嬉しさにおもわず泣いちまったよ。
「とりあえずおめでとう。これで空が飛べるようになったから町にも行けるようになったわよ。」
「じゃあ明日、町に行こう。」
「良いわね。私も久しぶりに人族の町を観光したいし、最近ジャンクフードばっかり食べてたから普通の料理も食べたいわ。」
こっちの世界の街並みはどうなってるんだろ?明日が楽しみだ。