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5-8 そして難民

すっかり忘れていたアレクから連絡が入る。


本名アレクサンダー・シュナイダー、エイトが最初に馬面兄貴と呼んでいた。レッドの剣によって刈られた丸坊主も、すっかり伸びてきた。


坊主頭の頃、エイトはジェルと言う整髪料を、お詫びにと渡していた。「髪の毛って1か月で1センチ以上伸びるんだ。」アレクは頭髪をがっちり固めていた。


3カ月経過し、アレクの髪は5センチほどまで伸びた。エイトはアレクにワックスを渡した。アレクは髪をハリネズミのように逆立てている。


そして半年、現在である。エイトはアレクにグリースを渡す。アレクの髪は立っていなかった。オールバックだった。栗毛だった色はオレンジが濃くなったような汚い色になっている。


エイトが赤色のヘアカラーを渡したせいであった。ヒトと言うのは渡したものを全て使いたがる、好奇心に富んだ生き物だと思うエイトであった。あと髪の毛は1カ月で1センチ以上伸びることもメモしておいた。




アレクの情報は”水浸し”、と”いろんな種族がやって来た”。と言うことだった。疑心暗鬼なエイトは、気持ちの悪い感情を抱きながら現地へ向かう。


見るとデスゾーンが水浸しだった。海面上昇なのかとも思って確認するが、海岸線は異常が無かった。どうやら川の水が増水し、溢れている。


道も何カ所も水没している。テレストはダンジョンに行き不在であるため、止むえずエルドラに応援を頼んだ。




遠くから飛んでくるレッドドラゴンに周囲の人がざわつき始める。エイトは思った。


(赤は目立つな・・・。)


そしてだんだんと近づくレッドドラゴンに皆、オタオタし始める。皆、ビビッている。しかしエイトは違う意味でドキドキしていた。このままエルドラが地上に着く、そしてヒト型にたぶんなるだろう。


その瞬間、着衣はどうなっているのか!非常に非常に興味のある問題だった。このデスゾーンの農場に集まった人々は、目撃してしまうのであろうか?


エルドラの一糸纏わぬ姿を!この破廉恥度に11歳の少年の期待は高まる。そんなエイトを見てキングはこう思っていた。


(自分の婚約者なのに、こいつは何考えているんだ。アブノーマルな性癖なのか!変質者なのか!!)


そして、その時は来た。少し離れた広い場所に強大な体躯の、レッドドラゴンは急ブレーキをかけ、降り立つ。大地に足がついた。その瞬間、ヒト型に変化するエルドラ、そのヒト型はなぜかシルエットだった。


残念な事に砂煙が待っていた。砂煙が収まってエルドラの表情が見えた時、既に着衣を着たエルドラが立っていた。エイトは無言で舌打ちをする。


「チッ。」


大衆も残念そうな声をあげる。


「「「「「ああーー。」」」」」


そんな声にもめげずエルドラはエイトに向かって駆けてくる。笑顔で、手を振りながら。


「エイト殿!遅くなりました。」


「いあいあ、エルドラごめんよ、急に呼び出して。」


そこに集う多くの種族に目を奪われ、エイトの声の音量はフェードアウトしていく。逃げて来たのか、そこにはエイトが初めて目にする種族も多く集まっていた。


エイトが初見であったのは、妖精種のピクシー族、ノーム族、精霊類のダークエルフ族、ハイエルフ族、ジャイアント類のビッグフット族、リザード類のリザードマン族などであった。


*


エイトとキングはすでに4時間ほど話している。分類についてである。結局のところ、この類・種・族の分類はエイトが図鑑を作るにあたって決めたものだ。


エイトはハナの世界でこれを調べた。すると・・・。例えば人間だと、動物[界]脊索動物[門]哺乳[綱]サル[目]ヒト[科]ヒト[属]ヒト[種]となるのである。


界・門・綱・目・科・属・種は、それらの一つずつが分類階級であった。これはいろいろきつい!ということでエイトが決めたのは[界][類][種][族]であった。人間だと、地[界]人[類]人[種]人[族]なのだ。


ダークエルフであれば光界、精霊類、亜人種、ダークエルフ族となり、竜人だと空界、ドラゴン類、亜人種、竜人族であり、ワイバーンだと空界、ドラゴン族、飛竜種、ワイバーン族だった。


(主、動物界というのは生物上の見地ですな、脊索動物というのは作りですよ!哺乳綱とは育成に、なるほどなるほど、なんと種は200万を超えるそうですよ!実に奥が深い!)


キングに任せるとのめり込みすぎて大変なことになる。とエイトは危機回避をしたのであった。


*


そしてエイトはエルドラに、事の経緯を話し、調査を開始する。先ずは川の上流からだ。次に地下水や地面の陥没など予定していたがすぐに判明することになる。


(エイト殿ぉぉおお!原因はこれでしょうぅぅううう!)


エルドラは思念通話でギャンギャン言う。頭が割れそうなエイトは文句を言う。


(エルドラァァアア!思念通話はなぁああ、静かに落ち着いて話さないとぉぉおお、共鳴して五月蠅いんだぞぉおおおお!)


2倍にしてやり返したことでエイトは満足し、エルドラは謝罪する。


(申し訳ない。エイト殿、許せ。原因を発見したことで、興奮してつい声が・・・。)


(うむ、エルドラ気を付けてくれればいい。それとデスゾーンの境界にあまり近づくなよ。危険だから。)


エイトとエルドラがそこで見たものは、デスゾーンが北に広がり、山頂の万年雪が溶け、川に流れ込む光景だった。




「凍らせるしかないか!」


エイトは、落ち着いてそう言い。キーちゃんに指示を出す。


(キーちゃん、氷魔法が使えるものを至急呼んで欲しい。全部凍らせてデスゾーンが水没しないようにしないと、まだまだ増水しそうだ。)


しかしこれは一時しのぎでしかない。デスゾーンの境界が更に北に広がっているのだ。次の氷雪も溶かし始めている。しかも目に見えるスピードで・・・。


シルバーとクイーンが現れ、走り氷魔法を使い始める。


「キーちゃん2体なのか・・・。これじゃ捗らないな、初級の氷魔法を使える人はダメなのか?」


(主、流れる水をとどめるには、スキルが足りないのです。)


「あれ!仲間で氷使えるのって、テレストだけだな・・・。よし農場にいた人たちにも呼びかけよう。あとは土嚢作りとか土魔法でせき止めるとかはどうなんだ?キーちゃん!」


(主、少しは助力にはなるかと・・・。ほんの少しですが・・・。あとトリトンさんに声をかけて、ペンギン族に氷魔法を使えるものが多くいたと思うのです。)


「わかった、キーちゃんは土魔法を使える人も集めて、土嚢と両方で、農場と家を死守するように手配して。エルドラは農場で氷魔法使える人を集めて輸送してくれ。」


そしてエイトは北の空に目をやった。


「潰すか・・・。」


エイトは、そう言って移動しようとすると、ダハク、キバオウ、ドルトイ等が近づいてくる。そしてダハクが言う。


「俺たちで北マウアトへ行こうと思うんだ。エイトくんの作戦で、俺達3人と兵隊100づつも連れてけば十分陽動できるしな。もちろん人口魔石工場の心臓部である、古代アーティファクトの破壊はレッドさんたちに任せるけどよ。


だから、エイトさんはここを守っていて欲しいんだよ。」


そういうとおじさん3人は頭を下げる。


「わかりました。」


エイトは苦笑し了解した。


(ガタイのいいおじさん3人に頭下げられるというのは、いろんな意味で重圧が凄いな・・・。あれは一種の脅しだな、精神的な重圧というか責任というか。)


(主、漢哭きでしょ。わたくしには聞こえましたよ。エイトー!俺の故郷だー!俺達では力及ばないが、なんとか、なんとかしてやってくれー!俺達は命に代えても、タマとってきてやんよー!をうをうをうをう!)


エイトは思った。(キングが昨晩、任侠映画をこっそり観ていたのを僕は知っている。感化されるんだな・・・。お前でも・・・。)


***


エイトは二つのことに驚いている。一つは知らない竜がたくさん飛んできたこと。もう一つは竜の背からたくさんの種族が降り、集まっている。難民が数千から増えて、10倍、いや20倍の2万人はいることにであった。


エイトに向かってゆっくり歩いてくる竜は、エンシェントドラゴン、所謂古龍である。頭から首、翼、尾とすべて黒なのだ。が、銀色に光っている。いぶし銀に輝いているのだ。


(なんだろこれ・・・そう!砂団子!ペチペチペチペチ手で磨き叩いてると光沢出るんだよな、あれもいぶし銀。)


エイトはそんな失礼なことを考えていた。それに190格、その表示にエイトは少し息を呑む。いやいや僕だってパペットマスターは170格に近づいているしぃ。他の9つの職業が99格なんだぞぉ!と対抗していた。


しかしそんな必要はない。


(婿殿が大変だとダハクが言って来てな。ホホホ。竜化するのも久しぶりじゃから、準備運動がてらダハクのとこのものを運んできたぞい。)


(白竜様、遠いところ誠にありがとうございます。)


エイトは白竜様に礼を言う。そうして背から降りて来たのは、ダハクのとこにいた老人ザウルたちであった。


「危ないところをお助けいただき、誠にありがとうございます。」


ザウルはそう言って、古龍姿の白竜様に礼を言うのだった。


エイトは手伝ってくれるという竜の背に乗り、飛び立つ、竜のアイスブレスとエイトの氷結魔法を使って河川をどんどん、どんどん凍らせる。下流から上流へ向かって、滝も池もすべて。


飲料水にも困らないよう、アレクが湖から引いた水だけを煮沸し、大きなプールでプールする。


最悪、皆が屋根のある場所で眠れるように、キングの大工ゴーレムで倉庫を作り並べていくのだ。


肝心の食料はチームを作り、漁をするもの、狩りに走るもの、農場で収穫をするもの、に分けられる。農場の野菜などはほぼ残らないだろう。


エイトは慌ただしく指示をする。おじさんの期待に応えようと、


「これで十分なのかなぁ。漏れはないかなぁ。わからないわからない。」


***


デスゾーン、オーステン大陸の最南の地である。北のマクジル王国との国境には延々と続く壁がある。この広大な場所には1000万人が住んでると言う。


半分の広さのマクジル王国でも、5000万人いるのだ。しかしこのデスゾーンには南極点があった。永久凍土を含む寒帯の気候である。針葉樹のある冷帯の気候もある。


またデスゾーンの最北である、エイトたちの住んでいた捨てられた街は、暖流からの偏西風が吹く西岸海洋性な気候であった。南緯45度線を南に超えているが、意外と過ごしやすい。


しかしエイトは思案している。


(転移門を出すとここにいる2万の人々が押し寄せ、スプラッタな絵になるのではないか!


ウルティー連立王国から奪った飛空艇5隻と帆船40隻合わせて5000人も乗れないな・・・。


デスゾーンの脱出時に使ったトンネルも、ジェイ王に言わないとやばいしな・・・。


キーちゃんどうしよ・・・。)


(主、蒼の城を見たでしょう?あの様子だと長期に渡って仮住まいと食料が必要でしょう。)


(移動させようとしても数が不足している。ずっと倉庫に雑魚寝じゃあきつそうだ。食料もいずれ不足するだろう。うう、わからない・・・。)




いろいろいろいろ~♪

いろいろいろいろ~♪


わからないことがある~♪


しかたないしかたない~♪


考えても~♪答えなんか出ない~♪


だって知らないのだもの~♪


適当ソングを口ずさみ、エイトは頭を抱えている。人として決して壊れたわけではない。


(あとはがんばれ!と言って放置し逃げるか・・・。)


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