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5-7 難民

(主、ホムンクルスのところで飛空艇に乗せてあった、シルバーとブラックから連絡が入りました。)


キングはエイトに急ぎ伝えた。


(キーちゃん、状況は?)


(はい、ホムンクルスが蒼の城の城主に、報告に行っていて、現在、待機中とのこと。城は損傷がひどく、多数のホムンクルスが破壊されているとのことです。)


(キーちゃん、それって何かから攻撃を受けたのかな?)


エイトは状況が解らず尋ね。


(主、未だ不明らしいです。)


エイトは報告を聞き指示を出す。


(じゃあキーちゃん、被害の全容がわかったら教えて、それと僕が向かっていい状況になったら、それも教えて。)


思念通話を終え、マクジル王国の待合室のソファーに深く座った。エイトは大きく息をつく。




今日は3月28日である。4月になると学園も始まる、そう夏季の休暇ももう終わりであった。エコル島の万共和国城竣工時落成式も結局、延期予定なのだ。


(ああ、それも王妃様に報告しないといけないな・・・。)


そして、ジェイ王とミッチェル宰相が入室する。挨拶を交わし一同は席につく。


「エイトくん、忙しいところ呼び立ててすまんのお。」


ジェイ王はエイトではない、もう一人を見ながらそう言った。


「いえ僕の方も直接、ご報告したいと思っていました。」


「はて、アビーはなぜここにいるのかな?」


一同はアビーを注視した。アビーは不意の視線に臆さず言う。


「はい、お父様、本日は、ジェイ王様とエイト様の会話の内容を聞き、わたくしがご報告を委託された時の参考にしようと思い、学びに参りました。」


一同は顔を見合わせたが、何の言葉も交わさず。ジェイ王は話を進めた。


「そ、そうか。それではエイトくんの方から、報告をしてくれたまえ。」


ジェイ王は緊張している。エイトは笑いを堪えている。




「はいそれでは、近々のご報告を5件いたします。順番は重要度の高い順です。


1つ目は北マウアト教国です。サポジ王国のカールハインツ王の危険視発言もあり、ドラゴニア白竜様の裏も取れ、現地を確認しました。結果、デスゾーンの発生原因は人口魔石の製造工場と考えます。


また工場は古代アーティファクトを動力として機能しているとみられます。一度破壊すれば、修復は困難かと思われますので、なるべく人身に被害が及ばぬよう、工場のみを直接破壊しようと考えております。」


エイトがそこまで話すとジェイ王は言う。


「その件はエイトくんのタイミングで進めてくれ。世界会議では反対されると考える、わしは知らなかったで押し通すつもりじゃ。結果どうなろうとその時は相談して進めよう。」


ジェイ王は2大国と一緒に戦争しようとは言わなかった。結論は誤魔化された、だがエイトにとっては想定内のことだった。最悪、孤立しようとも賛成してくれたキバオウがいる。仲間もいる。そう思っていた。


「続いて2つ目は、ホムンクルスの空飛ぶ城、蒼の城の件です。王城に入ってから、からくり人形から連絡がありまして、現在、蒼の城の存在を確認、代表の方とホムンクルスが協議中とのことです。


今後は許可が下りれば訪問し、同盟締結です。危険なら城ごと貰います。」


エイトが報告すると、ジェイ王は頷き言う。


「も、貰うのか・・・。ま、まあエイトくんに任せる。」


「はい、3件目ですがドラゴニアの白竜様の娘の件です。妹のエルドラと婚約することになりました。」


「そうか国王としては懇意にできる国が増えるのは喜ばしいことじゃが、親としてはアビーもくれぐれも大切にしてほしい・・・。」


「もちろんです。4件目はサポジ王国のカールハインツ王とウーヴェ宰相ですが、鉄道を走る列車に乗って体験してもらいましたところ、国境から王都まで延長を希望しております。」


エイトが報告すると、ジェイ王は声高らかに言う。


「それじゃ!本日わしが言いたかったのは、他国の王や宰相が体験しておる。このミッチェルまでも体験しておる。エイトくん!これは順番が違うであろう!!


マクジル王国の王がまだなのじゃぞ!エイトくん!!これはどういうことか!!さ、乗りに行くか。な、そうじゃろ、すぐ行かねば!」


そしてミッチェル宰相が言う。


「座りなさい、ジェイ王。」


ジェイ王はミッチェル宰相を睨みつつゆっくり腰掛ける。


「エイトくん、サポジ王国の延長工事はお任せします。ですがマクジル王国の王都までの延長工事を先にお願いしますね。」


ミッチェル宰相は言う。エイトは肯定を示す。


「そういうことで、エイトくん、報告を続けてくれますか?」


ミッチェル宰相は、王のことは何もなかったようにそう言った。


「は、はい、5件目は勇者の件ですが現状45格。高位魔族に効果のある特殊技ホーリーブレイブなるものを有しております。」


「了解した。」


王はぶっきらぼうにそう言う。拗ねている。


「最後に一つこれは私事なのですが、エコル島の万共和国、城竣工時落成式は、バタバタしていまして延期します。以上が今回の報告の全てでございます。長時間ありがとうございました。」


「そうかよし、その件はオクサナも楽しみにしておったから、わしから伝えておこう。優先順位があるから仕方あるまい。」


ジェイ王がそう言うとアビーが口を挟む。


「お父様、その件について、お母様は既に聞き及んでいます。」


「そうか・・・。」


ジェイ王はすこし寂しそうだった。




エイトはキーちゃんを通じて、よろず屋壱号店の仲間に乗車希望者を募ることにした。ジェイ王を不憫に思ったからだった。


「ジェイ王、列車乗りに行きますか。往復すると戻ってこれるのは明日の今頃になりますが大丈夫ですか。」


エイトがそう言うと、ミッチェル宰相は言う。


「それは残念です。明日は予算委員会の中間報告のための中間決算見積に対する小委員会の各有形資産目録作成のための担当貴族による事前打ち合わせ食事会に出席予定です。


いやはや、折角のエイトくんの申し出ですがこれはザンネンザンネン、ささ行きますぞ、ジェイ王!」


そう言われてミッチェル宰相に連れて行かれるジェイ王の背中は少し小さく見えた。


ソンナノオマエガデトケバイイジャナイカ!ナンダネニモッテイルノカ!ツリゴトキデオマエハネニモッテオルノカ!


王が何か叫んでいた。アビーに聞いてみると。


「先日ミッチェル宰相が久しぶりの休みを取って、半年前から予約してチャーターした船で釣りに行く予定だったのよ。それをお父様が仕事を入れて、ドタキャンさせちゃってね・・・。」


エイトは呟く。


「仲良きことは美しき哉。いがみ合うことは醜き哉。」


***


そしてエイトは蒼の城にいた。


上空約8キロメートル、気温は25度、湿度50%ここは快適に保たれている。何らかの結界の働きだろうか。


上空は雲一つない青い空、蒼の城は少し高い場所に聳えている。元は乳白色の均等な石材で積み上げられていただろうそれは、ボロボロであった。


周りにあったであろう木々や緑は枯れ果て、ところどころ土も黒くなり焦げたように見える。果樹、畑もおなじで、そこにあったであろうことだけがうかがえるすべて、死滅している。


ここから見える建物は丘の上の蒼の城と、農作業用とわかる作物も保存できるような倉庫だけであった。この場所の住民は皆、蒼の城に居住してるのだろうと予想できる。


「しかしひどく臭うな。」


それがエイトの第一声、感想だった。竜が来て炎ブレスを全体に吐きかけた。エイトにはそう思えた。


しばらくエイトが眺めているとシルバーとブラックが近づいてくる。エイトは2体を労い、それぞれの配置に戻し、代わりにキングを呼び説明を受ける。


(主、まずはここの住人ですが王はいません。住んでいるのは兎人族です。そして兎人族の故郷は、すべての夜にベルサスに等しく灯す優しき光の王妃なのです。)


説明しよう。すべての夜にベルサスに等しく灯す優しき光の王妃、と言うのはエイトとハナが言う月のことである。2人は名前が長いので地球に準じているのだ。


ちなみに太陽は、すべての日にベルサスに等しく降り注ぐ荒ぶる火の王、という。


(キーちゃん今後は太陽と月と呼べばいいよ。)


(主、わかりました。それで月からこの蒼の城まで転移魔法で来たらしいのですが、)


そこまで言うと、ホムンクルスがエイトを呼びに来たのだった。


*


そして蒼の城の中に招かれたエイトだった。


「初めまして僕はエイト・リナレスと言います。」


エイトがそう言うと、兎人族は顔を突き合わせ、誰が話すのかしばらく揉めていた。そして若い女の兎人族が前に出て言った。


「あたいはホーセンのだちのコーカなの。ヨロシクネ。」


(ホーセンさん?アレクが話してたな、肉くれるって・・・会ったことないけど。)そしてエイトは柔らかい言葉にした。


「よろしくね、随分、お城とか傷んでいるけど何があったの?」


そうエイトが言うと、それは私がと言わんばかりに、またちがう若い女の兎人族が出て言う。


「あたしね舵の仕事してるんだけどね、9000メートル級来ちゃってさ。上空に避けたらジェット気流ってわけで南に飛ばされちゃったのよ。


そうしたらホムちゃたちがバタバタ倒れるから、ウッソーって感じで北に舵切ったんだけど。全然動かないの、それで高度落とせとか、北だとか言ってたらこのアリサマ。


もう命カラガラ逃げたって感じなのよ。」


話は終わったという体で、手でコーカとタッチし、下がっていく。


「それはデスゾーンに入ったんだと思うから、もっと北を飛んだほうがいいな。」


エイトがそう言うと、兎人族たちは頷いている。


「僕の用事は領地で、蒼の城に従うホムンクルスを見つけたのでここに連れてきていいかどうか確認したかったんだよね。」


「それは構わないんだけど、食料が無くなって困ってるのよ。エイトくんなんとかなる?」


エイトはすこし困った顔で言う。


「お金払えば買うことはできると思うけど。」


「あーホーセンが持ってたやつだっけ、あたい達には無いよ。」


そしてエイトはきーちゃんと打ち合わせ、今の食料の備蓄と人数などを確認していった。ここにいる兎人族は20人ほどだったのだが、全員で100名ほどいるらしい。


ホムンクルスは食料は不要だが200体ほどらしい。




「なぜこんなに人がいるのにリーダーがいないんだよ?」


その質問に答えるのはやはりコーカだった。


「ローシが死んだのよ。エイトくんなってよ。」


他の兎人族もウンウンと頷いている。しかしそんな重要なこと、全員の意見がないと何も言えない。リーダーのいない兎人族と話しても何も決まりそうにない。


キーちゃんは言う。


「とりあえず、しばらくはエコル島に蒼の城を固定してはどうでしょう?」


そうしてエイトたちは、ホムンクルス問題を解決し、新たに兎人族難民問題を抱えるのであった。




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