表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/56

5-6 北マウアト教国

「今日は、いい日だったんだよ!」


エルドラは静かに言った。そして語気を強め、続ける。


「いい日だったのに、なんでお前がいるんだよ!テレストッ!!なんなの、なんであんたがいる?!!!」


「今日、エイト殿と婚約した!そうしたらテレストがいた!今頃、何しに戻ってきたんだ!!」


「こっ婚約ですって!」


テレストはすぐ反応する。どんな形にせよ、姉妹が話始めたことで、エイトはややホッとしていた。居たたまれない沈黙よりいい、そんなことを思って・・・。


「そうよ!いずれ結婚よ!」


「あなたが結婚して!いったい何が出来るのよ!!!」


姉妹とも喧嘩腰ではあるのだが、エイトは嬉しく思っている?


「あんたよりは役に立つんじゃない!!?」


「今まであなたがわたくしに勝つことなんてあった!?」


「いつの話してるのよ!!」


「もやしっ子!」


「筋肉バカのくせに!」


そして悪口の応酬が始まった。

「武器も扱えない運動音痴!」

「今は使えますー。あなたこそ、字も下手だし、家事とか出来ないじゃない!」

「字も綺麗になったし、料理も洗濯もしていますー!」

「何よその恰好、雷様じゃないんだからねっ!」

「お前こそパジャマで外に出るな!」

「田舎者はこれだから困る。これはスポーツウエアって言うのよ。」

「チャラチャラ化粧なんかしやがって!」

「ガキ大将気分のやつに淑女の嗜みはわからないわね。」

・・・。

・・・。

・・・。


しばらく聞いていたが終わりそうにないので、エイトは止めた。


「そこまで!静かに!    ・・・敵がいる。」


そう声を押し殺し囁くと、二人は静まった。エイトはすこししゃがんで手招きをする。三人は頭を近づけた。


「いいか、二人とも、声を荒げず、冷静になるんだ。」


「「は、はい。」」


まだエイトは囁いている。




「二人は昔から、そんなに仲悪いのか?」


唐突にそんなことを言うエイト。


「「えっ!」」


騙された!二人は気づく。


「いったい二人に何があったんだ?」


とエイトが尋ねると、渋々二人は語り始める。


内容は、約200年前のことである。




竜人族の中で外敵に対する方向性で小さな衝突があった、穏健派と強硬派である。穏健派はテレストを、強硬派はエルドラを、其々擁立する形で二人は巻き込まれた。


一触即発という段階で白竜様が鎮める。軍部関係者が多い強硬派は数でも武力でも圧倒していた。結果、穏健派は壊滅し、主だった幹部は追放となった。


エイトは聞き終えて言う。


「質問いいかな?」


「「はい」」


「なるほど、じゃあ二人はお互いに対して遺恨はあるの?」


「「いえ」」


というと言葉を止め、お互い譲っていた。何か話したいことがあるらしい。


「じゃエルドラから」


「最初の頃、俺はわけわかんねぇうちにテレストがいなくなった。

親父に聞くとわしが追放した、というだけで・・・、だから軍の幹部を問い質した。ああ俺も関わってたんだということはわかったよ。


でもなんで連絡もしてこない?家族を捨てたのか?親父も含め、俺も軍の連中も、みんなしてテレストを追い出したのはわかってるんだ。


で、でも家族だろ?」


そう言いつつ、エルドラは俯いて拳を握りながら、涙を流している。


「じゃあ、テレスト?」


エイトが促すと、テレストは話す。


「・・・・・・はい、200年も経つとエルには悪いことしたと思います。当時、私はそもそも議会制の中にいて、発言する立場にあったんです。だから、エルは・・・。


エルを巻き込んだのは私の責任だと思っています。」


「追放という言葉を聞いた時・・・お父様、なぜ・・・と思いましたが、今になって思えば、内乱を未然に防ぎ、姉妹に殺し合いをさせない、苦肉の選択だったと思います。


もしも戦闘にまで、と思うと、一般の方々まで巻込み、負けたほうは死罪になるやもしれません。」


テレストは静かに涙を流している。言葉を詰まらせつつも話すのだった。


「一時はお父様、エル、軍部、恨んだこともありました。でも時が経つにつれ、そういえばエルは政治には無関心だったなあと・・・。因果応報です。


私の浅い考えが、追放という報いを、招いたと。


・・・・・・本当に妹には申し訳ないと後悔しています。」


ゆっくりと、過去を思い返しながら、話してくれるテレストはどこか儚げだった。


「そか、じゃあ仲直りできそうだな。」


「「・・・・・は、い。」」


「じゃ今日は、二人一緒に右のテントで寝てね。」


「俺はもうすこし明日の準備をしてから寝るから。」


エイトが言うと、二人は渋々テントに入る。そして。




「なんだよ俺も悪かったって言ってるだろっ!」


「静かになさい、エイト様が起きちゃうでしょ。」


「それはテレストが私のクッキー取ったから!」


「あげるから、だから静かに。」


「子供じゃないんだから、パンツに剣の刺繍とかやめなさい」


「強そうだろ。」


「何入れてるんだ?なあ、なんだこれ、なあなあ?」


「・・・パッドよ。」


「パッド?、なんでこんなものいれるんだ?なあ?なんで・・・。」


「おっぱいが大きく見えるでしょ!!」


(テレストのおっぱいは普段、盛ってるのか・・・。)


「テレスト声大きいぞ!エイト殿起きるぞ。」


姉妹の話は止むことなく続き、エイトも数時間、聞いていただろうか、いつの間にか眠っていた。朝になり、ぐっすり眠っていたエイトはキーちゃんに起こされた。なんでも数人の兵士が近づいているらしい。


テントを片付けつつ2人を起こし、エルドラの背に乗り、慌ただしく飛び立つのだった。


***


かつてこの島は、ノーザンライトアイランドと呼ばれ、夜の無い国とも言われていた。それにより神聖な神々の住む島として、隆盛を極めたのである。


ノーザンライトとはオーロラのことを言う。夜の無い国とは白夜である。他では見られないその現象が、こんな痩せた土地を神聖化したのだろう。訪れ、目撃したものは言う。神の島と・・・。


現在は二つの国により治められていた。1つは北マウアト教国、もう1つは南マウアト王国である。ツンドラと氷雪の気候であり、ツンドラの一部で植物が育つ程度であり氷雪気候では概ね永久凍土である。


南マウアト王国は人口1500万人、南方で少し作物が育つ程度、酪農と漁業が生計の中心で中央辺りでやや鉱物も出るらしい。現在の国王はマーク・ヒルトン・マウアトであった。


北マウアト教国はマウアト教皇によって統治されている。マウアト聖教会である。魔石工場の人口魔石の販売が主な収入源であり、その比重が高くなることを国が推し進めている。


逆に古くからあった、酪農や出版、農業は衰退していった。また、その工場からでる廃棄物で土地、海、河川は汚染され、他で利用できないことになっていた。


工場汚染は加速し、酸性雨が降り、森林や地表にまで影響が出ている。既に人は住めなくなっている場所もあるのだという。工場地は東の海沿いに在り、煙突とそれの出す黒煙で外からでも一目でわかる。


「なんだ!これは、・・・。」


「もう十分だ。帰ろう。」


エルドラは驚き、エイトは言う。そこには破壊された自然が広がっていた。針葉樹は錆びたように枯れ、土地には汚泥が堆積、海は粘着性のヘドロが浮いている。そこに居るだけで病魔に侵されそうだった。


「しかし、これが王城なのでしょうか?」


「そうだね、まるで工場と倉庫群だよね。そう考えると実用的だよ。広い川は工場で使う水を確保して、東の海は輸出拠点港として航路に繋がっている。」


「人が多いですわ。というか警備の兵士が多くて物々しいですわね。」


「ここには国王でもある教皇がいて、魔石工場の要は古代アーティファクトみたいだからね。警備も厳重になるよね。」


テレストが質問し、エイトがからくり人形が調べた内容を答える。


「俺はわからないんだけどさ、魔石って売ってるの?」


「人口魔石は魔道具と組み合わせ、攻撃魔法として使用するみたいだからね。そのほとんどは国が買っている。あの2大国が・・・。」


エイトは眉をひそめて言う。しかし、2大国お抱えの魔石工場を潰すとどうなるんだろう・・・。エイトはそんな不安を抱えていた。


***


「エイトさん、結局のところ蓋を開けてみると、この世界のためって話ですよね?」


ドラゴン族のダハクは口にする。


「皇帝や王、宰相あたりの分別がつくものだと、理解が及ぶかもしれない。しかし魔道具を取り上げられる軍関係や現場は納まりがつかないだろうな。」


ブラッドファング族のキバオウはそう言って、一息入れ続ける。


「でもよ、わしにとってはデスゾーンって言われてもピンとこないんだよな。やはり昔のアイゼンベルグのままなんだよ。


しかも被害者はこっちだ。正義は我にありってやつだな。エイトさん、反対するものはいない、2大国だってなんだって攻めて来れば、全部まとめて叩き潰しましょう。」


北マウアト教国のことを説明し、仲間に部下に周知徹底する。予想通りここに反対する者はいない、たとえエインテー帝国が攻めてくるとしても、たとえウルティー連立王国と事を構えることになっても。


「アビー、ジェイ王は何て言ってた?」


エイトはアビーに尋ねた。


「はい、エイト様、ジェイ王は因果関係が明確なら、簡単な事なんだがと言って口を噤み、もう少し時間をくれとのことでした。

わたくしが思いますに、どうも、世界会議の議題にかけて反対されたとき、明確に攻め込む理由を作ってしまうことになるから、少し臭わせて様子見をするつもりのようでした。」


「この世界の知識で因果関係を証明するのは難しそうだよな・・・。ジェイ王にも悪いことをしたな・・・まるで綱渡りだ。」


そう言ったエイトではあったが、既に心は固まっていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ