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1-5 流されて

よろしくお願いします

いろいろいろいろ~♪

いろいろいろいろ~♪


わからないことがある~♪


しかたないしかたない~♪


考えても~♪答えなんか出ない~♪


だって知らないのだもの~♪


適当ソングを口ずさみ、エイトは元気に歩いている。人として決して壊れたわけではない。


エイトはいろいろ考えることが多すぎた結果

解らないもの!は、とりあえず保管庫に入れる!

ということを覚えた。




今日は、朝起きて口を漱いでグイの実を口に入れる。レッドに剣を渡す。


そう!レッドが剣を持っているのだ、一振りで終わるはず。


そのあとは早かった、レッドが出合い頭に切って捨て、魔石を死骸の上に置いておく。


エイトが魔石と必要な死骸だけを保管庫に入れる。流れるようなチームワーク。


行軍2日半の道程を1日で帰還したエイト。


「ウォオ 怒りのデスロード マックスのV8が唸るぜぇーー!」

「デスゾーン大返しぃいいい 馬面ミツヒデホンノウジで待ってろ!」

「ここが魔の七区のおお、心臓破りの坂かあああー!」

「僕の後ろに道程はできなーい!僕の後ろには血糊はできる~!」

「これはドーパミンそれはアドレナリン全部まとめてランナーズハイ!」


と、訳の分からないことを発しつつ、エイトは燃え尽きていった。


***



そんなこんなで懐かしい街が、エイトの目にも見えてくる。


外から街を見たことのなかったエイトには新鮮ではあった。が、見た目は残念だった。


もう夕食の頃ということもあり、いろんなところで煙が上がっている。


廃材の山に立ち昇る煙、なんだか火事を消し終えた被災地にしか見えなかった。


巻き上がる粉塵とか砂埃も、なんか体に悪いように思えてくるエイトであった。



もうすぐ出発して北へ行こう!エイトは更に思いを強くしつつ教会に入っていく。




ただいま、と言う間もなく、エイトを見つけたハナさんが口を開く。


「え!あ!エイトなの?生きてるの?もうあたし心配で心配で!うぇーん。それで人に心配かけて、どこ行ってたのよ?何やってたの!なんですぐ帰ってこないの?え!この服何?新品?いいじゃない!買ったの?どこ行ってたのよ??靴も買ったの?どうして手袋!そうよ!隊長さんはやってくるし、女の兵士さんも来てたよ。またあなたも行方が分からないって言うから、今人集めようって話してて、なんで帰って来たの?怪我は??」


(あ、あれ、あまり言葉を交わしたことも無いと思うんだけど、感情が酷いことになって、喜怒哀楽が滅茶苦茶で、でも心配してくれてたのはよくわかった。)


そんなことを思いつつ、エイトは昂るハナさんを宥める。


「えっとハナさん、一度落ち着こうか。」


と教会の長椅子に座らせると、ちょうど低くなったハナさんの視線にレッドの持つ剣が入る。


「け、け、剣。これ剣じゃない。なんで剣が一人で立ってるの!?どうゆーことよ!ち、血?これ血なの?」


立ち上がったハナさんの大騒ぎが、また始まりそうだったので、まあまあまあと、口に水の入ったコップを押しやり座ってもらう、エイトだった。


既にこの教会にはグースとハナさんの二人しか残ってないらしいこと、子供たちは里親を見つけたり、丁稚の奉公、養子、マクジル王国内の教会など、いずれにせよ北へ向かったことなどを、グースが説明してくれた。


子供達の行く先がどんなところか知らないけど、北に行くのは正解だと、エイトは喜ばしく思った。





一息つき、二人が落ち着いたところでエイトは口を開く。


「僕の今までの経緯の説明って、必要かな?」


「「当たり前だろ(でしょ)」」


お前何言ってるんだ。みたいな感じで突っ込まれてすこしたじろぐエイトだった。


(まあグースはこの世にたった一人しかいない、友人だからわかるんだけど、ハナさんとこんな近かったっけ?)と心で思いつつも説明を始める、


「かくかくしかじか・・・」


エイトは、かなりかなり掻い摘んで説明した。


「ということなんだ。」



「じゃあエイトがこんなことになったのも、その馬面兄貴のせいってことなの?」


「まあそうなるよね。」


「「むむむ」」


ハナさんもグースも、エイトのために怒ってはくれるのだが、結局、何もできない二人は項垂れるしかなかったのである。




「まあそっちは、街を出る前に、自分で何とかしようと思ってるから気にしないで。」


「えっエイトは街を出るの?」


ハナさんは何言ってるの?と言わんばかりに声をあげる。


「そのつもりなんだけど・・・。」


「いつ行くの?」


「今夜のつもりなんだけど。」




なにかハナさんは考え込んでうーんと唸りだした・・・。




「それでグースは、これからどうするの?」


と唯一の友人グースにエイトは尋ねるのだった。



・・・ ・・・ ・・・


「しゃべれよ!」


「む、考え中っす。」


(まあグースはきっと、何も考えていない。いつものことだ。)


エイトはグースのことを受け身超人だと日頃から言っていた。俺はこうしたいとか俺の考えは違うとか、まったく言わないのである。だから他の人にも強要することがない。


(だからだろうなあ、グースといると居心地いいのは。)


そんなことを思いつつエイトは言う。




「そういえばさ!僕、兵士さんに教わって、食べることの出来る魔物を山ほど狩って来たんだけどさ。」


(あら二人が嘘つくなって目で僕を見てくる・・・。)


それはそうだろう、今までは兎狩りが限界のエイトである。それが魔物を山ほどなど、もっとましな嘘は無かったのか、と二人は思うばかりである




「じゃあ出すぞ?」


「エイトさ、その剣や、服のこと言ってないよね?」


(あらハナさん、意外とよく見てる・・・)



仕方なく、端折っていた、格上げでパペットマスター148格のことや、スキルや宝箱の装備のこと、骸骨戦士のことなど、思いつくすべてをエイトは話した。


ハナさんは、チートじゃないとか、ストレージやマップも?国ごととれるんじゃない?と呟いていたのだが、エイトには理解できるはずも無かった。


そしてエイトが理解できていないと思ったハナさんは教えてくれた。


「エイトが上がった格のわりに強さを感じないのは、チートだからかな。チートというのはまあ、いかさまの事なんだけど。ずるして格を上げた。あーそんな顔しないで、じゃあ、頭を使って格を上げた。ってことなのよ。本来なら剣で倒すなら剣のスキルも上がるだろうし、エイトだとからくり人形だっけ?それ使って敵を倒すなら、からくり人形のスキルや力なんかが上がる訳よね。でもそこが上がってないから今のところ、限度枠は拡大されてるんだけど、中身が追いついてないってとこね。」


そう言うとハナさんはからくり人形に興味がわいたのか、こんな大きな剣どうやって持っているんだろ?とか物理的に比重が、とか再びエイトには理解できないことを呟いていたのだった。


しかし、たくさんの質問をされたエイトだったのだが、最後まで二人とも、まだまだありそうだなと、いろいろ疑っていたのだった。



そしてエイトは保管庫から出していろいろ見せたわけなのだが、(あれだね百聞は一見に如かず。ってこういうことだったのね。)とゲン爺に教えられたことを再確認した。





まあ一人なら少なくない金貨もあるし、肉売ったりしてもお金はある、マクジル王国への道中もレッドに助けてもらえば、安全かなあとエイトは計画していた訳だが事態はエイトの思ってないほうへ、展開していくのだった。


***



「明日には出て行ってくれって言うのよ!馬鹿じゃない!!もう、なんか腹立つよね。まあ、持って行けるものは持って行っていいって言ってたし、根こそぎ持って出るわ。あいつ、感じ悪いしいー。くっそー。」


ハナさんとグースは大人の人に出て行ってくれ!と言われたのだ。ゲン爺の教会はその人からの土地と建物を借りていた。それに二人以外の子供たちの身の振り方も決まって出て行った。なるほどそれなら仕方ないとグースとエイトは思ったのだが、ハナさんは違っていた。


ハナさんが悪いこと考えています。




(でもね人を動かす力って凄いよね。僕なんて丸一日走って戻って来たんだよ、つまりへとへとってことなんだよね。)


(横になるとぐっすり眠れると思う。みんなよく言うよね、泥のように眠るとか、丸太のように眠るとか、あと死んだように眠るとか。僕は今ここに究極を思いついたよ。)


(ジャジャーン溶けたように眠る!)


(ま、まあそれはいいけど、もちろんグースも魂の友と無事を祝い語り合いたいはずさ。もう二人の足は部屋に向かって半歩出てたからね。


それをさ、180度捻じ曲げての引越だと。九回裏ツーアウトから打者一巡して9点入れて大逆転くらいすごいね。


え?お前誰と話してるんだって、それは勿論エイトBさ。エイトAとエイトBの語らい、人生を2倍楽しむ方法の1つに書き込んどくか!)




エイトの荒ぶる心は捌け口の無いまま、自分の殻にこもっていく。




ということで三人は、夕日の沈む中、お引越しをすることになった。


足取り重く、てくてくてくてく歩いて着いた先は!!


(なぜここ?????)エイトは思った。





(あの・・・ここ僕の秘密基地というか、以前の住居。)


エイトの驚きは突然にやって来た。


「ハナさんなんでこの場所知ってるの?」


ハナさんはあいつがゲロった。と言わんばかりにグースに視線を向けたのだった。


正面から見ても見つからない、いいカモフラージュの木と崖のおかげだ。ここぞという場所にエイトが時間をかけて作った、横穴式住居、所謂、人口洞穴だった。


すかさずグースの右腕を後ろ手に取り締め上げる。



「なあグースくん、ケツバットと坊主頭どっちがいい?」


「ケツっす。」


(あ!)と、思ったが遅かった。今やエイトは148格パペットマスター、その蹴りは強すぎた。グースは事後、二度見し、やり過ぎだと抗議の目をしていたのだった。


グースはケツを強打し路傍の雪に頭から突っ込んでいった。夕刻の雪は固いようで右の鼻から血が流れていた。



久しぶりに訪れた我が家なのだが、なぜか既に人が住んでいる!ことでエイトは静かに怒っていた。


(5人なのかな?あ奥にもいる、6人?しかも住んでいる?)



説明が欲しいと言わんばかりにハナさんを睨みつける。それが今のエイトの怒りをぶつけた結果だった、そしてハナさんは言う。


「あーわたしエイトの怒った顔初めて見たかも~。」



中で座って話そうというグースとハナさんに、背を押されつつムスっとした顔で席につくエイトだった。まあまあまあまあと、あやす二人を見ているとなんとなくエイトが悪い感じになっていくから不思議だ。




「それでね、私たちは共同生活をしようと思ってたのよ。」


「ここで7人で?」


(おっといきなり相手の土俵に上がってしまった。まだまだ僕は子供だ。)

と10歳エイト君は思った。


「えっとあと2人追加すると思うのよね、だから場所はもっと広いところ探さないといけないわね。」


「そっか、これから大変だね。」


エイトは少し安堵した。(なんだ出て行ってくれるんだ。)と思ったからである。


するとハナさんはキッとエイトのほうを見て言うのだった。


「エイトも一緒よ。」




(嫌いだわーこーゆー人、なんか頭ごなしに・・・。


あれっ、やっぱそうだよね、間違いないと思う。これが伝説の


ジャイアン。)


エイトは苦笑いしていた。結局強い力には抗えない、そんな大多数の中の一人、エイトなのだった。





読んでいただきありがとうございます

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