表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/56

1-8 カニ三昧

よろしくお願いします

「ここが本日のキャンプ地ですね。」

(なんか一人で移動したときはもっと遠かったんだけど、大勢でワイワイ、ガヤガヤしてると早いな。)


ここはV字になった入江で、東に海が広がっている。北に砂浜、南に岩場があり、内海となった部分は穏やかで凪いでいる。


「それではここで、格上げをします。これは魔物を倒して格上げポイントを稼ぐことです。そしてこの格上げポイントは攻撃行動をした全員に分配されます。ここまで大丈夫ですか?」


「「「「はい。」」」」


「それではみなさんは横殴りというのをご存じでしょうか?」



女兵士のカリナさんに聞いたことなどを説明し、


「ということで、出来るなら仲間以外が戦闘している敵は回避しましょうね。本日は僕のからくり人形が戦っている敵に対して、積極的に横殴りをしてもらいます。レッドなどは戦闘時間が短いのでどんどん攻撃を当ててくださいね。今からは魔石回収と死体回収はしなくていいです。」


「それでは、カニ三昧!始めます。スタートッ」


(前回下調べで来たときは引き潮のせいか、敵の数もそうでもなかったが、なんか4倍ほどいるような気がする。)エイト先生に不安がよぎる。


「あっと、フリーな敵は攻撃すると自分に向かってきますよ。気を付けてください。」


と話しつつ、狼獣人のドーリスに向かって走るサウスポークラブをサクッと片付けた。




「今日は格上げが目的ですので素早く当てることを重視してください。なるべく魔素を節約して、なるべく最小ダメージで。」


「自分の格が1ランク上がると、魔素は満タンになりますので、最初のうちはきっと使うほうが追いつきません。」


エイト先生は邪魔になる死体を片付けつつ、尽きないカニに一層不安を感じていた。


そして終了予定の16時に近づいて来たので、鑑定で確認する。その頃には全員50格を超えていて、全員魔導師系職業となっていた。


(むむむ。マジかよ!いくらこのあたりでは、最強の敵を用意したからと言って、こんなに早く格上げが目標値に達するとは・・・。)


エイト先生は期待以上の結果にやや困惑していたのだが、(格上げってチョロいな)と安易な考えになっていた。




「みなさんー、そろそろ帰る時間なので集まってもらえますか?」


「すこし試したいことがあるので班分けをしますね。1班テレストさん、ハナさん、タチアナさん、続いて2班アントン君、ゾヤさん、ドーリスさん、最後3班残り4人」


「名前呼んでほしいにゃ」「んだにゃ」「んだにゃ」「ブー」




それは無視して、そそくさと話始めるエイト先生!


「じゃ1班から僕が順に指を折って5つカウントするので、手がグーになったら一番手前のカニに魔弾撃ちこんでください。」


そして右手で5、4、3、2、1、0で、3班まで終えて、エイト先生はちょっとビビっていた。なぜなら全員が朝のミニテストをクリアしていたのである。勿論着弾範囲も目の間を指示している。点数をつけるなら最低のグースでも33点は出てるとエイト先生は思った。



「みなさんおめでとうございます。」


「え?」

「何でしょう??」


みなさん、鳩が豆鉄砲を食らったような顔で目をパチクリさせている。説明すると、安堵の声と嬉し泣きで咽ていた。


迷ったが、現在の格と職業を個々に告げると、皆一様に喜んでいた。


「あの・・・みなさんには以前、槍士とか調理師、裁縫師、彫金師、醸造師などの方がいたんですが大丈夫なんでしょうか?」


「53格のがすごいよねぇ」とか「天職でもなかったし大丈夫」とか

うむ、大した問題ではないようであった。


***



じゃあ、そろそろと言って、帰路について話してるとき、海に背を向けてるエイト先生の目の前で皆が海を指差し、青ざめている。エイト先生が振り向いて声を発した。


「全員で押さえろ!」


とからくり人形に指示を出す。するとそこにいるからくり人形は10体いました!!


「じゅ、じゅ、じゅううう!」


と、声を裏返して取り乱したエイト先生だが、今はそれどころではない。



ポーンの片手剣レッド、槍ブルー、斧イエロー、弓グリーンの4体だった筈なのだが、

ポーンの両手剣シルバー、刀ゴールド、片手棍ホワイト、鎌ブラック、ルークRとルークLが追加されていたのだ。


やはりハナさんの言うことが正しいのか?と思案するエイト先生であった。「絡繰り師だと、そうね、操れる人形が増えたり、人形の武器や装備が強力になったり、必殺技を使ったりとかなるのかもね。」ハナさんは言い当てていたのであった。


更にハナさんはエイト先生に言う。「もちろん、攻撃すると武器のスキルは上がるんだけど、他にも攻撃系のスキルって言うのがあるの、例えば筋力を表すSTRだったり、器用さを表すDEXなんかだけどね。攻撃系の他には防御系や魔法系もあるの。これは人形もそうだけどエイト自身も上げないとダメね。」そうしてエイト先生は逃げ帰ったのだった。



えっと・・・、10体のからくり人形にも驚いたエイト先生だが、今はそれどころではなかった。理由は今まで戦っていたカニの5倍はありそうな、でっかいカニ。

そうカニのボス、名前はファイアサウスポークラブが現れたのだった。


(前衛5体が足止めして、後衛3体が補助・・・んとルーク2体はここで何してるのだろう?)


とエイト先生が思案中、それはいきなり飛んできた!大カニの左爪に纏った炎である!!


全員に緊張が走る。エイト先生は生徒全員を集め、一気に範囲回復魔法をかける。炎で焼けて痛そうだ。魔法防御もしておいた。


「固まってたら攻撃の的になるので、散開して魔弾よろしくー」


「「「「「了解です」」」」」


「レッド、先に左の大爪落とせ!」


すると、からくり人形5体の前衛が5回くらいの攻撃で大爪は落ちた。それでも20回から30回ほどの攻撃が必要だということである。大爪を破壊した時点でエイト先生は安堵した。この大爪だけで様々な攻撃をしてきたのだから無理もない。振り回す近接攻撃でいつもダメージを受けない人形たちが被弾する、腕が変な方向に曲がっているものもいれば、銅や頭に傷を残された人形もいる。振り回して炎の遠隔攻撃もある。地面を叩けば、立っていられないくらいの地震を周囲に起こす。




しかし名前にちなんだ左の大きな爪を落とすと、ちょっと強めの大きいカニに成り下がったのだった。


あとは全員で袋叩き、体力があって少々時間はかかったが討伐に成功した。




全員の称号がクラブクラッシャーから、炎のサウスポーに変わっていた。


「みんな怪我はない?ダメージ受けた時は、正直、先生、半泣きだったよ。」


実際のところエイト先生は泣いていた。


「「「「「私たちは大丈夫です。」」」」」

「「「先ほど治して頂きました。ありがとうございます。」」」



倒したカニたちは、ファイアサウスポークラブを含め、すべて保管庫に入れた。


「はーい、じゃあ帰りますか?」



と言うや否や、四輪車?四つの車輪に細長いお皿を乗せたような乗り物が出現するのだった。


(みんな何故、そそくさと乗り込んでいるんだろう?)


そんな疑惑を持ちつつも、仕方なく乗り込むエイト先生。そして左右に長椅子があるので、奥から向かい合って座っていくのであった。


10人のメンバーと9体の人形が乗ると動き始める。


(あれ!人形が1体足りないな・・・。)


まだまだエイト先生は思考の渦の中なのに、その車はどんどん、道に沿って進んで行く。足りない人形はどれなのか?1個1個絞っていく。


(あ、わかった、これってルークなのか。)



(そういえば戦闘中何もせず、ずっと僕の近くにいた。


そう考えると戦闘外で活躍するってことで、それが移動ってことか。)





「いろいろいろいろ~♪

いろいろいろいろ~♪


わからないことがある~♪


しかたないしかたない~♪


考えても~♪答えなんか出ない~♪


だって知らないのだもの~♪」


適当ソングを口ずさみ、エイト先生は変な乗り物に揺られてキョドっていた。


ハナさんはエイト先生のことを、何その変な歌!何この変な乗り物!という目をして見ているのである。




そして驚きのまま、エイト先生ご一行は秘密基地に戻ってくるのであった。




すると、エイト先生の目に見たことのある人が、待っているのであった。


「こんばんは、どうしました35人も集まって。しかも髪型変えたんですか?かっこいいですね。」


まさかの馬面兄貴、坊主バージョンだった。


「お前だろ?」


(何のこと僕は知らないよ。という芝居は出来ていただろうか。スキル、ポーカーフェイス200万ゼニで買います。)


「そういえば僕、報酬まだ貰ってないんですけど。」


「金庫は空で武器も無くなってたんだよ。」


「ありゃ、空き巣に入られたんですか、じゃあ僕の報酬はどうやって払うのです?」


「うるせー糞餓鬼、無事で済むと思うな!!」


と言いつつ切りかかって来たので、躱しつつ




「全員戦闘配置、物理防御!魔弾は足元に当たらないように撃ってね、まあ当たってもいいけど。人形軍団は敵を殺さず昏倒。」


と言って、エイト先生は敵味方の攻撃を見極めつつ、ふと思う。(この街って狭いよな。)




「あ、知り合いとかいる?」


「・・・あの言いにくいんだが、あの、親父がいるんだにゃ。」

「・・・うちも、、、父いますぅー。」


(なんだと!ダフネさんとドーリスさんのお父様いるなら、先生としては挨拶するしかないな。)


(まあまあ父親参観みたいな。)


「それで、ダフネさんとドーリスさんの親父さんはどこに?」


「ダフネ父はすでに脳震盪でピクッピクッだにゃ。」

「うちの父は・・・倒れたままぁ、まったく動いてないですぅ。」




「1番、大きな地震で岩が落ちたと嘘をつく。

 2番、正直に菓子折持って、平身低頭詫びの一手。

 3番、全員殺してカニの餌にし何も無かったことにする。」


「ダフネさん、ドーリスさん、1、2、3から選んでください。」


「「大丈夫です。」」


「じゃあさじゃあさ、僕の偽物が現れて悪いことしてたので、僕が助けたってことにするか?おーい、聞いて聞いてー。」





お読みいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ