1-9 別離
よろしくお願いします
チュパチュパチュ。
シャシカリカリッポ。
チーシーパクッ。
パキッチューチュー。
アムングングゴクン。
シャリシャリボトム。
「んで二人の親父さんは借金の証文と娘を交換ってことね。」
「ペロペロング、そうですにゃ。」
「ドンドンドンゴクリ、なのですぅ。」
(とりあえず全員、横穴収容所に監禁したんだが、娘2人はそれよりカニって感じなんだよな。わざわざ話を振ってみたのに、いいのかな。)
(しかしカニって30分の沈黙が許される食い物だな。嫌いな上司に誘われどーしても断れない場合のおすすめスポット、カニの食い放題にけってー。)
全員、カニを食べる手が止まらない。
チュパチュパチューーーー。
シャクシャクングッ。
チュッパチュッパチュー。
シーシーハーハーシーシーハー。
「出来たよ~茹でガニの追加と、カニマリネ、焼きガニ、カニ黒酢まだ作ってるのでゆっくり食べてよねっ!」
「黒酢すっぱ。」
「茹でたのもいいけど焼いたほうが美味しい?」
「酢は体にいいんだぞ、殺菌効果もあるし。」
「これ最後ね、カニフライ、カニ天ぷら、カニから揚げ、カニ刺身、カニ鍋、カニ汁、カニサンド。あとソースはディルと海草とグイ、あと塩ね。」
正方形のテーブル、一辺は3人掛け。
取り囲んだのは11人、テーブルには食べきれないほどのカニ料理の山。
3匹をほぼ使い切った量なのだが、次回は2匹で足りそうである。
エイトは思った。(まだ2000匹以上+ボス、売れないかな?)
(なんか最近みんな丸っこくなってる、気がするんだがこれは女子には禁句だったかな?)
その後もカニの饗宴は続いた。
***
翌朝、7時。カニ疲れの11人が顔を合わせる。エイト先生は話を始める。
「んじゃ緊急のミーティングを始めますね。」
「「「はい、よろしくお願いします。」」」
「初めて会ったときのこと覚えてるかな?その時言ってたんだけど、魔法覚えて格をあげてって。」
「「「「「はい、覚えてます。」」」」」
「みなさんの頑張りでそれら二つをクリアしました。おめでとうございます。それであとは北へ向かうだけなんです。いつ行きます?」
「あ、あの先生いつでも行けるんですかにゃ?」
「エイトあなたどうやって行くつもりなの?」
「今からでも行けますし、行き方はあの変な荷車に乗って行こうかと思います。」
「えっと、僕が気になってるのはみなさんの家族とかにあいさつすることと。まあするのかしないのかと言うことも含めてね。それに加えて横穴収容所の囚人の処分ですね。所謂、立つ鳥跡を濁さず的なね。」
それから誰となく相談が始まり、女子特有のワキャワキャトークに花が咲いている。
急にハナさんが立ち上がって言う。
「エイト!見せたいものがあるので私の部屋で話を聞いて!!」
「いいけど、他のみんなは話してて、あと将来こんな仕事したいとか、今後どうしたいとか。んでテレストさんはこれに書き留めておいて。」
「わかりました。」
***
その後エイトはハナさんと向かい合い椅子に座っている。どこか緊張したハナさんは、何か赤い革製品を持って、咳払いしたり唸ったりしていた。
ハナさんの部屋は二階だ。窓が無いので圧迫感がある。
(特にハナさんだし。でも最近あまり怒られてないな。)と考えているのはエイトである。
洗ってない服やエプロンが重ねておいてあったり、なんかいろいろ出しっぱなしでハナさんお片付けしましょう。
「えとね、これなんだけど。」
エイトは手渡された革製品を見て、いろんなことで吃驚していた。先ずその製品の出来栄え、そこに入ってる文字の書かれた何か、ハナさんのお母さんの絵の綺麗さ、そこにある小さい文字、木の皮?見たことのない銀貨や銅貨、そのあたりで口を開きたくなった。
「何これ?」
ハナさんは他の星から来た20歳の女の子。その星は文明が高く、みんな賢い。これは定期入れ、免許証、学生証、通貨、レシート、ポイントシート、入場カード、割引カード、ガソリンカード、電車のカード、会員カード、カード、カード
「もうええわっ!」
エイトは思わず立ち上がり、口走る。
「グースの言ってたことは本当だったのか?」
「何言ってるのよわたし、エイトにも言ったでしょ?」
「フム・・・。」
「また!覚えてないの!!ねえ、エイトってバカなの?」
(なるほど話し込んでみると、ハナさんとはずいぶん行き違いがあった。僕とグースの前で、モノは見せずに話をしたそうだ。グースは相槌を交えつつ根掘り葉掘り聞いていたらしい。僕は頭を垂れて俯いてハナさんは真剣に聞いてくれてると思い。僕はただ寝ていた。)
エイトは俯くと大抵寝ている。どこでもいつでも。3人以上人がいるともう話を聞いていない。どこか一点を見つめて、考え事をする。次はどうやって兎を捕まえようとか、罠はどんなのがいいだろうとか、皮を剥ぐときに傷があった場合、どう処置をするべきか、とエイトの悩みは多いのである。
「あまり話したことも無いのに、やけにフレンドリーな人で厚かましいな。と思ってたんだよ。」
「あんだけ長く一緒に過ごしてるし、友達だと思ってるわよ。こっちは・・・」
「あれ、怒ってる?」
「馬鹿じゃないの!ふつう誰でも怒るでしょ!!!!」
「じゃあ今からは友人第二号ということで!」
「なあ友人第二号、僕、喉乾いてるんだけど。」
「あなたねぇ・・・」
(なんかハナが嬉しそうだ。やっぱ宇宙人だから変なのかな。その後もハナの作った、ほんのり酸っぱくてほんのり甘い水を飲みながらカバン、大学の教科書、ノート、筆入れ、シャーペン、ものさし、消しゴムたくさんのものを見せつつ説明してくれた。)
「ノートと筆入れとその中身全部売ってくれ!」
とエイトはお願いするのだが、ハナにとって大切なものなのだ。そこで代案を教えてくれた。
「もしどーしても欲しいなら、私がこっちに来るときにネット検索っていうスキルをもらったのよ。」
「ふむふむ、おれのワールドディクショナリーに近いって言ってたやつだろ?」
「まあそうなんだけどね、その中にネットショッピングって言うのがあるんだけど、お金があれば買うことが出来るようになるの。それがさ預託金っていうのに1,000万ゼニ必要なのよ・・・絶対無理だし、多分買うときも3倍から5倍になってるのよね。一生無理。」
「あのさ、ハナ・・・あるぞ。」
ハナもネットショッピングを使いたい。これまでに一生懸命貯めた金額が8000ゼニだった。ハナは机に左の肘ついて、頭を抱えたポーズのまま、目だけでエイトを睨んでいるのだった。
(こわひ・・・。脳動いてるのかな?)
「あのさ、ハナ、おれ持ってるぞ。」
「エイト様、それは使っても良いものであらせられますか?」
(こいつ、なんかまた面倒くさくなってきた。)ハナは時々おかしくなる。エイトは何度かそれに遭遇した。変な服着て歌って踊ったり、食べながら泣き喚いたり、ポーズを取りながら叫ぶのである。
「あらせられますね、今のところ使う予定が無いので。」
「やったー!エイト様大好き。チュチュチュ。」(やっぱ変だろ?)
「やめろや!ハナ!お前マジ中身20歳なのか?」
「「ということで早速二人で金貨100枚ぶっこみますー!!!」」
「「ワフーイエー!」」と奇声を発しながらハナにあわせてノリノリで、
エイトの希望はニンジン筆記用具一式、羽毛布団5点セット、お泊りセット、お食事セット22個、春植え野菜の種いっぱいなど
ハナの希望は日用品、ケーキ11個、アイス11個、チョコ11個、クッキー11個お菓子いっぱいなど。
しばらくして我に返ってエイトは思った。
(ハナの話っていったい何だったのだろう?)
そして、1階でみんなを待たせてることを思い出したのだった。
***
3名が親御さんにお別れするそうなので出かけた頃。
エイトは、収容所のお姉さん二人にこの家の管理を任せた。名前はキキとララ、頭はモヒカンである。
ネットで買った種、保存してた芋などを持ち、収容所のその他33名をレッド達が追い立てて行進した。行先は街に隣接して用意してあった畑10ヘクタールである。
彼らへの判決はエイト裁判長が下した。畑で強制労働、期間はすべての野菜が育つまで!それに加えて損害賠償金100万ゼニとなった。
200メートル×500メートルの長方形で全周囲は魔物除けで土壁を配置した。井戸は土魔法で打ち抜き、屋根付きの釣瓶汲み上げである。馬車が通れるほどの通路が縦横無尽に走っているので、思ったほど作付面積は多くない。とエイトは思っている。
早速、作業にかかる。収容者は3班に分け、1班火で灰を作る、2班貝殻を焼く、3班芋を切る。
その間に僕と人形8体は鍬で畑を耕す。ジャガイモ、ニンジンはやや深め。トマト、ピーマン、キュウリ、ナス、ほうれん草は浅め。
畑の周りに人が集まりだした。エイトは皆さんを集め話しかける。
「こんにちは、みなさん。今畑で作業している人たちは僕に借金があります。お金が無いのでここで野菜を育てて、それを売って返済します。
なのでここの野菜は自由に持って行ってかまいません。このぐらいなら払ってやってもいいという金額を、このお賽銭箱に入れてください。
もしみなさんに迷惑がかかるようなことがあれば、僕に変わって、ここの責任者のこの馬面兄貴が聞きますのでなんでも言ってください。
以上です。ご清聴ありがとうございました。
引き続き作業します。」
その後も貝で作った石灰を全体に巻き、最初に植えるのは、教会で育てていた野菜たちだ。そのあと芋には灰をまぶし植える。種をまき土を被せる。そして、
ジャジャーン!艶消しの銀色をした、最適のジョウロ
入り口横に休憩所兼倉庫を建て、全体清掃と片づけをし農作業を終えた。
馬面兄貴は意外と頑張っていた。坊主頭だけどいいやつかもしれない。
***
昼も近くなったのでメンバー11人、収容者35人で飯を作ることにした。農場の端っこに30メートルの竈を作りどんどん薪を焚べた。
鍋、網、鍋、網と竈に並べたのだが、足りないので近所で借りた。ご近所さんもどうせならご一緒に!と誘ってカニ三昧と肉三昧に興じた。
足りなかったらと、魔物10匹、カニ5匹を置いて、みなさんにお別れをした。
「北に行くから~皆さんもお元気で~!」
ありがとうございます