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5-9 オゾン

「ハナ!なんで居るの?」


ハナは疲れが残っていそうな、思い眼で言う。


「だってもう食材無くなったし、どこの倉庫も空っぽよ。」


エイトは驚き言う。


「えええ!あんなに備蓄してたのに!なんでよ!?」


「あたしに言っても知らないわよ!あんたが次から次に人増やすからじゃないの?」


「わたくしもそう思いますわ。」


「「アビー!」」


エイトとハナは驚いた。朝早くからアビーが、エコル島の城にいたからである。


「わたくし、早速、転移部屋を使ってみましたの!」


転移部屋はテトラ島にある。テトラ島はエコル島から南下し4000キロの場所にある無人島だった。しかもそのテトラ島は、魔物の巣窟であり、亜種と言われる、通常個体より強い魔物であった。この島は他と異なった進化をした100格を超える魔物が多いのである。


何故この転移部屋を作ったのか、理由は2つだ。1つはエイトがいなくても眷属であれば1人で移動可能なこと。2つ目はセキュリティの強化である。


転移ゲートに入ると必ず転移部屋に出る。所謂、中継地点であった。これにより2回セキュリティチェックを行うのである。


「転移部屋、暑くなかった?」


エイトは気になっていたことを聞く。


「まだ朝なのに蒸し風呂並でしたわ。うふふ。」


「高い場所に窓あるんだけどね。虫が虫がって五月蠅い人がいてね。ずっと開けてないのよね・・・。」


エイトは言いつつハナを見る。


「あーあたしのことね。アビーごめんなさいね。でもね、あの島の虫大きいのよ!鋼鉄の網でもしとかないと、カミキリムシが15センチくらいあったんだから!」


「えっ!わたくしそれ見つけたら泣くかもしれません。」


アビーは泣きそうな顔でそう言う。




「話変わるけどさエイト。あたしが思うに2万人の難民と兎人族100人あと眷属とその部下2000人、全員で22100人ね。」


「眷属ってさ、先日の執政官見習入れても30人いないんだぞ。なぜ部下が2000人とかなってるの?」


エイトは疑問を投げかける。


「だって万共和国で雇った人たちって、族長が5人いるのよ。キバオウさんとこもダハクさんとこもザンギさんとこも、だいたい500人って言ってたわ。」


「まあいいや。それで?」


エイトは面倒になり続きを促す。


「あんたインゴット貯めこんでるでしょ?ほら、ゴールド、シルバー、ミスリル、オリハルコン、アダマント。」


「何言ってるんだ!あれは金貨や銀貨に武器や防具で必要になるんだぞ!」


エイトは言う。


「まあいずれね。でも今は食料よ!インゴット売って食料を買えばいいのよ。」


むむむ。エイトは思案し解決策を思いつく。


「いや待て、ダンジョンでマッチポンプシステムにしようか?」


エイトは悪い顔をしている。アビーは尋ねる。


「どういうことですの?」


「それはね、ダンジョンっていうのは、魔素を媒体にしてモンスターとか、鉱石や宝箱などを作っているんだよ。その魔素を作る要素が人の生みだす熱量なんだ。


人をダンジョンに入れとけば、一喜一憂しつつ、剣を振り魔法を放つ。例えば敵を発見し興奮、緊張すればアドレナリンが分泌されて、敵を倒せば達成感でドーパミンが分泌される。


これを繰り返すとどんどん体内で魔素が作られてダンジョンで回収されるってことになる。その繰り返しなんだよね。」


エイトはいい考えを思いつき手配するが、たちまちの食料が無い。


ハナは配送センターで各国のよろず屋に向け、インゴットを送る。そしてそれを販売して食料の買い付けを依頼するのだった。


ちなみにエコル島にある配送センターは、よろず屋の材料、製品、金銭の受け渡しをする場所である。開口部は高さ10センチ幅40センチのもので、人の行き来が出来ないように設計されていた。


***


結局、北マウアト教団との攻防はエイト抜きで行われた。万共和国の軍部統括部長に就任したのは、殺戮のブラッドファングと呼ばれたキバオウである。深海の毒牙と怖れられた魚人ザンギは、万共和国の軍部海将に就任し、煉獄の暗部として名を馳せた、ドラゴン族のダハクは内政部部長に就任した。


3人は其々100の兵を指揮し陽動を行う。キバオウはマウアト教皇の牙城に揺さぶりをかける。ザンギは人口魔石工場の東の海側から、ダハクは人口魔石工場の上空から攻撃を始めた。


序盤、戦闘になった敵兵は、難なく撃退した。続いて敵は動きを見せる、石のゴーレム、鉄のゴーレムを操り、陽動部隊を襲った。ゴーレムは何度も立ち上がり、味方は疲弊する。


そうして人口魔石工場内が手薄になった頃、エイトレンジャーは5センチの身長で隠蔽魔法をかけ、乗り込んだのだった。なお、シルバーとホワイトはデスゾーンで氷魔法を振るっていた。言うならばシックスレンジャーであった。


幾重にも張り巡らされた警報装置に、エイトレンジャーは発見されることになり、結局、大暴れの末、人口魔石を製造する古代アーティファクトを破壊した。


その頃にはマウアト教皇本人も、戦闘を指揮し魔法で応戦していた。


(主、人口魔石工場の古代アーティファクト、破壊完了とのことです。現在撤退のための戦闘中らしいです。)


(キーちゃん、全員無事に戻ってと伝えておいて。)


エイトはそう言って胸を撫でおろした。


予定通りダハクのドラゴン兵がキバオウ、ザンギの兵を回収し、疾風のごとく駆け、転移し戻る。エイトレンジャーは遅れたものがいないか確認しつつ殿を務める。


そして兵がすべて転移をしたのを確認し、エイトレンジャーはその場で消えた。これはエイトの命令である、起動、攻撃、退避、格納のうちの退避命令であった。


いつからかエイトが命令を出さなくても、各からくり人形の意思で退避しエイトの近くに飛んでくるのであった。




そして直接エイトは報告を受ける。キバオウは笑って言う。


「いやいや楽勝ですね、北マウアトくらいなら、1日で4、5戦は軽いですな。あははは。」


「そうですか無事でよかった。」


エイトはキバオウたちの、生々しい傷を見て労を労った。そしてキバオウたちは


「風呂でも入って武器の手入れしてきます。」


そう言って踵を返した。


***


「楽勝楽勝って言いながら風呂行ったぞ。」


エイトは手伝いに来たハナに言う。


「何言ってるのよ!救護の人たち青い顔して手当してたわ。」


「そ、そうなのか。」


ハナの報告にエイトは驚く。


「キバオウさん達の強がりに決まっているでしょ!」


そう言ってからハナは思い出したように笑う。


「フフフッ。」


「なんだよ思い出し笑いして!」


「覚えてる?ゲン爺の回復魔法。」


エイトは思い出していた。


「だいじょうぶか!」と言いつつ、ゲン爺は、鬼の形相で自慢の筋肉ボディな巨漢ごと体当たり、吹っ飛びそうな子供を、ごつい腕で抱きかかえ回復魔法を唱える。


ゲン爺の体当たりで意識を飛ばした子も何人かいる。顔の腫れ、鼻血、擦り傷、切り傷、打ち身に捻挫、なんでも治してくれた。


ほとんど自分で怪我させて、自分で治す。汗臭いゲン爺に抱きかかえられるのは、マジきつかった。




するとハナが急に怒り出した。


「あのときもそうだったわ!最果ての村、弓が刺さった事件。」


ハナさんは興奮して、そう言いつつ、ズンズンエイトににじり寄って来て声を荒げる。


「あのときも結局、前からこういう風に刺さって後ろに抜けてた矢を。あんたは、前からこーいう風に抜いて、それでそれで。」


身振り手振りで全身を大きく使って説明する、興奮状態のハナさん。


「刺さった時より、エイトが抜いた時の方が痛くて気を失ったんだった!わかってる?マッチポンプよ、マッチポンプ、エイトがダメージを与えて、エイトが回復する。」


「そして、あんたはこれをキバオウさん達にもやったのよ。あの王都奪還事件で。心配そうにおじさんズに近づいて、大丈夫ですか大丈夫ですか、と言いながら、あんたのそのバカ力で、腕握って押さえつけて、回復魔法かけたでしょ。


そりゃあ、キバオウさん達もトラウマになるわよ!」」


エイトはショックだった。(いつの間にやら僕はゲン爺と同じことを・・・。)



ハナは思っていた。(魔法の教え方もそうだしさ、ゲン爺とエイトは似たもの師弟だってわかってないのかしら・・・。)


***


そしてエイトはハナの部屋に、大事な話があると言われ呼ばれていた。


「エイト、実はね。あたしこんなの見つけちゃったのよ。」


そこにはハナの故郷の新聞の記事があった。


「極域気水圏シンポジウム?いったいなんなんだ。」


エイトが尋ねるとハナは話始める。


「これはね地球で起こったことなんだけど、人間がフロンと言うのを生産してオゾン層を破壊しちゃったの。


それで生態系が破壊されるし、人は病気になるし、気候にまで影響して、海面は上昇して、大陸が沈没するぞみたいな感じで、てんやわんやになっちゃったの。


それじゃだめだと言うことでフロンは作るな!ってなって、今ではオゾン層は回復してますよ!ってことなの。」


エイトはよくよく考え、言う。


「それってデスゾーンと同じなの?」


ハナは答える。


「あたしはよくは、わからないんだけどさ。ちょうどほら南極にオゾンホールってのがあって、場所とかもデスゾーンに似てるでしょ。」


エイトはハナの資料をいろいろ見ながら言う。


「フロンって言う原因はゆっくり解決させたけど、ってか15年もかかってるのかよ!これ・・・。というか20年後に最大のオゾンホール確認したとか・・・。むむむ、毎年3%づつ治ってるとか・・・。


ハナ、なんというか故郷の人たちって気が長いのな・・・。」


エイトは頭を抱え、ハナは笑って言う。


「あんたが地球にいたら、もう始末されてるね。ウフ。」


ハナは続けて言う。


「違うのよ違うのよ、あたしが言いたいのは、あたしたちなら解決できるって事よ。だって、この世界にしかないものがあるでしょ。」


ハナは悪い顔で笑っている。エイトはまたか!と思い、諦めの表情だ。


「わかった魔物だ!」


ハナは口をとがらせ、溜めて溜めて言う。


「ブッブーーー!外れましたので正座してください。」


文句を言いながらもエイトは正座する。


「なんで正座しなきゃいけないんだ!もう、わかりません!ハナ先生、馬鹿な僕に教えてください。」


エイトは知っていた。エイトがむきになるとこのプレイは長引くのだ。ここは平身低頭してお願いする。(この無駄な時間を短縮できるなら、尻尾でも振っちゃうぞ。)


「もう仕方ないわね。魔法よ!」


(お!いつになく早いな。ハナも言いたくって仕方ないんだろうな。)


「魔法?」


「そうエイトが良く使う、原状復帰リカバーきっとこれで修復されるはずよ。無属性魔法は生物も非生物も、有効でしょう。でもエイトの回復魔法ってからくり人形にも効くよね?」


ハナはエイトを見る。


「ああ、そういえば毒婆も言ってたな。出鱈目が過ぎるって・・・。」


ハナはにっこり笑って言う。


「でしょう!だから回復魔法もかけて、あと状態異常回復イレース、病気治癒キュアイルネスなんかも入れて作ってみましょ。」


「そっかーなおるといいな。」


そう言ってエイトは自室に戻り、丁寧にエンチャント魔法を制作するのだった。


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